- Amazon.co.jp ・電子書籍 (237ページ)
感想・レビュー・書評
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社会心理学徒でありながら、これまで本書を読まずに来た怠慢と不明を恥じる。
個々の実験によって外堀を埋めていく手順の見事さ面白さもさりながら、
極力、統計用語を排して簡潔明瞭な語り口で論を進めていく山岸先生の力量に圧倒された。
この本の面白さが私には今だから分かる。
学生時代に理解しえた子達は頭がいいんだな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブリューゲルの絵の一つに「盲人の寓話」という絵がある。これは簡単にいうと、盲人を導く先導者もまた盲人であるために、結局、先導者を含め全員が目の前にある落とし穴を事前に認知できずに落ちてしまうというものである。筆者が新しく定義したヘッドライト型知性。この言葉を見たときにその絵が思い浮かんだ。
本書では地図型知性とヘッドライト型知性が対比的に論じられている。もしこの盲人の寓話の先導者にそれら2つのタイプの知性を適応するとしたらどうだろう。地図型知性をもつ先導者であれば、地図によって落とし穴を事前に認知しているため、穴を回避できる。しかし、地図の範囲外に盲人を導くことはしないであろう。一方、ヘッドライト型知性は地図を持っていないので、穴を事前に把握することはできない。しかし、歩く過程で穴を発見することができる。そして、その危険を次々を回避しながら地図の外へ盲人を導くことができる。もしかするとその先には、危険な落とし穴のない地が広がっているかもしれない。 -
科学的な文系本。山岸俊男氏の本で『社会的ジレンマ』の次に読みたかった本。
一般的信頼尺度の高い人は愚かなお人よしではなく、目の前の人間を信頼できるかできないかを見抜く目を持った人間である、という常識を覆す知見に驚く。人を誰でも信頼するのではなく、(信頼できない人を除けば)人はだいたい信頼できる、が正しい。一方、一般的信頼尺度の高い人は人間関係に疎いというのは笑う。
これが社会の構造に大きくかかわってくる。他人を信頼できない人は人間関係には詳しく、周りを気心が知れた人間で固めたがる。そうやって人間に関する不確実性を低減して「安心」する。これが安心社会。突き詰めると相互監視社会となる。もともと人間不信の人に向いたシステムなので安心社会だが実は本質的には人を信じない。
信頼社会は、各人が相手を観察して動きを読むことで不確実性を低減する社会。政府や企業などは情報をオープンにして不確実性を減らすようにする。差別を解消するという観点からもこちらの方が望ましいという。こちらに向いている人は人を基本的に信頼しているので、信頼で結ばれた世界では人を信じて生きることができる。言い方を変えれば信頼できない人間は相手にせず、見える範囲に置かない。
安心型社会を志向する人は他人に感情移入するのが苦手というのは考えさせられる。誰がそういう傾向の人か、というのはSNSなどを眺めると見えてくる。同じ政治マターの話をしても、そういう人は「自分が仲間内でいいポジションを得るために」発言している。発言にポリシーがなく、場合によっては引用ばかりで自分のポリシーを発信さえしない。
SFコミュニティも見た範囲それで、人気作家とそのフォロワーでコミュニティが形成されており、作家本人や一部の人は一般的信頼尺度の高そうな言動をする一方、フォロワーの中にはコミュニティ内で安心しようと腐心している人が多い。こういうコミュニティでは「作品を発表する」ということは高いヒエラルキーに登るチャンスだが、そうやって公開された作品を読んでつまらなすぎて驚いたことがある。「人を見たら泥棒と思え」な人は感情移入が苦手、というなら元から小説を書くのに向いてない。
仲間内でしか通用しない話を外部にしてしまい炎上案件になることもある。アニメ『プラネテス』の再放送を見て全否定する発言をして原作者が陳謝する事態になったことがある。発言者はSFコミュニティで名の知れた人なので、権威をかさに着て恫喝した形になる。信頼社会ではこういう自分の信頼度を落とす行為はあり得ないが、村社会では自分の地位を確実にするためにアリとなる。
要するに信頼社会への転換は不可逆であり、そこに適応することも教育訓練で可能であり、適応できれば人が信じられるのでそっちの方が幸せであろうという話。
一種の政治的主張があるが、科学的な研究に裏付けられた主張なので説得力がある。 -
一般的に思われている、日本人は集団主義的で、自分の利益を犠牲にしても集団のために協力する傾向が強いというのは間違いであるなど、社会心理学の実験から面白い結論が導かれています。
また、知能には7つの独立した知能(言語的知能、論理/数学的知能、音楽的知能、空間的知能、身体運動的知能、自省的知能、対人的知能)があるとしたガードナーの説を紹介していて、なるほど!と思いました。
なかなか面白かった!