こちらあみ子 [Kindle]

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  • 筑摩書房
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  • 表題作は知的に遅れがあると思われるあみ子の幼少期が描かれる。
    好きなものに一途で微笑ましく思える一方、父と再婚した義母が死産した場面でのあみ子の行動は"本心からのプレゼント"なだけにやるせない。あみ子の様な子の行動や言動は一般的に"悪気はない""理解できないから仕方ない"で済ませがちな気がするが、読み進めるほどに周囲の徒労や諦念がのしかかる。苦しい。
    「こちらあみ子」と問いかけるあみ子に切なさを感じるも、あみ子自身はきっとそのまま生きていく。

    「ピクニック」は虚言癖のある同僚との境界が徐々に壊れゆく過程の描写がいい。
    踏み込む範囲のバランスが崩れると、良心の中に潜む悪意が顔を出すものなのかもしれない。残った者達は後味の悪さを感じても、それを都合良く解釈して忘れていくのだろう。

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著者プロフィール

1980年広島県生まれ。2010年『あたらしい娘』で「太宰治賞」を受賞。『こちらあみ子』と改題し、同作と新作中短編「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』で、11年に「三島由紀夫賞」受賞する。17年『あひる』で「河合隼雄物語賞」、『星の子』で「野間文芸新人賞」、19年『むらさきのスカートの女』で「芥川賞」を受賞する。

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