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- / ISBN・EAN: 9234101104430
感想・レビュー・書評
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主人公が優秀すぎるから、色んなことがおきてまうねん
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第二次世界大戦を満州で終えた旧日本陸軍参謀壱岐正は、未曽有の戦禍に一般市民を巻き込んだ責任を感じ、自決を思い立つが、上司である谷川大佐に強く止められる。
“生きて歴史の証人となれ、それが残ったものの責任である”
11年間、“不毛地帯”シベリアで戦犯として抑留、強制労働を課せられ、幾多の拷問にも己の信念を通して耐え抜き、帰国した。そこに、総合商社近畿商事からスカウト。
“商社も戦争も同じ、稼ぐことで国益たる”という社長の信念で入社した。業務を国益と信じ、商社業務に邁進したが、そこは強烈な商社マン、政治家、官僚の意地、嫉妬が渦巻く伏魔殿のような組織であった。敵対する東京商事の鮫島常務の妨害になやまされながら、F-Xの壮絶な獲得競争で勝利したも、かつての戦友の自殺という結末、自動車企業の国際合併事業では副社長の嫉妬からの横やりで失敗、第二次世界大戦の開戦を決意させた石油利権を国益と信じ、ついに不正資金からの贈賄にまで手を染める。最後は自分をスカウトした社長の嫉妬から首をきられようとする。。。上司であった谷川元大佐、かつての恩人の息子で出家した秋津清輝らとの対話で揺り動かされるが、まさに精神的な不毛地帯に、底なし沼のように引き込まれていく。泥にまみれた自分も自覚し、最後は社長とともに、近畿商事を去り、谷川大佐の後を継ぎ、シベリア抑留者の同門会の会長を手弁当で引き受ける。第二次世界大戦後、長い不毛地帯からようやく脱した・・・
シベリア抑留、F-Xの獲得競争、千代田自動車―フォーク自動車合弁事業、石油掘削権獲得と石油が出るまでの描写は、著者の丹念な取材でダイナミックな描写がなされる。そして、闇の深いビジネスの世界で泥をかぶりながら生きる、つまりはシベリアという、“不毛地帯”から、ビジネスという“精神的な不毛地帯”で生きる壱岐と、シベリアという“不毛地帯“から脱し、自らの世界を生きる谷川元大佐、フィリピン戦でたくさんの戦死者を出し、終戦に至ったというこれまた”精神的な不毛地帯“から脱し、出家という道を選んだ秋津清輝の生きざまの違い。
“岩もあり 木の根もあれど さらさらと たださらさらと 水の流るる”という歌に込められた思い、それが人間らしくいきる、ということなのだろう。
ただ、同じビジネスの世界に飛び込みつつも、“水の流れる間々に生きている”(と思われる)インドネシアの華僑や、他の商社の石油マンたちとの対比がなされれば、より商社の世界の闇の深さが見えたであろう。 -
世界を舞台にビジネスしたくなる
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戦争の悲惨さ、商社の過酷さなどがよく分かります。登場人物が良くも悪くも魅力的で一気に読めました。
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過去読了分。
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2005年08月03日00:29
山崎豊子作品は多く読んできたが、
この本も読めば読むほど惹き込まれる。
第二次世界大戦中 陸軍大本営として指揮を振るっていた主人公壱岐正。思いがけない終戦を向かえ対ロシア停戦交渉に赴くも、拘束され、11年間激寒のシベリアの地で拘留される。
ようやく日本に復員し、彼が第二の人生に選んだのは総合商社。日本の経済成長の中で、彼の洞察力・戦略により徐々に活躍の場へ。
この小説は、元伊藤忠商事会長 瀬島龍三氏がモデルとされている。
1.シベリア時代の不遇な不毛な環境と元軍人達との交流
2.高度経済成長下の闇の世界を垣間見ながら発展していく商社マンの姿
3.家族と女流陶芸家との関係
山崎豊子さんの綿密な取材に基づく商社の描写は恐れ入るところ。