千年の愉楽 [DVD]

監督 : 若松孝二 
出演 : 寺島しのぶ  佐野史郎  高良健吾  高岡蒼甫  染谷将太 
  • アミューズソフトエンタテインメント
3.15
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4527427656345

感想・レビュー・書評

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  • 映画も見たので登録。
    原作ありきで考えるとやっぱり雰囲気を出すのは難しいなと思う。

    俳優陣はかなり良かったが、
    「路地」や「中本の一党」のそれまで背負ったものが分からないので、
    普通に男たちが刹那的に生きて死んだ話になっている。
    男性俳優陣は(原作との雰囲気の違いがあるにせよ)かなり良かったと思います。

    オリュウノオバが寺島しのぶ。
    原作でも回想で「まだ生理も上がらない年齢」には濡れ場もあるのでキャスティングが若いのはいいとして、
    陰か陽かで陽のオリュウノオバを陰の寺島しのぶがやるとオリュウノオバのお茶目さ、達観さが重くなっちゃってるかな。

    やっぱり原作の「城下町への門は夕方閉ざされ、うっかり正月に入ったら袋叩きにあった」「男は動物の革を鞣すか、山で木を切るか、日雇い土方」で被差別部落だとと分かる書き方とか、
    匂い立つような性と生と死の書き方、
    「死んだ男の背中から彫り物が天に帰って行く」「寝たきりのオリュウノオバの魂が風に乗って遊ぶ」といった幻影を映画にするのは難しいですね。

    ラストの歌の歌詞が一番原作を現していたかも。
     「バンバイ(万歳) バンバイと叫んだが 
      礫(つぶて)打たれて  
      火を放たれて
      槍で突かれて捨てられた」

     「滅びるよりは産んで増やせよ
      子を産むことこそ
      バンバイよ」

  • 中本の血に絡め取られる3人のイケメンの儚い人生。寺島しのぶが語り部役です。フォークナーを読むような血と地域性の物語でした。路地生まれは正業に就けず、あぶれ者として生きざるを得ないという中本サーガが連鎖します。出生の度に映される花窟は神話的、中本に無条件で接するオバは超現実的な印象でした。理屈に走らず、語りに徹することで"業”を表現しましたね。

  • 中上の名作を映画化しようという蛮勇をまずは讃えたい。
    そして日本の男優嫌いの私に、ここまでいい気分にさせてくれたキャスティングにも。

    オリュウノオバ:寺島しのぶ
    礼如:佐野史郎
    中本半蔵:高良健吾
    田口三好:高岡蒼佑
    中本達男:染谷将太

    レイジョさんの遺影が語り始めた段階で、うわーやべーと思っていたが、中本の若者たちは結構いい線行っていた。
    「軽蔑」に続きだが、高良健吾はいい男だなー。
    原作小説の「カタリ」がどれだけ映画において再現されたかは、やや不満だが、男たちのチャーミングさが見られただけでもよし。
    二度繰り返される、オリュウノオバが洗濯物を干す背後を気まずそうに通る男、の場面がよい。

  • 俳優さんの匂い立つような演技と若松孝二の撮る画面を見ているだけで心を奪われるような二時間。ストーリーラインを追おうとせず、三味線の音と一緒に二時間見ているだけで昭和のあの集落の空気感に飲み込まれそうになる。

    寺島しのぶ+佐野史郎という演技派に加えて、高良健吾、高岡蒼甫、染谷将太というエロくて男臭い若手俳優セレクション。興行的な引きはないかもしれないけど、数あまたの中からこの三人を選んだっていうキャスティングがすごい。『軽蔑』の時も感じたのは、高良健吾が外道な役をやると、その整っていて線の細い感じがとたんに軟派で儚い男の性を体現しちゃうこと。外道さをのせても品を失わずエロさが出せる数少ない俳優だと思う。高岡蒼甫は根っからの自分勝手な男だけど弱いところも持っている、っていうおそらくこの人自身にも通じるところがあるんだろうあなって思う。染谷将太くん(年下過ぎて呼びつけできない)は抑圧された狂気を持つ役(『ヒミズ』)や人道派のいいやつ(『永遠の0』)っていう役しか見ていなかったので、今回の男っぽさにドキドキしてしまった。ほんの数分の出演なのに、トリのエピソードの印象が一番強く心に残った。

    原作との世界観の乖離でいくつかの批評があるようだけど、私は原作を読んでいない。寺島しのぶの住む家に人が息を切らして駆け上がり、様々な出来事を伝えて行くシーンが印象に残って、さすが長年の映画人の撮る映画だなあと思ってしまった。合掌。

  • ケガレこそ生命であることを描いている。

  • 飛ばした。。。

    役者は良いんだけど、
    見応えが無い。

  • 原作は読んでいないけど、薄命の青年達が色気あり過ぎて凄かった。閉塞感とか背徳な感じ。

  • 中本の男たちの美しさ。

  • 2012年 日本
    監督:若松孝二
    原作:中上健次『千年の愉楽』
    出演:寺島しのぶ/高良健吾/高岡蒼佑/染谷将太/井浦新/佐野史郎
    http://www.wakamatsukoji.org/sennennoyuraku/

    原作がとにかく好きなので、若松監督で映画化(遺作になっちゃいましたね)ということで期待していたんですが・・・うーん、正直イマイチ・・・。なんでだろう、原作であれほど感じられた神話性が、この映画には欠如しているような。言葉でのみ「中本の血」と連呼されても、それがなんであるのか、なぜそれが穢れと高貴さをあわせもっているのかとか、伝わってこないんだよなあ。

    その原因のひとつとして、登場人物たちの年齢がどうも不詳というか、時間の経過がわかりづらいというのが最大の欠点だったのではないかと。原作ではオリュウノオバの目を通して、幾世代にもわたる中本の男たちの悲劇が繰り返されてゆき、オリュウノオバもどんどん年をとってゆくのだけれど、寺島しのぶのオリュウノオバは、回想している今際のきわでこそ老けメイクの老女だけれど、半蔵から三好を経て達男へと代替わりしてゆく中での年齢の変化が全然わからない。で、半蔵から達男までの流れも、それぞれが少しづつかぶっていて同世代にしか見えないせいで、長い時間のスパンが感じられず、3人まとめて5~6年程度の時間の経過しか感じられない。これでは原作の持つ壮大さは伝わってこないでしょう。だって「千年」ですよ?原作でも実際に千年分描かれているわけではないけれど、それくらいの血の歴史を感じさせられました。それがこの映画からは感じ取れなかったです。

    個々の役者さんは皆好演していたと思います。イケメンすぎて、一見女たちをもてあそんでいるように見えながらも実は女たちの玩具に過ぎなかったのではないかという儚さの漂う繊細な高良くんの半蔵は単純に美しかったし、私が原作でカートコヴァーンみたいだと思った三好は、やんちゃだけど無邪気で憎めない少年のような男として高岡蒼佑が好演していました。達男の染谷くんも寺島しのぶと東京タワー(※リリーフランキーじゃなくて江國香織のほう)展開で頑張ってたけど、いかんせん線が細いというか、「力仕事なら任せておけ」なんて言ってるわりには華奢すぎるのだけはどうも(苦笑)。3人の中ではいちばん若く少年ぽさが抜けていないだけに、ちょっとまだエロスが足りなかったかなあ(笑)。というか全体的に、若松孝二のわりにエロスは足りなかったような気もしますが。冒頭でいきなり血みどろの新にも、もっと出番が欲しかった。

    ロケーションはとても美しかったです。海がみえる路地。あと音楽も印象的でした。奄美大島の島唄を歌ってる方だそうです。
    (2013.11.01)

  • すっきりとまとまりすぎていて、原作の魅力をだいぶん減じている。

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著者プロフィール

 1936年宮城県湧谷町生まれ。17歳の時に家出をし上京。菓子職人、新聞配達、土方、クラブのボーイ、ヤクザ、エキストラ……といくつもの職を転々とし、テレビ映画の助監督を経て1963年『甘い罠』で映画監督デビュー。同作品は低予算ながらも圧倒的な迫力のある映像でピンク映画としては異例の集客力をみせた。氏は「ピンク映画の黒澤明」などと形容されヒット作を量産する。人間の根源的な要素であるエロスと暴力をテーマに据えた衝撃的な作風や、強度を持った豪快な演出、意表を付く設定などが特徴。
 さらに、連合赤軍をテーマにした作品『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2007)は、2007年8月の湯布院映画祭にて「特別試写作品」として上映。同年10月には、第20回東京国際映画祭にて「日本映画・ある視点作品賞」を受賞した。
 2008年2月に開催された第58回ベルリン国際映画祭においても同作品は最優秀アジア映画賞(NETPAC賞)と国際芸術映画評論連盟賞(CICAE賞)を受賞。その他、各国の映画祭で映画賞を総なめにし、毎日映画コンクールで監督賞、日本映画評論家大賞で作品賞を受賞し、日本アカデミー賞以外の権威ある賞はほぼ総なめにした。
 さらに、今回上映の『キャタピラー』では主演の寺島しのぶがベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞。

「2011年 『新時代の希望を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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