- Amazon.co.jp ・電子書籍 (306ページ)
感想・レビュー・書評
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少年鑑別所の法務技官から転職した刑事・夏目信人の短編連作。
夏目の娘は連続通り魔事件でハンマーで頭を殴られ10年前から植物状態。
心理的な技術なのかも知れないが、追い詰めるでもなく責め立てるでもなく、犯人自身から零れるように罪が明らかになるのは夏目の瞳の力か。
ハンマー殴打事件の犯人は目撃証言から少年ではないかと目されていたが未だ捕まっておらず、犯罪を犯した少年たちと向かい合っていた夏目は刑事に転職した。
文体が他者から見た夏目なので、本当の夏目の想いは判らないし、発せられている言葉が全てなのかも知れない。
夏目の瞳が刑事のまなざしになった後、罪の見え方は変わるのだろうか。
・黒い履歴…殺人を犯し少年院にいた小出と同居している姪の友達の家で殺人事件が起きた。かつて自分に対応していた夏目が刑事として現れた。
・ハートレス…ホームレスが集まった公園で、リーダー格の男が撲殺された。それぞれの過去が夏目によって掘り起こされる。
・プライド…情事の跡を残した若い女性の遺体が自室で発見された。彼女はストーカー被害に遭っていたことがあった。
・休日…父子家庭の吉沢は中学生の息子が犯罪に関わっているのでは悩み、友人の夏目に相談する。
・オムライス…池袋のアパートが放火され、母子家庭の恵子の内縁の夫が焼死した。高校生の息子は当時バイクで外出していた。
・傷痕…スクールカウンセラーの久美子が最も深刻と気にかけていた友香が、殺人事件が起きたマンションで目撃されていたと大学時代の友人、夏目が捜査のために訪れてきた。
・刑事のまなざし…少年時代荒れていた塚本が同級生だった妻恭子と共に参加した中学校の同窓会に、彼がいじめていた太田が現れた。 -
短編集だったけど
各物語りがちゃんとまとまっていて
気持ちよく読めた
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文章表現、キレが良く、読み進められる。
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私にとっては重い、作品だったなぁ。
虐げられた人間の必死の反撃が、彼らを犯罪者にする。
人の命は平等。正論だけど、やりきれない。 -
連作短編ですが、それぞれ物足りないことはなく苦かったり切なかったり、心に響く結末がやってきます。各話語り手が違うので加害者の事情に寄り添うものが多いのです。「オムライス」はそういった意味とはまた違って辛かったです。そんな気持ちはわからないし、わかりたくもない。でも現実にもありそうだと思ってしまう自分が悲しいです。最後の刑事のまなざしも心臓が痛くなるような思いをしながら読み進めました。頭では理解しても私は夏目刑事のようにはなれません。結局読後残ったのは哀しさとやるせなさです。テーマがとても重かったです。
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短編集だが全部で1つのストーリーになっている。重大犯罪を犯したが大人になり反省し更生しようとする加害元少年、月日がたっても傷が癒えない被害遺族。罪は許されるのか、罪を償うとは何か、復讐は許されないが自分が遺族になったら本当にそう言えるのか‥難しい、
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著者の作品のなかで最も完成度が高いのではないかと感じた。プロットには矛盾がなく、かつ深みがある。表層的な流れや単純などんでん返しにとどまっていないところが素晴らしいと感じた。続編も是非読んでみたいと思った。
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10年前に娘が襲われた事件をきっかけに刑事になった夏目を主人公とした連作短編集。犯罪に対して犯罪者とその家族、そして被害者とその家族がどう向き合うか、という重いテーマが一貫しているため、短編なんだけれど、1話1話が骨太。そして、最終話の「刑事のまなざし」で、主人公夏目の娘の事件の謎が明かされるので、長編を読んだかの印象。
TVドラマ(椎名桔平主演)から入ったけど、原作も読んで良かった。 -
桔平ちゃんの人情話。
と思っていたら、結構暗い事件が多くて読むのがちょっと辛い。
ビデオはとってあります。 -
2013年10月期ミステリーシアター(月曜後8時)の同名ドラマの原作。
幼い娘が連続通り魔事件に巻き込まれ、植物状態となったことをきっかけに、少年鑑別所の法務技官から刑事に転職した夏目信人を主人公にした7篇の短篇集。
法務技官は、いわば人間を信じる仕事、刑事は人を疑うのが仕事。夏目は刑事らしくない「まなざし」を向け、真相に迫っていく。
夏目が主人公ではあるが、毎回の話を進めていくのは事件の当事者で、ミステリーというよりは、人間ドラマの趣だ。毎話、心の奥底に秘めた人間の深い業が浮かび上がってくる。
縦軸は、娘の事件の通り魔事件の真相。最終章で明らかになるが、綺麗に収まっている反面、ちょっとやりすぎという気も。
しかし、最大のミステリーは、娘を植物状態にされた夏目が何を思い、どんな風に生きてきたか、ということだろう。寛容さを持つ一方、激しい怒りを秘めているのは分かるが、どこか図りきれない。はっきり言うと、もったいぶっていて、食い足りない。
ドラマ版はこの夏目という人物をどう肉付けしていくのか楽しみでもある。