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賛否両論も当然。こう読むべし、が全く通用しない。
アンチミステリでありながら、これが新本格、という奇作でもある。ミステリの天敵/アンチという意味でも確かにそうかもしれない。所謂「上位存在」を相手に探偵することの虚しさや滑稽さ、というふうにネガティブに済ませてしまうこともできるし、その時点でついていけない、となるのも頷けるから、評価が定まらないのも納得である。
けれど実際、探偵の想像力と論理に彼らは為す術がない、となっているところが面白かった。策士策に溺れる、ではないけれど、時空を超え、手を尽くすに尽くしてその想像力を補完する以外に逃げ道が無くなる、というのは、ある種得体の知れない恐怖への打ち克ちかたと構造は同じで、それがこんなふうに変格ミステリとして仕立てられるというのは驚き。
ラストシーンも、探偵の役割と限界とを端的に表していて良かった。しかしこのナチュラル名探偵 (?)の面倒を見なきゃいけないアントニオの気苦労は絶えそうにない。
予備知識と事前情報があったからなのか、そこまで問題作!! とは感じなかった。筆もキャラクタもライトで取っ付き易い。惜しむらくは、所謂かの神話と仏教とをもっと具体的に繋ぐことができれば前半に伏線を張れて急展開に背筋が凍る思いをしたかもしれない。無茶云ってるけどさ。このへんトンデモ仏教とか得意なひととかがやりそう。
素直に良作じゃない? ☆3.2