刑事のまなざし 刑事・夏目信人 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 娘を襲った犯人が目の前の人とわかる瞬間はどんな気持ちだろう。シリーズものは順番に読むべきだった。

  • 少年鑑別所の法務技官から転職した刑事・夏目信人の短編連作。
    夏目の娘は連続通り魔事件でハンマーで頭を殴られ10年前から植物状態。

    心理的な技術なのかも知れないが、追い詰めるでもなく責め立てるでもなく、犯人自身から零れるように罪が明らかになるのは夏目の瞳の力か。
    ハンマー殴打事件の犯人は目撃証言から少年ではないかと目されていたが未だ捕まっておらず、犯罪を犯した少年たちと向かい合っていた夏目は刑事に転職した。
    文体が他者から見た夏目なので、本当の夏目の想いは判らないし、発せられている言葉が全てなのかも知れない。
    夏目の瞳が刑事のまなざしになった後、罪の見え方は変わるのだろうか。


    ・黒い履歴…殺人を犯し少年院にいた小出と同居している姪の友達の家で殺人事件が起きた。かつて自分に対応していた夏目が刑事として現れた。
    ・ハートレス…ホームレスが集まった公園で、リーダー格の男が撲殺された。それぞれの過去が夏目によって掘り起こされる。
    ・プライド…情事の跡を残した若い女性の遺体が自室で発見された。彼女はストーカー被害に遭っていたことがあった。
    ・休日…父子家庭の吉沢は中学生の息子が犯罪に関わっているのでは悩み、友人の夏目に相談する。
    ・オムライス…池袋のアパートが放火され、母子家庭の恵子の内縁の夫が焼死した。高校生の息子は当時バイクで外出していた。
    ・傷痕…スクールカウンセラーの久美子が最も深刻と気にかけていた友香が、殺人事件が起きたマンションで目撃されていたと大学時代の友人、夏目が捜査のために訪れてきた。
    ・刑事のまなざし…少年時代荒れていた塚本が同級生だった妻恭子と共に参加した中学校の同窓会に、彼がいじめていた太田が現れた。

  • 短編集だったけど
    各物語りがちゃんとまとまっていて
    気持ちよく読めた

  • (Kindle Unlimited29冊目)

    夏目信人シリーズ第一弾。
    ちょっと、柚月さんの佐方シリーズを彷彿とさせる、夏目信人刑事を軸にした連作短編。
    ミステリーとしてはひとつひとつは小ぶりでインパクトには欠けるかも。夏目というキャラクターを楽しむ作品群だと思う。
    表題作「〜まなざし」は、このシリーズの軸となる、夏目の娘が植物状態になった原因となる話。なかなかちょっとややこしい。
    まーでも、挫けずに真摯に犯罪に向き合う夏目というキャラクターは悪くないと思う。



    【黒い履歴】
    舞の父親横瀬透が殺された。叔父殺害容疑で少年院にいたことがあり疑われる伸一は、真犯人が誰かを知り、再び罪をかぶろうとする。

    【ハートレス】
    一人息子をひき逃げで失った雅之は、妻冴子と喧嘩し家を出てホームレスに交じって暮らしている。ある日ホームレス仲間のショウが殺害される。ショウは過去傷害致死事件を起こしていた。実は同じホームレス仲間のナカはショウが起こした事件の遺族で、復讐するために身分を偽り潜り込んでいたのだった。ナカや夏目の人生に触れ雅之は自分の人生を見つめなおす。

    【プライド】
    殺害された桜井綾乃はストーカーに悩まされていたという。同じ職場の相原美羽を通じて知り合い、通話記録に残っていた甲斐谷正一が「彼」ではないかと疑われるが、男を求めた綾乃を嫉妬のためころした彼は美羽だった。

    【休日】
    男で一人で隆太を育てる吉沢。ある夜隆太がよくない連中とつるんでいるのを見かける。高校時代の親友夏目に相談する吉沢。隆太が変わってしまったと悲観的に考えるが、隆太は父親に自分を止めて助けて欲しいと信号を送っていた。

    【オムライス】
    前夫を事故で亡くし一人で息子の裕馬を育てる前田恵子の彼氏、英明が火事でなくなった。放火事件を調査する夏目は、恵子のアパートに火をつけたのは恵子自身であり、それはアパートで眠る「裕馬」を殺害するためだったことを突き止める。男に狂った恵子は邪魔になった息子に手をかけようとしていたのだ。

    【傷痕】
    変死体で発見された沢村浩司のマンションのそばで目撃されたのは有香らしき女子高生だった。自傷と不登校を繰り返す有香は、夏目の大学院の同期の久美子のカウンセリングを学校で受けていた。過去に有香が岩崎に痴漢の冤罪をかぶせたのは沢村の指示だった。沢村に脅迫されていた有香を知り、復讐のために沢村を殺したのは岩崎だった。

    【刑事のまなざし】
    高校時代素行の悪かった塚本聖治は妻恭子と同窓会にでると、夏目や、昔いじめていた太田と再会する。聖治の営むバーに入り浸る太田は、聖治が通り魔で女の子をハンマーで殴る事件を目撃しており、妻を差し出せと恐喝する。さらなる罪を被せるために2人めの女の子を模倣犯として襲った太田。犠牲者は夏目の娘だった。太田が殺害され、すべてを知っていて、聖治が恐喝されるより先に脅され指示に従っていた恭子がその犯人だった。

  • 文章表現、キレが良く、読み進められる。

  • 私にとっては重い、作品だったなぁ。

    虐げられた人間の必死の反撃が、彼らを犯罪者にする。

    人の命は平等。正論だけど、やりきれない。

  • 連作短編ですが、それぞれ物足りないことはなく苦かったり切なかったり、心に響く結末がやってきます。各話語り手が違うので加害者の事情に寄り添うものが多いのです。「オムライス」はそういった意味とはまた違って辛かったです。そんな気持ちはわからないし、わかりたくもない。でも現実にもありそうだと思ってしまう自分が悲しいです。最後の刑事のまなざしも心臓が痛くなるような思いをしながら読み進めました。頭では理解しても私は夏目刑事のようにはなれません。結局読後残ったのは哀しさとやるせなさです。テーマがとても重かったです。

  • 短編集だが全部で1つのストーリーになっている。重大犯罪を犯したが大人になり反省し更生しようとする加害元少年、月日がたっても傷が癒えない被害遺族。罪は許されるのか、罪を償うとは何か、復讐は許されないが自分が遺族になったら本当にそう言えるのか‥難しい、

  • 著者の作品のなかで最も完成度が高いのではないかと感じた。プロットには矛盾がなく、かつ深みがある。表層的な流れや単純などんでん返しにとどまっていないところが素晴らしいと感じた。続編も是非読んでみたいと思った。

  • 10年前に娘が襲われた事件をきっかけに刑事になった夏目を主人公とした連作短編集。犯罪に対して犯罪者とその家族、そして被害者とその家族がどう向き合うか、という重いテーマが一貫しているため、短編なんだけれど、1話1話が骨太。そして、最終話の「刑事のまなざし」で、主人公夏目の娘の事件の謎が明かされるので、長編を読んだかの印象。
    TVドラマ(椎名桔平主演)から入ったけど、原作も読んで良かった。

  • 桔平ちゃんの人情話。
    と思っていたら、結構暗い事件が多くて読むのがちょっと辛い。
    ビデオはとってあります。

  • 2013年10月期ミステリーシアター(月曜後8時)の同名ドラマの原作。

    幼い娘が連続通り魔事件に巻き込まれ、植物状態となったことをきっかけに、少年鑑別所の法務技官から刑事に転職した夏目信人を主人公にした7篇の短篇集。

    法務技官は、いわば人間を信じる仕事、刑事は人を疑うのが仕事。夏目は刑事らしくない「まなざし」を向け、真相に迫っていく。

    夏目が主人公ではあるが、毎回の話を進めていくのは事件の当事者で、ミステリーというよりは、人間ドラマの趣だ。毎話、心の奥底に秘めた人間の深い業が浮かび上がってくる。

    縦軸は、娘の事件の通り魔事件の真相。最終章で明らかになるが、綺麗に収まっている反面、ちょっとやりすぎという気も。

    しかし、最大のミステリーは、娘を植物状態にされた夏目が何を思い、どんな風に生きてきたか、ということだろう。寛容さを持つ一方、激しい怒りを秘めているのは分かるが、どこか図りきれない。はっきり言うと、もったいぶっていて、食い足りない。

    ドラマ版はこの夏目という人物をどう肉付けしていくのか楽しみでもある。

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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