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- / ISBN・EAN: 4988126208745
感想・レビュー・書評
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仏典曰く 佛典有云
旗なびかず 風なし 旗未動 風也本吹
揺らぐは人の心なり 是人的心自己在動
冒頭にこんな字幕が表れる。
武俠映画の体裁を取っているけれど、この映画の本質は「揺らぐ人の心」を描くことにある。
公開時、香港の映画館では痛快なアクションを期待した観客が途中で席を立つ事態に至ったそうだが、ブルース・リーの師、イップ・マンを主人公にした最新作の『グランドマスター』にも同じことが言えるだろう。監督はなぜ、ストレートに「これは恋愛映画ですよ!」というものを撮らずに、金庸武俠小説やイップ・マンの世界を映画の題材に選んだのだろう。
ストレートに恋愛をテーマにした『花様年華』では、主人公の新聞記者が小説を書き始めるのだが、その内容が武俠小説だったりするので、監督が個人的に好きなだけなのか…。
相対する2人を画面に入れず、セリフをしゃべっている人間だけを正面からアップで撮る手法は、小津安二郎を意識してのことかとも思うが、実際にはスター俳優のスケジュールが合わなくて、一緒にいなければならない場面が撮れなかったための苦肉の策?だと監督はインタビューで答えている(ウォン監督は一筋縄ではいかない人物のようなので、インタビューの言葉を額面通り受け取ってはいけないのかもしれない)。
一応、「会話」なんだけれど、半分以上、自分に向かって言い聞かせているようなセリフが多い。
ウォン・カーウァイ作品のセリフは、文学作品のようで、思わず書き留めておきたくなる言葉の宝庫だ。
「この間ある女が酒をくれた
"酔生夢死(ツォイサンモンセイ)"という
これを飲むと過去が忘れられるそうだ
思い出にこそ悩みの源がある
それを忘れられれば
新鮮な毎日が始められるのだ」
黄に酒を勧められた欧は、
「俺はその酒を一滴も飲まなかった
どうしても飲めなかったのだ」
と独白するが、1年後、「ある女」が誰なのかを知り、ついに酒を飲む。
「この酒は彼女の冗談だったらしい。
何かを忘れようとすればするほど心に残るものだ」
マギー・チャンの美しさも凄いけれど、
やはりニヒルなレスリー・チャンの美しさが際立つ。
孤独と頽廃がこれだけ似合う俳優は、なかなかいないだろう。
レスリー・チャンの死は、実に惜しいことだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
レスリー・チャンの魅力を再認識。はかなげでかわいい。
レスリー・チャンはこの5月に「ブエノスアイレス」で初めて認識して、そのあと「覇王別姫」で涙したのだが、今回は”普通”の男性役。しかも達観した剣の達人なので、それはかっこいい役で役のとおりかっこよかった。
今回のトニー・レオンはほとんど盲目の剣士役。東邪役のレオン・カーフェイは今回初めて認識したが少しニヒルな感じがよかった。「愛人・ラマン」にでたようなので見てみたい。
原作は金庸の小説。レスリー・チャン演じる西毒という剣士の語りで物語が進むのとウォン・カーウァイの紗がかかったような画面と薄赤とも濁った緑ともつかない、ああァーウァイ色だ、という画面は、全体がゆるやかにやさしくなる。
ブリジット・リン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、が最初区別つかなかった。やっぱりマギー・チャンが一番好きかな。
レスリー・チャンは貴公子、トニー・レオンはやんちゃ坊主、レオン・カーフェイは兄貴、そしてアンデイ・ラウはちょい不良、のイメージだなあ。
2日後にスジを検索で読んでまた見た。今度は女性の区別もできすんなり流れが分かった。今までみたウォン・カーウァイのでは一番いいかな。
原題は「東邪西毒」で主人公二人の名前。エンドロールで英語で付記されてるのが「Ashes of Time」時の灰・燃え殻、邦題だと「楽園の瑕」で、めったに使わない字の瑕は玉宝などにつくきず、玉にキズの瑕なのだ。「時の燃え殻」が画面に合ってる感じがする。
2008香港 1994のオリジナルも見てみたい。オリジナルより2008版のほうがレスリー・チャンの場面が増えているようだ。
2018.8.31レンタル