経営戦略全史【動画付き】 (Discover Next D) [Kindle]
- ディスカヴァー・トゥエンティワン (2013年4月28日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (382ページ)
感想・レビュー・書評
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学者・コンサル132名、書籍72冊、企業・ファーム110社に言及しつつ、「およそ20世紀初頭からの100年を概観し、そこで出現した90個余りの経営戦略コンセプトを紹介し」た書。2013年刊行。
本書を通じて、著名な経済学者、経営学者、コンサルタントの理論の変遷をざっくり辿ることができ、企業の組織・管理・戦略を巡る大きな流れ(流行り廃り)も俯瞰できた。ビジネス書などでよく耳にするキーワード満載。なかなかの良書だった。
工場の生産性向上を狙ったテイラーの「科学的管理法」、「やる気」重視のメイヨーの「人間関係論」、管理者の役割を纏めたフェイヨルの「経営・管理プロセス」、バーナードの「経営者の役割」、マネジメントの重要性を説いたドラッカーの「会社という概念」「現代の経営」、アンゾフの「アンゾフ・マトリクス」、チャンドラーの説いた「事業戦略と組織戦略の相互作用」、アンドルーズの「SWOT分析」、コンサルティング・ファーム(マッキンゼーやBCGの)の躍進と成功、ポジショニング派(儲かる市場で儲かる立場を占めよ)とケイパビリティ派(自社の強みを重視せよ)の攻防、両者いいとこ取りのコンフィギュレーション派、イノベーション時代の到来(クリステンセン、ゴビンダラジャン)…。そして結局、未来は予測不可能でビジネスはやってみなけりゃ儲かるかどうか分からない(その解としての高速試行錯誤,リーン・スタートアップとアダプティブ戦略)、というありきたりだけど至極合理的な結論へとたどり着いた。
経営学者やコンサルティング・ファームは、成功の後追い、後付けの理屈に終始して、時代の先を読むこと、成功の方程式を確立することまではできなかったんだな。流行り廃りが激しい業界であることもよく分かった。そうすると、最先端のビジネス書で流行を追いかけるのも、あまり意味のあることじゃないのかな。
バカ高い金を取って最もらしい経営分析を行うコンサルティング・ファームの存在価値って一体何なんだろうな。しかも、経営の第一線で豊富な実戦経験を積んだビジネスエキスパートの分析・提言ならまだしも、MBAを取得しただけの新卒の若者がシタリ顔で経営をコンサルするって一体…。前々から疑問に思っていた。本書を読んで、こういった疑問を含め、経営コンサル業界のことが少し分かったような気がする。
身も蓋もない言い方だが、結局、孤独で不安な経営者の拠り所(気休め)に過ぎないのかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
経営戦略の歴史や、それぞれの理論の核となるところをシンプルな図式化でわかりやすく解説していて非常に読みやすい。
経営戦略の概要をまずざっくり理解したいならこれ一冊で十分だと思う -
読み物として面白かった。夢中で読んで読了したイメージ。
時系列で整理されると、それぞれの理論の納得度も高まる。
経営戦略の歴史をたどるうえで、経営学理論、戦略理論を体系化した学者だけでなく、やはり実ビジネスとの密接さにおいて、コンサルティングファームの存在もかかせない。それらの実理論も学者理論と同等、というか歴史の後半では主流になっていることが、当たり前だが興味深い。 -
経営学の入門書としてお勧めできる名著。さすがビジネス書大賞2014を受賞するだけはある、充実の内容。
有名ドコロの経営学の大家たちを、非常に平易なわかりやすい言葉でサマライズしている。各々を深く学ぶには物足りないが、浅く教養を得る、あるいは忘れていた知識を整理するのにちょうどいい。
経営戦略論を歴史で並べて俯瞰してみると、常識と思って多用していたフレームワークが、実は既に時代遅れだった(→有用でないケースだった)なんてことも、、、。笑
とりあえず、頭でっかちなビジネスマンになりたいと思ったら、手始めに読んでみたらいいと思う。 -
時代背景を交え、当時流行った経営戦略を知ることができる。
また今とこれからの経営戦略についても学ぶことができる。
ページ数がハンパない。 -
2024/4 再度読んだ。
やはり面白い。
語り口が軽快で、しかも鋭いので何度聞いても飽きない気がする。
- ポジショニング派と、ケイパビリティ派がいて、更に現代は不確実な世の中を試行錯誤でリーンに経営していくの方式が台頭してきたようだ。
インターネットやテクノロジーの影響で未来がより見通せなくなったのも大きい。
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経営戦略がどのように作られてきたのかが歴史的に振り返れる名著
物語形式になっているのでわかりやすい
実際の企業の推移と、学会での議論と、コンサルの活躍がMIXされて理論が生まれていっているのが面白い
- SWOT分析は、整理のフレームワーク(これ自体から戦略が決まるわけではない)
- 大きく分けてポジショニング派と、ケイパビリティ派がいること
- コアコンピタンス(継続的、横断的に持ち続けられる強み)が大事だという考え方
- 戦略ではなく、起業家の強い意志と求心力で大きくなっていく企業が出てきた -
印象に残ったところメモ。
- 全く未来が予見できない状況において、人々が頼るものは期待
- 認知的スキル: 関連つける力
- 行動スキル: 質問力、観察力、ネットワーク力、実験力
- 人は現在と過去を必然と思いたがる生き物、未来は確率的と考えているにもかかわらず
- 人は結果に目がくらみ、過程を忘れる
- 日本人は特に集団奉仕バイアスをもつ
- 過去(成功)から学ばない
- 結果(成功)だけで見ない
- 自分で自分を評価しない
- 自らを取り巻く環境が大きく変わり、それにヒトや組織の「内部構造」がうまく適応したとき、ヒトや組織は大きく発展する
- 複数の専門性をもつ
- 他者とネットワークをつくる
- 所得と消費による満足から脱却する
- 現代において戦略は、現場での試行錯誤とそのフィードバックによって実現する -
数々の経営戦略の概要だけでなく、それが誕生した背景や人物像、その戦略を採用企業を時系列に100年分、延べ132名、72書籍、110社を通して読む体験は思いの外面白かった。
時代がそれを望んでいたり、テクノロジーの進化が計測や学びの機会を与えたり、従来の戦略の欠点を克服するためだったりと、一本のストーリーにつむぎあげるのは大変だったろうと想像する。
しかし、将棋の羽生善治さんの「極めて予測が難しい時代においては5手、10手先を考えるよりも次の一手を考えて相手の出方を見てまた考える(P.329)」という言葉がすべてを言い表しているように思う。すべての戦略はたとえ数年間は通用したとしても、基本的には環境変化のスピードが増しているため、すぐに実行しづらくなり、成果に繋がらなくなっていくものだ。戦略という型は、瞬間瞬間によって水のように変化するよう試行錯誤を続けなくてはいけない。