解夏 [Kindle]

著者 :
  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • さだまさしの短編集。
    表題にもなっている"解夏"は、ベーチェット病に冒された隆之が視力を失うまでを描いた物語。
    いずれ視力を失う恐怖と戦いながら日々を過ごしていた隆之は、ある日出会った老人から、失明した瞬間にその恐怖から解放されることを禅宗の習わしに例えて、"解夏"だと言われる。そして、ある日突然失明の瞬間がやってきたとき、隆之は穏やかな気持ちでそれを受け入れる。

    他に、"秋桜"、"水底の村"、"サクラサク"。いずれも思い通りにいかない人生を送りながらも人の持つ優しさが心を打つストーリー。
    特に、"サクラサク"では、仕事に明け暮れ家庭を顧みなかった俊介に対し、老人性痴ほう症が始まった父親が言った、"良いことをしたら褒めてやらにゃあ人間、前を向いて歩けなくなる。褒めてやるにゃ、その人間を一所懸命に見つめていなくっちゃいけないんだ"という言葉は響いた。
    いずれ記憶をなくすかもしれない、その時の恐怖を思うとやりきれない、切ない気持ちになるが、痴ほう症の人に接するとき、最後まで人は元来持っていた優しさやプライドを持っているんだということを忘れずにいなくてはと改めて思った。

  • 読了。さだまさしさんの短編小説4作品。どれもさださんらしい小説。4作品とも家族との関わりを考えさせられる。さださんの小説は、言葉が優しく描写が細かく読みながら風景が思い浮かぶ。
    どれも辛く、哀しくも、心が暖かくなる話。
    息子と母、嫁と義父、娘と母、息子と父。
    家族でもきちんと言葉にしなければ伝わらないこともある。

  • 電子じゃないんだけどね。探せないから。
    2度ほど読んでいる。
    薦めて面白かったということだったので登録します。
    第三話がよかったらしい。

  • 夏の90日間、修行僧が行う「夏安居」という修行があり、それが始まるときを「結夏」、終わるときを「解夏」。
    主人公が徐々に視力を失う中、お寺で出会った老人にその解夏の説明とともにこんな言葉をかけられる。
    「失明する恐怖、という行ですなあ。――失明した瞬間に、失明の恐怖からは解放される。その日があなたの『解夏』ですなあ」。
    ---------------
    これって、すべてのことにあてはまるなと。
    試験も、受ける前日はちびりすぎて眠れないけど、ぶっちゃけ落ちても別に何も世界は変わらなかったし。
    恋愛も、別れる前日は感傷にふけって昔の写真とかながめてこの世の終わりくらいな気分になるけど振られて1年後は付き合ってたこともあったっけみたいなロマンスのかけらもない感じに。
    確かに言われてみれば、大体怖いのは「それ」がやってくるまでのこと。
    ものごとを心配した時、ふとそういった視点からみると冷静さを取り戻せる気がする

  • 失明した瞬間に、失明するという恐怖からは解放される・・・。多くの寺院がある長崎の町が舞台です。仏教の思想の中で、人が今を生きる力を与えてくれます。

  • 9月の課題図書です。

    さだまさしと聞くと「あーあーああああー♪」って歌っている部分しか思い出せません。北の国からの人…?

    それはさておき、どれも凄く良いお話でした。
    特に私が感動したのは2つめの短編、フィリピン人妻と姑の話です。

    人種で人を判断しない大切さ、ここは日本だから日本人がいつでも正しいみたいなそういう考え方がいかに程度の低いことか思い知りました。
    日本人よりも日本人らしい外国人だってたくさんいます。
    姑が最後にフィリピン人嫁に言う秋桜の話が凄く心に沁みました。

    一見、自分だけに厳しく当たられているように感じる厳しい人がいますが、それが時には愛情深いからこそだったりする人もいるのだなぁと自分の考え方や捻くれていた感情を反省する機会になりました。

    全体的にストーリーの流れは似ていますが、起承転結がはっきりしていて読みすすめやすかったです。

    表現が綺麗だとか上手いだとかそういうのは特に感じませんでしたが、普通の文章で映画を見ているようなテンポの良さはとても良かったです。

著者プロフィール

一九五二年長崎市生まれ。シンガーソングライター。二〇〇一年、初小説『精霊流し』がベストセラーとなる。『精霊流し』をはじめ、『解夏』『眉山』アントキノイノチ』『風に立つライオン』はいずれも映画化され、ベストセラーとなる。その他の小説に『はかぼんさん―空蝉風土記』『かすていら』ラストレター』『銀河食堂の夜』など。

「2021年 『緊急事態宣言の夜に ボクたちの新型コロナ戦記2020』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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