炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~ (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  これまで体形維持には大いに悩んできました。
     30代の頃は自称ふとマッチョ・はたから見れば中年デブというナリで、とにかく運動をすること以外は自分をコントロールをすることはできませんでした。40歳頃から食事量を減らすことで7-8kg程度のダイエットに成功しました。まあ嫁と子どもが実家に帰って(やばいやつでなくて普通に長い帰省をしていたのですが)、その間食事を作るのが面倒で食事の回数が減ったら、結果として痩せてしまった、という感じですが。痩せたのはうれしいけど周囲からめちゃくちゃ心配とかされちゃったりでちょっと複雑な気分でした。

     今も、食事習慣やダイエット・健康に関する本を読むときに思うのは「そんなんしてマジで大丈夫なの!?」という思いや「何でそんな食生活で人間の体は大丈夫なの?」という疑問を良く感じるのです。
     その点では私の関心が、体形維持よりも体調維持へと変わっていったということはあります。サラリーマンたるもの、出社してなんぼであるというのがモットーですので。

     さて糖質制限ですが、ダイエットとしては威力十分ですが、体調を維持する上で安全なのか、その点が今まで不安でありました。
     しかし、本書はそのような私の懸念を相当度減らしてくれたと言えます。というのも、体の仕組みとその歴史についてかなり詳しく説明してくれているからです。脳が糖質を必要とする仕組み、にもかかわらず糖を体内で生成する方法があること、人体内のエネルギー変換方法、加えて、なぜ脳がブドウ糖しかエネルギーに使えないか、なぜ小麦など穀物を人は食べるようになったのか等々についても歴史を紐解き仮説を打ち出しているからです。

    ・・・

     実は本書、ダイエット本としては結構普通かと思います。糖質の体への影響や、日本糖尿病学会のおかしな対処、カロリー計算という非科学的算出について等々が空堪えrています。でも今や糖質制限といえばスポーツトレーナーからジャーナリスト、医師に至るまで多くの方が書いています。糖質制限にまつわる内容は私にとっては既知の内容でした。これには類書が多くあります。糖質制限ダイエットにまつわる情報については個人的には宗田医師の『ケトン体が人類を救う』の方がおすすめ。

     それより、それより。本書で出色である部分は、人間はなぜ糖質なしでもやっていける体になっているのか、ということと、なぜ人間は穀物を食べるようになったのか、ということについてじっくり語っていることです。

     前者については、一言で言えば進化、と言えましょう。でも更に面白かったのは、なぜ脳がブドウ糖という効率の悪いエネルギーではなく脂肪酸を使わないのか、という疑問や、各種の動物の血糖値のレンジを列挙し動物の活動性と血糖値を結び付けていること等です。
     こうした人類のエネルギー回路と歴史については『VII ブドウ糖から見えてくる生命体の進化の諸相』に詳しく描かれているのですが、どのようにして人間が進化したのか、そして人間という動物が他の動物とどの程度同じ(異なっているか)が分かります。

     もう一つ。なぜ人間は穀物を食べるようになったのか、ということについて。ここでも筆者はそもそもなぜ小麦やコメだったのか、そしてそもそもどうして人は定住をするようになったのか(実るのかどうかも分からないものについて誰が半年も待とうとしたのか)、穀物を食べようとしたきっかけはどんな様子であったか、ということについて、大いに仮説を振るっています。詳細は割愛しますが、これが非常にスリリングで納得のいく話であった。最後に筆者は『穀物は偽りの神だった』(P.329)という言い方までされます。すごいですよね。でも個人的には非常に納得できる推理でした。

    ・・・

     本書は上記でも挙げた宗田氏や内海聡氏の著作でも触れられていたことで購入したものです。糖質制限関連の中では、私は一番気に入りました。それはやはり、体の仕組みの説明が詳細、そして穀物摂取の起源について歴史的に遡りダイナミックに仮説を立てているからです。
     ただ、個人的にはそれでも糖質を完全に遮断する気にはどうしてもなれません。バランスとか中庸とか、そういうやり方の方がしっくりくるのです。こうした本を読みつつ、自分の体の声を聞きながらファインチューニングをしていくのが性にあっています。
     
     こうやって体の仕組みや人体の歴史について学ぶことは、サラリーマンをはじめコンディションをしっかり整える上では非常に大切なことであると思います。ゆえに本書は、自らのコンディションをよりよくしようと考えるすべての大人に、コンディショニングの理論的根拠を固める本としてお勧めできる本だと思います。

  • ただの糖質制限ダイエット本かと思ったら、中盤以降どんどん興味深い話が展開される。
    消化管内の微生物の話、哺乳類が母乳を飲むことについて、生物の進化、農耕の始まり。
    すごく面白い。

  • 1
    会社の同僚から勧められて読みました。糖質をタバコの依存症に例えるところで、自分も糖質に依存しているんだなぁと思いました。実家で米を作っているので糖質とは切っても切り離せないなぁと・・・
    次は精米していない送ってもらおうかと考えています。

    この本の中で一点気になったのが 炭水化物 = 糖質 と考えているところです。炭水化物は糖質と食物繊維の合計なので1日の糖質摂取量を角砂糖で換算しているところがあったのですが、そこはもう少し少なくなるのではと思いました。

  • 体内ではよくわからない色々なことが起こっているけど、どう過ごそうが習慣に最適化された身体になるからどうでも良いよ。炭水化物は人類進化の直接的原因であり、食べると天才になるけど食べ過ぎると問題が出てくるからほどほどに。

著者プロフィール

夏井 睦(ナツイ マコト)
医師、練馬光が丘病院傷の治療センター科長
1957年秋田県生まれ、東北大学医学部卒、形成外科医。現在は練馬光が丘病院傷の治療センター科長。従来の創傷治療の正反対とも言える画期的な「湿潤療法」の創始者。湿潤療法に関する著書を数々刊行し、また2001年からは自らのウェブサイト「新しい創傷治療」で、常識(傷は消毒するもの)を覆す治療法の効果と合理性を発信し続けて傷治療の現場を変えつつある。傷を消毒しない、乾かさないという湿潤療法は臨床現場で新しい常識となりつつあり、若い医療関係者を中心に急速に普及している。また、一般家庭用にも湿潤療法の創傷被覆材が販売されるなど、新しい傷治療は確実に社会へと浸透してきている。他方、いまだに一部の頑迷な学会の抵抗があるため、不合理な治療法の矛盾を訴え、湿潤療法の科学的な合理性を説きながら戦っている。また、医学史的な視点に立ち、現在の医学界にはびこる非科学的な常識の変革を目指して、積極的な主張を展開している。

「2013年 『医療の巨大転換(パラダイム・シフト)を加速する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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