零式戦闘機 [Kindle]

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著者 : 吉村昭
  • 新潮社 (1978年4月3日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (198ページ)

零式戦闘機の感想・レビュー・書評

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  • 【電子版】

  • 零戦という戦闘機そのものの歴史文学、というよりも、零戦の誕生に至る経緯から敗戦までの歴史を零戦を主軸に起きながら記録した作品とでも表現できようか。

    単に零戦という戦闘機の評価、歴史的意義、戦歴にとどまらず、開発経緯や、誕生後は戦争の進展、状況から敗戦までの流れを記録している。零戦を工場で組み立ててから飛行場までどのように運んでいたかを詳細に記述することによって当時の道路事情、交通事情などが見えてくる。

    あとがきには昭和43年とある。終戦から23年後くらいに書かれた作品ということか。今で言えば、昭和50年代からバブル崩壊の平成初頭くらいの歴史を振り返るくらいの時間感覚になるのだろうか。そう考えると昔のような、最近のような不思議なタイミングの作品であったのであろう。

  • 著者の視線は冷静だ。

    前回読んだ零戦設計者堀越二郎氏自身による「零戦その誕生と栄光の記録」に比べると、
    零戦の誕生からその死まで、そこに関わった人々の行く末までに、気を配っている。
    例えば、機体を運んだ牛車の牛が戦争中の飼料不足から餓死したことや、
    戦争最末期に口上があった名古屋地区を襲った地震や空襲によって、
    製造工場に学徒動員されていた一般市民や中学生たちが惨死した事実も明確。
    著者も書いているが、戦闘機の性能、構造の知識において素人であったことが、
    かえって活きているのだろう。零戦に直接関わった人たちの理想より、
    零戦という兵器によってもたらされた人々の運命や現実を、ひたすら正確に著している。

    声高に反戦をいうのではない。平和平和とむやみに煽るわけではない
    その手法は淡々と事実を積み重ねていくことだけで、
    読者の心のなかに戦争というもののリアリティをあぶり出していく。

    記録文学とはこういうものだという名作である。

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