里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21) [Kindle]
- KADOKAWA (2013年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (267ページ)
感想・レビュー・書評
-
『里山資本主義』藻谷浩介&NHK広島取材班(著)
欲望の資本主義から、里山資本主義へを提起する。
著者の藻谷浩介は、平成合併前の約3,200市町村のすべて、海外59ヶ国を踏破している。そして、限界集落や農村に、日本の明るい未来が存在しているという。「マッチョな20世紀」から「しなやかな21世紀」へ移行させよう。不安、不満、不信に訣別しようと著者はいう。
右肩上がりの経済、大量生産、大量消費、大量廃棄の資本主義。たくさん稼いで、たくさん消費する。自分の生活は、たくさん稼ぐために自分の時間がない。余裕なき生活を続ける。果たして、豊かな暮らしをしているのだろうか。アメリカの豊かな生活を夢見て、日本は真似て生活を変えた。
24時間戦えますか?と言われて、家族を忘れて戦い続けた。ところが、同じレベルの商品が、コストの安い新興国の企業が、日本で安く売り出した。安い労働コストで作られていた。コストを下げろと言われて、結果としてリストラされている。どこかおかしくない。この世の中?挙句の果てに熟年離婚。
高いコストの居住費、光熱費、通信費。生きているコストが高すぎる。
2008年のリーマンブラザースの破綻。ローンが債権化されて、マネー金融工学されて、お金がレバレッジされていた。いつの間にか、ヤクザな経済におどろされていたのだ。欲望は果てしない。欲望経済に溺れてた。その枠組みは、GAFAというネット上の世界での巨人たちに支配されるようになった。おかげで、グローバルニュースが日常的に溢れるようになった。その上、自分の知りたいことや、スマホやメールで、あなたの欲しいものはコレですといってくれる。2011年に、フクシマのメルトダウンが起こった。自然の猛威に驚き、原発の安全性が嘘だったことが明らかになった。そして、2019年12月初旬に, 中国の武漢市からコロナが始まり、横浜にコロナがお土産の豪華クールズ船がやってきた。世界にコロナ禍がやってきた。ウイルスはしつこく、変異を重ね、2年近く変異し続けた。飲食店は制限され、行動をコントロールされ、ワクチンを打っても、コロナになるって、おかしくない。2022年2月24日に、プーチンは小麦の産地のウクライナに侵攻した。あれよあれよと円高になった。輸入が困難になり、日本の有り様が大きく変わった。
そういうことを予想したかのように提起しているのは、里山資本主義だった。それは、「カタギの経済」なのだ。晴耕雨読。晴れたら畑に出て、雨が降ったら家でのんびり好きなことをする。お金のかからない生活、自分の食べるものは自分で作っちゃう。
本質的な問題は、人口の減少だ。働く人が減っているのだ。つまり、給与所得が減っている。GDPが上がらないのは、働く人が減っているからだ。その上、給料が上がっていない。GDPが上がらない。労働者が減ったのに、生産性が上がっているのはロボットのおかげだ。株価はGDPに影響しない。
本書では、オーストリアの取り組みを説明する。化石燃料つまり地下資源ではなく、地上資源を有効に使う。木材製造は可能性を秘めているのだ。中国地方の各地、岡山県真庭市、広島県庄原市、山口県周防大島、島根県邑南町、鳥取県八頭町などを紹介する。何もないとは、なんでもやれる可能性があるのだ。田舎はしなやかにたくましいのだ。
「里山資本主義」とは、お金に依存しない経済のあり方だ。GDPは上がらないが、豊かに生活できる社会のスタイルだ。その例として、木材加工の廃材を活かしたバイオマス発電や「エコストーブ」、地域の資源を循環させたコミュニティづくり。
マネー資本主義へのアンチテーゼ①規模の利益への抵抗。②分業の原理の異議申し立て。③お金で買えないものがある。さらに進むと原料を高く買い、人手をかける。エネルギーを高く買わない仕組みを作ればいい。役に立ちたい、張り合いが生きがいを作る。そのことが健康寿命が伸びる。人と人とのつながりを回復・強化することになるのが里山資本主義だ。スマートシティのコンセプトはエネルギーの効率化、コミュニティの復活などは、里山資本主義と同じ方向なのだ。65歳以上の老人たちが、里山資本主義に向かえば、日本は豊かになる。金銭換算できない価値を生み出すことがこれからの日本の課題だ。いやはや、おもしろい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
遅ればせながら読んだ。
自分の移住先が間違ってなかったなぁとあらためて思う。
少しずつ里山資本主義の暮らしを実践していきたい。
エコストーブに興味津々。 -
本書は、グローバル経済に依存しないローカルな経済を礼賛する本。木を燃やして燃料にするなど、日本全体では到底実現できないような方法を中心に、いろいろな地域活性化の動きをほめたたえる。地域活性化は大いにやってほしいところであるが、その前提はグローバル経済の中でまずまずの成績を上げてきた強い日本経済に支えられていることを忘れて、これを礼賛する論理展開はいかがなものか。まるで、マルクス・レーニン主義に憧れる昭和中期のインテリを思い起こさせる。まあ、受信料という税金に支えられているNHKの記者が著者だけに、こういった浮ついた論理になるのだろう。しかも、インテリのくせに、色々と経済的に誤った思い込みをしており、せっかくの町おこしの試みも、このナイーブな文書のために台無し。こういった本を自分の名前で出版できる著者の厚顔さには感心するが。
-
とても面白い。
サブシステムとしての里山資本主義、とても正しいことを言っていると思う。
途中、「それで原発を止められるのか」と批判されることがある、という話しが出てくる。ひとつのことで、エネルギー問題を全部解決できちゃうようなステキな解などないとわかりきっているのに、こういう批判がいつまでたってもなくならないこの国のエネルギー議論。だから、著者の「サブシステムとしての」という考え方はとてもしっくりくる。
日頃、マネー資本主義ど真ん中な自分のなりわいに、違和感というか疑問を感じている中(かと言って現実的にはそれをやめるられるわけでもない)で、ある意味つらい読書だったかな。
ま、単純に言うなら、「里山行きたーい」ていうことです^^ -
幸せとは何か?つながりでは?
地域社会内での物々交換は、GDPには換算されないけど、
お金が地域外に出て行かないという意味で、地域が豊かになる。
里山の木材の活用→エネルギー問題のサブシステムとはなりうる
オーストリアでは、脱原発を達成している。
化石燃料を購入することは、資産を外部に出しているということ。 -
そういうシステム(?)が一つのバックアップとして機能するのはいいことだと思いますが、書き方として当事者としての”満足感”や"誇り"を担保にしてしまうと、それは個々人レベルの問題であるので、一般化できないかなと思いました。
それこそ「マッチョではないシステムだ!」と言われてしまえば、いやはやそうですかとしか言えないですが… -
価値観を揺さぶられる本だった。
「日本は資源がないから外資から買い続けるしかない」というありがちな言論が根本から覆される。
森林から持続可能なエネルギー獲得が可能だが、エネルギー獲得が目的になると採算が取れない。だから木材をより活用する社会となり、木くずをエネルギーに変える社会に変革するとこで経済自立ができると。
一方で物々交換はGDPを増やさないため、資本主義の視点でみると良くないこととして捉えられてしまい、既得権益と対立する。
日本の未来に対する悲観論ばかり蔓延するが、国レベルでの「地産地消」も可能という話は大きな希望につながった。
砂戦争と合わせて考えるると、今後コンクリートから木材への需要の移行も起きてくることだろう。
オーストリアがバイオマス大国として日本の一人当たりGDPを超えてるなど知らない事実がたくさんあり、勉強になった。 -
ツイッターやら2ちゃんやらFACEBOOKやらで日々の愚痴をこぼす前に、これ読んでメシ食ってたっぷり寝て次の一日を過ごしたらいい。