演劇入門 (講談社現代新書) [Kindle]

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著者 : 平田オリザ
  • 講談社 (1998年10月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍

演劇入門 (講談社現代新書)の感想・レビュー・書評

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  • 演劇創作論だが、小説創作にも役立つ技術が書かれている。以下まとめ。

    ・私にとって演劇を創るという行為は、私に見えている世界を社会に向けて開示するということだ。
    ・演劇の技術とは、「自分の妄想を他者に伝える」技術である。

    <演劇のリアルとは>
    ・台詞を書く際には、遠いイメージから入るのが原則。美術館を描く時、「美術館」と表現しない。絵がある、静かである、デートに向いている、高尚な雰囲気、美大生がデッサンをしている、人がゆっくり歩いている、白い壁、椅子に座って動かない監視員、とイメージを挙げてみて、最も遠いイメージから台詞を始める。
    ・たとえば、ゆっくり歩くイメージから始める。「いいでしょ、たまにはこういうところも」「まあね」「たまにはゆっくりしないと」「うん」。続いて、絵のイメージ。「さっきの絵、意外と大きかったね」、「うん、なんだか教科書で見るのと随分違うね」「やっぱり、絵は本物を見ないと」。まだ展開が急すぎるように感じたら、「ゴッホはがに股だったらしいね」「ゴーギャンは偏平足だったんだって」とか、くだらないものがあるとよろしい。
    ・ここまで描けば、「やっぱり美術館はいいなあ」というセリフが出てきても、観客は説明的な台詞とは受け取らない。
    ・近いイメージから始めると、説明的、不自然と感じられる。
    ・イメージのプロセスを踏むと、台詞がリアルに聞こえる。
    ・戯曲を書くという行為は、一つの架空の世界を構築する行為である。その行為は、手続きや手順によって、リアルなものになったり、ならなかったりする。

    <現代演劇>
    ・先にテーマがあって、それを表現するために作品を創るのではなく、混沌とした自分の世界観に何らかの形を与えるために表現する。
    ・テーマは自分の中に内在している。描きたい対象と一致した時、描きたいという欲求が起きる。
    ・演劇は、メディア、ジャーナリズムとしては最も遅い、最も面倒な手段になった。主義主張を伝えるなら、もっと他の有効な手段が山ほどある。演劇は単純な意味でのメディアやプロパガンダの手段ではない。このことの徹底した認識から、現代演劇は始まる。
    ・私には、伝えるべき主義主張や思想や価値観は何もない。でも表現したいことは山ほどある。その欲求は、世界とは何か、人間とは何かという私の内側にある混沌とした想いに何らかの形を与えて、下界に向けて示したい衝動と言い換えてもいい。
    ・芸術は、常識や経験則を一旦停止させて、脳細胞が認識した世界を、ありのままに現前させようとする。それは表現というより、描写、あるいは記述と呼ぶべき行為かもしれない。

    <セミパブリック>
    ・プライベートな空間では、会話の情報量が小さくなる。パブリックな空間でも情報量は小さい。親しい人と部外者の両方が入って来るセミパブリックな空間が、戯曲の舞台にふさわしい情報量を提示できる。自然に、観客に情報を提示できるからだ。大学の研究室の脇のたまり場、豪華客船の甲板、ホテルのロビー、病院の面会室、葬式の通夜会場などが、セミパブリックな空間である。
    ・背景に特殊な状況設定を加えると、「こんな場所でこんな会話しないよ」という違和感を減らせる。必然性を出せる。

    <戯曲を書くために>
    ・劇作家はストーリーの中である象徴的なシーンだけを抜き出して舞台を構成する。前後のシーンは観客の想像力にゆだねる。
    ・コップに口紅がついている。コップが奇妙な欠け方をしている。何かのきっかけが、観客の想像力を刺激する。
    ・エピソードを決めるには、重要な点が二つある。第一に、実際にそのプロットで伝えたい情報とはできるだけ離れた内容の会話であること。もう一つは、かといって全体のモチーフや状況から、あまり離れていない会話であること。
    ・直接的に表現せず、いかに登場人物の心情を場に溶け込ませて表現するかが作家の技術。作者の意図を表現しすぎると、観客は台詞を説明的だと感じる。
    ・モチーフから遠い順番からエピソードを並べる。遠いイメージから近いイメージへと、あるイメージが別のイメージを喚起するような形で会話をつなげていくことができれば、その戯曲は成功する。
    ・取材の成果を「ネタ」と考えると、「ネタ」をどう会話に入れるかを先に考えてしまうことになる。エピソードを決めるには、必要以上に取材して、そのほとんどを捨てる覚悟を持つ。

    <俳優のコンテクスト>
    ・コンテクストとは、一人一人が使う言語の範囲。コンテクストが違えば、誤解が生じる。例えば、テーブルを「ちゃぶ台」と呼ぶ人もいれば、「あれ」と呼ぶ人もいる。コンテクストを共有していれば、「あれ」と言われて、テーブルのことだとわかる。
    ・俳優と登場人物のコンテクストが完全に一致することはない。俳優にはコンテクストの微妙なずれを調整する能力、技術が要求される。
    ・監督が俳優の演技に文句を言う原因は、監督がイメージする登場人物のコンテクストと、俳優がイメージする登場人物のコンテクストがずれているから。「今度旅行行かない?」という台詞だけでも、監督のイメージと違えば、監督は何度もダメ出しする。
    ・高校生演劇の台詞が不自然なのは、高校生のコンテクストが狭いから。
    ・演劇を支える一番大きな要素は「対話」。「対話」は、他人と交わす新たな情報交換や交流のこと。他人といっても初対面である必要はない。お互いに相手のことはよく知らない程度でいい。一方、「会話」とは、既に知っている者同士の楽しいおしゃべりのこと。
    ・会話は冗長な単語がほとんどない。対話レベルになると、冗長な単語が頻出する。意外に思われるかもしれないが、親しい者同士は無駄な単語を使わない。対話を書く場合は、他者とコミュニケーションをとるため、無駄な単語を潤滑油として使う。
    ・良い俳優は、自分のコンテクストを押し広げ、役柄に近づく。

    <参加する演劇>
    ・演劇において表現者と鑑賞者が時空間を共有するということは、すなわち、仮想の共同体を共に生きるということ。そこでは、コンテクストのすり合わせが何らかの形で行われているはず。
    ・リアルとは、今、同じ世界に生きている感覚。
    ・演劇は、表現世界の中に観客を導く行為。世界をリアルに体感できれば、内的対話が始まる。

  • 演劇に対し、脚本側から焦点をあてた本。

    脚本の基本が「会話」であり、優れた脚本は「会話」のレンジを自在に操ることで場面設定や起承転結を伴う話の流れを紡ぎだすことができる。

    また、「会話」をコミュニケーションという視点で捉えれば、人間の集合による社会の構成も自ずと「会話」をベースに築かれていることにつながる。機能不随を起こしがちな昨今の社会構成(政治・経済の構造)も、元をたどればコミュニケーションにたどり着く。であるならば、演劇という芸術が社会に果たす役割もまだまだ現代で通用するのではないか、という主張。

  • ブログにてレビュー
    http://yassblog.blog.so-net.ne.jp/2014-01-10

  • 同期編集者が絶賛していたのが気になり購入。
    この本をまとめると、「優れた芸術活動とは、リアルな世界と何らかの形で繋がりをもつものであり、私(著者)は演劇でそれを行っている」という内容・宣言である。書名は『演劇入門』だが、すべての芸術活動に共通する普遍的な内容を持ち合わせた本だと思う。

    「この混沌とした世界を、分かりやすく省略した形え示すのではなく混沌を混沌のままで、ただ解像度を上げていく作業が、いま求められている」。ここにある作業とはまさしく演劇のことである。

  • 演劇についてはほとんど無知だったので、この本は非常に参考になった。
    演劇とは、奥深いものだと気づいた。
    時間があれば、著者の演劇を見に行きたい。

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