メリットの法則 行動分析学・実践編 (集英社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ①よいことは、行動の直後におこるようにしないといけない。(p61)
    ex痩せるためにジムに通っているといいながら、イケメンのコーチとの会話が楽しみな女性。
    ヘルシーメニューを選択するたびにシールを貼って、100回連続して貼ったら沖縄旅行。

    ②強化されていた行動に対して消去が起こるとき、一時的にその行動は必ずエスカレートする。(消去バースト)p73
    ex片思いのリカコ
    週2~3回、朝早く電車に乗ると会える彼が突然あえなくなったとき、リカコは朝早い電車に乗る回数を増やしたり、別の車両なども探していた。
    たとえが本当にわかりやすい。

    ③弱化の効果は長続きしない。(p80)
    exネズミ捕り。例えば、スピード違反で捕まってしまって、しばらくスピードを出すのを控えるようになったとしても、しばらくしたらまた元の速さに戻ってしまう。
    →新しい行動を教えるには、「アメとアメなし」がよい。つまり強化と消去。
    ムチは副作用が大きい。行動自体を減らしてしまったり、罰的なかかわりがエスカレートしたりする。

    ⓸行動については、形態よりも機能を見ること。p140
    自宅で自由にアクセスさせている好子をすべて親の管理下に置き、学校に行く行動の結果に応じて少しずつ与えていくのだ。(目標はスモールステップ)

    ⑤トークンエコノミー
    子どもがバックアップ好子を自分で選択できることp87
    ワクワク感
    罰として減点しない。

    何度も読んで落とし込んでいきたい本だった。

  • なぜ学校に行けないのか。なぜ勉強しないのか。なぜ癇癪を起こすのか。

    小学1年で不登校になった次男とは、向き合う時間が自然と長くなり、その結果、次男の行動のいろいろな問題が目につくようになりました。登校や勉強に関することだけではなく、例えば、朝なかなか着替えようとしなかったり、テレビやYouTubeを見る時間を守れなかったりといったことです。そんな中、発達障害と診断された次男のために、ソーシャルスキルトレーニングや放課後デイサービスなどについて調べるうちに、発達障害児の療育に「応用行動分析」という考えが用いられていることを知りました。また、親のための「ペアレントトレーニング」にも、応用行動分析の考え方が盛り込まれていることも知りました。

    応用行動分析に基づいた療育では、適切な対応によって子どもの問題行動を減らし、望ましい行動を増やすように促します。応用行動分析のもとになっている心理学の一種が「行動分析学」です。私は応用行動分析やペアレントトレーニングに関心を持つと同時に、行動分析学についても少し勉強してみたくなりました。そこで見つけたのが、一般向けに分かりやすく解説したこの本でした。

    「当たり前のことだが、『今、ここ』で起こっている出来事は、『原因が先』で『結果が後』である。(中略)ところが、人や動物の行動の原因について考えるときは『真逆』に見なければならないのである。つまり、その行動がなぜ起きるのかについての理由を考えるとき、その行動の前に何が起きたのかを考えるよりも、その行動の結果として何が起きたのかを考えなければならない」(28~29ページ)

    序章では、著者のクリニックに通院していた自閉症のアキラ君の例が記されています。面談の最中、アキラ君がひどい奇声を上げるたびに、母親が抱っこして優しく介抱する。そのときは奇声が収まるが、しばらくすると再び奇声を上げる。その繰り返しでした。著者は、奇声を上げるたびにアキラ君をお母さんから引き離すことにしました。これを繰り返すことで、1週間後には奇声は激減し、2か月後には奇声を上げることはなくなったそうです。つまり、奇声の後に生じていた「お母さんに優しく介抱される」という出来事が、奇声を上げるという行動を強化していたので、強化していたものを取り除くことで、奇声も消えていったというわけです。

    不登校についても触れられています。望ましい行動に加点方式でポイントを与えて行動を促す「トークンエコノミー法」を用いて成功した例を挙げています。

    「『登校がんばり表』という1週間分のシール台帳を作成し、朝の会から終わりの会までのそれぞれのコマに、遅刻や早退なく教室にいることができれば、特別なシールをそのコマに貼ることができるようにした(中略)その結果、両名とも学校参加率が大幅に増加した。(中略)6か月後、登校がんばり表を自分でやめても、学校参加率はそのまま維持した」(184~185ページ)

    これは、あくまで著者が理論を説明するために紹介している一例です。実際の不登校は、子どもの状態も行かない理由も様々ですから、全く同じようにやって必ずしもうまくいくとは言えないでしょう。また、トークンエコノミー法がうまくいくかどうかは、「さじ加減」の問題が大きいと著者は書いています。なので、実践の参考にするなら、応用行動分析に基づいた子どもとの接し方に特化した本を探した方が良いかもしれません。ただ、この本でベースとなる理論を知っておくと、実践でうまくいかない時、原点に立ち返るのに役立つと思います。

    私の次男は、「がんばり表」を作って行動を評価し、時々それをうまく調整することで、生活リズムや最低限の勉強などが、かなり順調にできるようになりました。私は本で読んだ知識だけですが、妻はペアレントトレーニングの講座を受講して、応用行動分析に基づいた対応を家庭で実践しています。

    新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校がまもなく終わり、次男は登校する日を迎えます。1年半にわたって不登校だった次男ですが、休校になる少し前から、かなり登校に慣れてきたところでした。これからも、適切な「さじ加減」で、うまく登校を促すことができれば、と思っています。

  • ■メリットの法則
    行動分析学のことで、人間の行動の大半が説明できてしまう。
    人間は、自分自身にメリットがあることを行うようになっているのである。
    不登校も、不登校することにメリットがあるから、そうしているのである。
    だから、そのメリットをなくすことが、不登校の解消につながるのである。
    しかし、何がメリットで何がメリットではない、ということは、文化や個人によって差があるのだろう。例えばマザー・テレサは自己を犠牲にしてまで、貧困や病で苦しむ人を助けてきて、すごい、と思う。それは、確かにすごいのだが、マザー・テレサにとっては、そういう行動が自分の脳の中に快楽をもたらし、そしてマザー・テレサにとっては、それがメリットなのである。

    ■原因と結果の順番
    行動分析学で特徴的なのが、原因と結果の順番である。
    通常は、原因があり、その後、結果があわられる。しかし、この時間の流れが逆なのである。
    つまり、行動の結果何が起きたかを考える。その結果がその行動の原因になっっているのである。簡単にいうと、ある行動がある結果をもたらすことを学習したら、再度、その結果を得るために、同様の行動を行うことになる。例えば、学校にいかないことで、家で自分の好きなゲームが好きなだけできる、と学習したら、その後、学校に行かなくなる日が多くなってくる、というのは容易に想像できるだろう。
    この原因と結果を逆にみる、というのはアドラー心理学の考えととても似ている、とも思うのである。

    ■「アメとムチ」ではなく「アメとアメなし」
    叱らなくても行動は変えられるのである。
    つい、我々がやりがちなのが、好ましくない行動した時に叱って、逆に好ましい行動をした時には何も言わない。しかし、子どもは、注目されることを望んで、ますます好ましくない行動をしていくのである。
    「アメとアメなし」の考えは、好ましい行動をした時だけ、声をかけてあげる。好ましくない行動をした時は、特になにも言わないのである。子どもは、注目されたいので、好ましい行動を進んで行うようになるのである。
    これもアドラー心理学の考え方とにている、と感じる。

    ■今後
    今後は、子育てにおいてうまくいかない場合は、本書でも提示されているフレームワーク「直前」⇒「行動」⇒「直後」に当てはめて分析していきたいと思う。

  • 「行動分析学入門」の次に読んだ本。順番としては大正解。さらに理解を深めるのにちょうどよかった。理解できてしまえば目に映るすべてのものを分析する癖がついてしまって面白い。脳内にダイアグラムが描かれるような、そんな感覚。かといって人生が思い通りにいかないのは当たり前で、もうすこし色々と読んでみようと思う。

  • 行動分析学を学ぼう第三弾。実践編とあるように実例が豊富に紹介されている。行動分析学は、問題となる行動に着目して介入して行動を変える。その応用先は幅広いことが分かった。

  • <本全体、あるいは各章ごとの概要>

    <個人的な知識・ターム>
    * 覚えておきたい事(本全体の主張と関係なくともよい) + キーワードで興味のあるもの
    * 短い説明とページを記入
    <引用>

    <自分の見解>
    * 読後感・意見・反論・補足など書きたいと思ったこと

    <読書回数>

  •  人の行動はそれに付随する出来事で自分にとってメリットとなる「好子」とデメリットとなる「嫌子」によって説明でき、またコントロールもできるという主張を展開している。

     まあ間違ってはいないかもしれないが、本書の中で紹介されている事例は子供や動物や知的障害者。ある程度以上知性のある大人にはそう単純に通用しないのではないか。後半で紹介されるFTスケジュール法など、ほとんど動物の調教みたいなやりかたであり、普通の大人に対して実施したらすぐにそっぽを向かれるだろう。

     自説を世に広めるために書かれた新書という印象を受けた。それは悪いことではないが、その分野について深く知るには不向きだ。

  • 不安についてそれを下げようとするのではなく、不安を感じる状況から逃げずに別の活動をし続けることで、それが結果として下がる

    仕事中のお菓子をなかなか止められません。特に美味しいと感じているわけでもなく、あればある分だけ、惰性で食べ続けている気がします。

    そのせいか、最近体重が増加気味です。減らすには運動すればいいのでしょうけれど、なかなか時間を見つけることができないでいます。見つけることができないと言っているのも、自分の生活の中での優先順位が低いからかもしれません。この考え方がいいとは思いません。

    2015年度も始まり心機一転ということで、何とか運動する時間を作りたいと思います。まずは、仕事帰りのオフィスから自宅までの徒歩、頑張ります。

    書いてるこの日は早速雨で中止ですが。

  • なんだか同じことを何回も何回も繰り返しているだけのように感じた。前半3分の1くらいで十分かな。

  •  人の行動を改善を目指す場合、「アメとムチ」ではなく「アメとアメなし」により行うべし。
     既に罰を与えて行動を促す方法は行動分析学により反証されているそうだ。私も実感に合うし、うすうすそう思っている方も多いだろう。
     人の心の内面にばかり気を取られている世間一般の心理主義を批判している。人の心は容易には観えない、その当たり前のことをもう一度確認したい。そして、その上で行動という確認できるものから心に迫るべきだろう。
     本当に当人と向き合うとはどういうことかを本書は教えてくれる。

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著者プロフィール

兵庫県出身。わが国において家庭出張型セラピー『自閉症児のための家庭中心型指導(home-based intervention)』を開始した草分け的存在である。行動上のあらゆる問題を解決に導くアイデアと技術、有効性が国内外の関係者から絶賛され、テレビやラジオなどでしばしば取り上げられている。1999年、内山記念賞(日本行動療法学会)を受賞。2003年、日本教育実践学会研究奨励賞受賞。専門行動療法士、臨床心理士。桜花学園大学人文学部准教授などを経て、現在、同大学院客員教授。2008年、第4回日本行動分析学会学会賞(論文賞)を受賞し、わが国初の行動心理学系の2つの学会でのダブル受賞者となった。2018年、日本初の行動分析学を用いたインクルーシブ幼稚園を長野県で開園した。

「2021年 『いじめ防止の3R』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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