「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》 (講談社学術文庫) [Kindle]

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著者 : 橋本毅彦
  • 講談社 (2013年8月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (221ページ)

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「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》 (講談社学術文庫)の感想・レビュー・書評

  •  現代の工業製品は標準化・規格化が進んでいる。工作機械による大量生産が一般的になったため、職人がひとつひとつ手作りした品物の方が貴重で高級のごとく扱われるが、取り替えても同じように使えるモノが大量に供給されることのメリットは大きい。また、寸分違わず同じモノを高速かつ大量に作るというのは、それ自体が極めて高度な技術だ。

     今となってはそれが当然のことのように受け止めているが、もちろん最初から標準化されていたわけではない。本書はタイトルの「ものづくり」を始め、あらゆるモノと活動の標準化がどのように進んできたか、その歴史をまとめている。

     ネジや物流など比較的身近な事例を挙げて解説しているのでわかりやすく、関わった人々の思惑や当時の雰囲気もイメージしやすかった。各分野で昔ながらのやり方を変えたがらない人々もいて、最初からすんなり受け入れられたわけではないようだが、その後の発展を見れば標準化の重要性がよくわかるだろう。抵抗にあいながらも推進した先人の努力に感謝したい。

     ところで標準化という活動は欧州が得意としているが、大量生産は米国のイメージがある。本書によれば欧州で生まれたアイデアを米国が実現したというのが実際の流れのようだ。なるほどと思う。

  • 製造現場で設計図が使われだしたのは19世紀になってからで、それまでは手作りのオーダーメイドだった。標準化が採用されたのはマスケット銃の製造でこれは大量生産というより修理のしやすさに注目されたからだった。引き金を引くと鶏の頭の様な火打ち石(だから撃鉄の英語がcockなんだ)がバネで重心に叩きつけられ着火する。アメリカ大統領になったジェファーソンがフランスのこの製造法に注目し、武器工廠に導入を始めた。この工廠の技術者がコルト、S&W、ウインチェスターなどの銃器メーカーやリンカーンや航空機エンジンのP&Wなどが生まれて行った。1851年に開かれた第一回のロンドン万博ではコルトの拳銃が出展され好評を得た。専用工作機械により均一部品を作る方法はアメリカン・システムと呼ばれヨーロッパに逆輸入されたのだ。フランスでは高コストが原因で廃れていたのだがこれは規模の効果が得られなかったからのように見える。

    標準化のために必要とされたのがゲージだ。同じサイズの大砲と砲弾を作るためわずかに直径の違う筒が作られ砲弾を転がす。大きい方から入るが出口でつっかえれば適正サイズだ。また砲身を削るため水力を利用した工具が生まれた。鉄製だと硬くて削れないが青銅の場合は中心に柔らかいスズが溜まるためそこを削り取ることで結果として均質で頑丈な砲身を作ることができた。標準化は大量の武器を準備し戦場で交換修理をしやすくするために生まれたと言っていい。

    プレス機の原型もこの頃生まれている。自転車のホイールの製造に落とし鍛造という技術が採用された、熱い鉄の塊にハンマーを振り下ろし形を整えて整形するのだが食肉解体業をヒントにした流れ作業とともにフォードの自動車製造にプレス技術として受け継がれて行くことになる。

    1999年末ニューヨーク・タイムズはこの1000年間に生まれた最も役に立つ技術としてネジを選んだ。標準化の好例だがネジ山の角度は55°に決められた。これは当時流通していたネジ山の平均値で理論的な整合性は特にない。後にアメリカのセラーズ規格が国際標準規格と採用されるのだがこのネジ山の角度は60°で簡単に測定できる(円周の1/6)。一方蒸気機関車のような振動が激しいところではよりピッチが細かいものが、蒸気配管のように錆びやすいものには外しやすいように緩いピッチの物も残った。

    ネジの規格を定めたセラーズの元にやってきたのが科学的管理法の生みの親フレデリック・テイラーだ。テイラーは旋盤の切削加工に影響を与える12のパラメーターを上げそれぞれを数値化していった。またレンガ積み作業ではギルブレイス夫妻が作業の標準化を進めて行った。

    1884年には材料試験方法の国際標準化が始まっているがこの会議結果は拘束力を持たず情報交換を主としている。理由は新たな材料や試験法の発展を見込み規格が時代遅れになることを見越してのものだった。これがISOの元になっている。

    アメリカのフーヴァー大統領が商務長官時代に進めたのが「作業’単純化'部」でこの時決められた重要な物がある。紙のサイズだ。AB版は折りたたんだ時に縦横比が変わらない。グローバル化を決定的に進めたのが箱の標準化、コンテナだった。詳しくはマーク・レビンソンのコンテナ物語「The Box」に書かれている。成毛眞氏やビル・ゲイツも推薦の一冊だ。

    紙やコンテナそれと交流電源などは合理的な理由が標準になったが、今では不合理な物がデフェクト・スタンダードになったものもある。今この文章を書いているQWERTYキーボードでこれはタイプ速度を遅くするために発明された配列だ。より合理的な配列はすでに発明されているがQWERTYに慣れた人を新しい配列になれさせるための訓練期間が参入障壁になってしまっている。

    電流の話などは今後スマ... 続きを読む

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