ウルトラマンが泣いている――円谷プロの失敗 (講談社現代新書) 新書 – 2013/6/18
駄目な人物を組織のトップにしてはいけない
2014年1月24日記述
円谷英二氏の孫である円谷英明氏による著作。
円谷プロの栄光と挫折が書かれている。
とは言っても大半は失敗と反省の連続ではある。
一般的に言って世の中の書籍類は成功体験談ばかりが多くこういった失敗談を正直に伝えようとする姿勢は良いと思える。
(webの発達によって一通りの成功談では読者も現実味を感じなくなっているのかもしれないけれど)
ハリウッド流の映像の作り方に学ぶべきだったなど多くの反省点を著者は述べている。
しかし会社というのはひとつやふたつの失敗で駄目になるわけではない。
失敗が間違いが是正されず、ずるずるいってしまうが故に危機に陥る。
突き詰めれば円谷プロ3代社長の円谷皐(のぼる)氏が経営者の器ではなかったからだ。
地上波放送が無くなっていた16年間に何をしていたのか?
少しでも円谷プロのプラスになることしたのか?新しいものを生み出したのか?
挙句の果てには会社の私物化、海外出張での無駄使い、
TBS、東宝との関係悪化、経理のどんぶり勘定化。
円谷英二氏、一氏の残した遺産を食いつぶしただけに等しい。
これならちょっと経営感覚のある高校生、大学生に経営を任せた方がまだマシである。
同族経営が良い悪いというよりこんな駄目な人物がトップになってしまってそれを解任させられなかったことが最大の問題だ。
(もちろん解任させれない事が同族経営の駄目な所だろう)
円谷プロだけの問題ではなく日本社会の駄目な縮図を見る思いだった。
失敗談として多くのヒントをつかめるのではないか。
円谷プロとは逆にスタジオジブリなど上手くいっている所は毎年のように地上波で過去作の放送が実施されているしTV局との関係も良好だ。
著者である英明氏も円谷プロの社長を辞めさせられた後に中国での事業に失敗している。正直言って経営者として疑問に感じる所も多い。
外での修行といってもバンダイで2年ほどでは知れていたということか。
自宅売却までした金策が成功に結びつかないほどやはり中国事業は難しいのだろう。
というかわけのわからない規制やルールが多すぎる。
法の支配がないし、ルールも極めてあやふやな人治国家だ。
人口13億人というだけで飛びついてはいけない。
最後に繰り返しになるけれども会社、組織のトップの人選の大切さを痛感した。
正直言って円谷プロの問題は本書を読むまで知らなかった。
しかし私達は民主党の失敗などを通じてそれをよく知っているはずだ。