「お早よう」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

監督 : 小津安二郎 
出演 : 佐田啓二  久我美子  笠智衆  三宅邦子  杉村春子 
  • 松竹
3.92
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988105102361

感想・レビュー・書評

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  • 10年位前に「東京物語」で凄いと思ったが、敬して遠ざけていた。
    BSで鑑賞。

    ど、どーでもいいーー! な話。
    まずは額を押したらオナラ、という子供たちの隠れた遊び。
    軽石を削って飲むまでしているが、その話もどうでもいい上、音がプーッとコミカルで肩の力抜けるわ。
    大人の話も(グランドホテル形式というのも大仰に感じるくらい)ご近所付き合いあるあるで、どーでもいいーー!

    そんな話の中で、画面作りには凄みがある。
    新興住宅地の作り。
    屋内から見える外に、向いの家の屋内が見えるとか、
    室内の戸や家具やがフレーム内フレームを創り出していて、凄まじい人工性。
    それが絵作りのための絵作りになっておらず、当時のこの人たちの関係性や新たな住環境を表現しているのだろう。
    また当時の文化環境……特にテレビや洗濯機を巡る遣り取りは、親から聞いたことがある話が、あーほんとうにあったんだな、と。
    逼塞感というわけでもなく、愛情たっぷりというわけでもなく、結構冷徹に話も画面も作られているように感じた。
    時々、建物と建物の隙間に見える土手を横移動で歩く人々、やプラットフォームからくすんだ青空が見えたりして、緩急も程よい。
    なんでもアグファカラーというフィルムらしいが、(赤というより)朱色とか(くすんだ)緑青というか、色彩感覚も素敵だった。
    兄弟からすると小母さんにあたる久我美子をはじめ、服装が様式も色も様々で、ファッション的にも素敵。

    話はもうどーでもいいのだが、それ以外がよかった。

  • 親に対する子供のささやかな反抗を通して、グランドホテル方式で描かれる長屋の住人の人間模様。とにかく子供の反抗の仕方が可愛く憎めない。大人と子供の対比を用いた佐田啓二の台詞が些か教訓的すぎるきらいはあるが、無邪気な子供の可愛さ、しょうもなさが全編をおかしみに満ちたものにしている。そして前作『彼岸花』に続き、湯呑みをはじめとした生活に溶け込むには目立ちすぎている美術品の数々とただ只管な赤という色彩への拘りがアグファカラーのフィルムに焼き付けられており、観ていて飽きない。

  • 小津映画を一言であらわすなら、「既視感」だと思う。
    本作も例にたがわず、「麦春」のシーンが響いている。二人の兄弟が両親に刃向かう場面。

    しかも、どちらも弟くんがじつに良い味を出している。
    口をきかないと決めた兄にならって、学校でも口をきかない弟くんの、とてもユーモラスな演技が最高。
    しかもユーモラスなだけじゃなくて、なんというか、そこに存在していることの懸命さに胸が締め付けられる思い。

  • 小津安二郎には珍しく、とてもユーモアに富んでいます。これはなかなか面白い作品です。

    抑圧された子どもによる大人へのささやかな抵抗を描いていますが、子どもの要求は「テレビを買って欲しい」というささやかなものだし、彼らの抵抗は「口をきかない」というだけのささやかなもの。子どもたちの姿はほんと微笑ましいです(おならはやりすぎだと思いますが)。

    「世の中は無駄なことがあるからいいんだ」という佐田啓二のセリフはおそらくこの映画における一番のメッセージなのですが、それを体現するがごとく、駅のホームで延々と無駄な会話するシーンが見事でした。ここにもユーモアがありますね。

    ちなみに、BSでの放送を見たのですが、デジタルリマスターのよる鮮やかな発色はとても印象的でした。

  • 子供が意地を張ってしゃべらないことで起きる、ちょっとした事件。ラストはテレビを買ったことで丸く収まるというのも時代を感じる。昭和30年代の平均的な家庭はあんな感じだったのだろう。
    年金制度が確立していなかったから、定年後が不安定と思われる描写もある。

  • TVが欲しくて無言作戦を続ける子供たちを中心に据えて、新興住宅街の人間関係と、何気ない日常会話の存在意義をユーモラスに描いた作品。
    途中の意地悪い近所のおばさんたちの態度に、日本人の村社会の嫌なところを見た思いにさせられてしまったが、無言を貫く子供たちが一方で熱中している"おなら遊び"のバカバカしさと、作品に一貫して満ちている子供への温かいまなざしに救われる思い。ラスト、駅での英語教師と意中の叔母の、不器用な日常会話にまたクスリとさせられる。

  • BSシネマにて鑑賞

  • 1959年制作の古き良き日常が描かれています。文化住宅の風景が懐かしい。向こう三軒両隣、子供の世界ではお隣同士の行き来が当たり前、回覧板や町会費、汲み取式の便所、白黒テレビや洗濯機がまだ珍しい時代のアイコンがノスタルジーを感じさせます。

  • 普通の平和な世界。
    住宅地でお隣さんが大きな家族みたいな昔の平和な日本の世界はいまはどこにもないんやなぁと思ってしまった。
    おでこを押しておならを出す子供たち、小さい弟が去り際にアイラブユーって言うのが最高に可愛い。
    笠智衆ってうまいか下手かわからへんなー。どれも同じなんやけど、雰囲気あるから、やはりすごい俳優なのかもしれないな。佐田啓二が男前過ぎるのと杉村春子と東野英治郎しかわからないのでもう少し昭和の俳優も分かるようになりたい。

  • 60年前(あら舞台は八丁畷なんだ!)の映画です。
    白黒版とどちらを見るべきか悩みましたが、この映画はリマスター版のポジ調で見てよかった。
    細々とした、大事の火種な出来事がぽつぽつ発生するのですが、ポジ調で見ると、おだやかに安心して見れました。
    やっぱり小津安二郎のローアングルは、とびきりクールです。

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著者プロフィール

1903年東京深川に生まれる。1923年、松竹キネマ蒲田撮影所に撮影部助手として入社。大久保忠素組の助監督を経て1927年、時代劇『懺悔の刃』で監督デビュー。以来1962年公開の『秋刀魚の味』まで、全54作品でメガホンをとり、サイレント、トーキー、モノクロ、カラーそれぞれのフィルムに匠の技を焼き付けた。1963年腮源性癌腫により死去。1958年紫綬褒章受章、1959年芸術院賞受賞、1962年芸術院会員。作品『生れてはみたけれど』(1931)、『出来ごころ』(1933。以上、松竹蒲田)、『戸田家の兄妹』(1941)、『晩春』(1949、芸術祭文部大臣賞)、『麦秋』(1951、芸術祭文部大臣賞)、『東京物語』(1953、芸術祭文部大臣賞、ロンドン映画祭サザランド賞、アドルフ・ズーカー賞)、『早春』(1956)、『東京暮色』(1957)、『彼岸花』(1958、芸術祭文部大臣賞)、『秋日和』(1960、芸術選奨文部大臣賞。以上、松竹大船)、『宗方姉妹』(新東宝、1950)、『浮草』(大映、1959)、『小早川家の秋』(宝塚作品、1961)ほか。

「2020年 『小津安二郎「東京物語」ほか【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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