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- / ISBN・EAN: 4933672242453
感想・レビュー・書評
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タルコフスキー監督、183分は長げーよ!と思っていたら、ずっと魅入ってしまい一気観してしまった。(笑)
1967年ソ連映画。監督はアンドレイ・タルコフスキー監督で共同脚本も兼ねる。
主演はアンドレイ・ルブリョフ役のアナトリー・ソロニーツィン。ほかに、画家フェオファン・グレク役にニコライ・セルゲーエフ、ルブリョフに伴うが半分痴呆気味な女役にイルマ・ラウシュ、ルブリョフと袂を分かつ僧侶キリル役にイワン・ラピコフ、モスクワ大公とその弟役にユーリ・ナザロフ、鐘作りの少年ボリス役にニコライ・ブルリャーエフなど。
15世紀のモスクワ大公国。イコン(聖像)画家の巨匠であったアンドレイ・ルブリョフの半生を描く。映画も大作といってよく、壮大な叙事詩といってもよい。
第一部と第二部に分かれる。
第一部は旅をしながら悲惨や不道徳な光景を目の当たりにし、絵が描けないと苦悩を重ねるルブリョフを描く。
第二部は手を握ったモスクワ大公の弟とタタール人がモスクワ大公国の都市を襲撃し、その結果、ルブリョフが沈黙の行を行うことになったことと、少年ボリスが巨大な鐘を作る状況が描かれる。
この映画でまず特長的なのはルブリョフは終始苦悩をしているということだ。そして、画家の半生を描いた作品であるにもかかわらず絵を描いている描写は全くと言って良いほど無い。また、いろいろな年ごとを画期として象徴的にシーンが作られているのだが、それらの説明がほとんどないため、観客はどんな状況になっているのかは会話や状況を見ながらおぼろげに察知することになっている。
普通に考えれば、どうなってるんだか一見訳がわからないのであるが、それでも見入ってしまうのは監督の描写力が優れているからであろう。
撮影も単調なものではなく、考え抜かれたカットにて大きな状況を描いているかと思えば、木の趣や川の流れや人の表情をドアップでじっと撮ったりもしていて変幻自在である。まさに美的な構図に溢れているといっても過言ではない。
また、各シーンのテンポもよく、状況説明的なストーリー性はない反面、こうした選び抜かれたシーンの数々で観客を魅了する作品であったと思う。
構図があまりによいので、これがカラー映画だったらと思うこともしばしばであったのだが、最後の最後にルブリョフの作品をカラーでみせてくれていたので、モノクロ作品であること自体、計算されたものであったと最後に気がついた。(笑)(この辺りは『ノスタルジア』と同じ手法ですね)
第一部はなぜかずっと苦悩し続けて絵を描かないルブリョフを中心に描いていたものが、第二部では一転、タタール人兵の峻烈なまでの襲撃や仕打ちと、少年ボリスの鐘作りに中心が移ってしまい、肝心のルブリョフが中心から逸れてしまったのだが、間接的にルブリョフを描いていたということにこれも後から気が付き、これはこれで物語性の妙として面白かったと思う。
ラストはどうなることかとドキドキしたものだが、全ては繋がってフィニッシュとしてもなかなか良かったと思う。壮大な叙事詩のラストとしても完璧なものであった。
後期の作品と違い、「動き」も活発なので睡魔にも襲われずに済んだ。(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵を描くこと、愛とはと問うこと、アンドレイの葛藤の人生。ストーリーの陰鬱な重苦しい情緒を雨のシーンの巧みな演出で表している。
そして美しい映像に魅入られる。モノクロのただ広がる世界の平穏と、荒々しく訪れる殺戮、神の恩寵の不在が画面いっぱいに現れ、3時間を超える作品だということを忘れてしまう。さすがタルコフスキーです。
鐘を造る少年ボリスを演じたニコライブルリャーエフも良かった。鐘の響き渡るシーンは圧巻でした。