- Amazon.co.jp ・電子書籍 (297ページ)
感想・レビュー・書評
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戦争を知る上では避けては通れない人物。日本を戦争へ導いた戦犯なのかということで読んでみましたが、ヒトラーと比べられるような人物では無かったように思います。首相としての対米開戦決定もどちらかといえば暴走しブレーキの壊れた車のハンドルを最後に握らされたという印象でした。しかしもちろん戦争を止められなかった責任はあるでしょう。さらには軍部が戦争推進に大きく寄与したことは間違いなく、そのように暴走していく過程の中で関東軍参謀や陸相として日中戦争の拡大方針をとる立場にあったことや、戦争に精神論を持ち込んだ影響は決して少なくないと思えます。特に沖縄や離島での集団自決や玉砕に「生きて虜囚の辱めを受けず」とした戦陣訓の影響は計り知れないものがあり、これひとつとっても相当の批判は免れないと思います。しかし拳銃自殺したものを無理やり蘇生して絞首刑にかけるというのもなかなか酷い話です。
余談としてヒトラーの快進撃が日本に伝わると「バスに乗り遅れるな」とのスローガンをメディアが流し日独伊三国同盟の気風を後押ししたことが書かれていましたが、2015年に中国がAIIBを発足した時に同じように「バスに乗り遅れるな」と一部のメディアが流したことは記憶に新しいところです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人は権力と持つと腐る。おごりに気が付かないと暴走する。東条はその典型だったんじゃないかな。しかも度を過ぎるぐらい。ところどころ見え隠れする天皇愛、国民愛だけ切り取るなら、ただの優しいオジサンだったのに。薩長への報復と東北の名誉回復が、いつしか国民を危機に陥れることになる。これはまるで西洋からの大東亜開放が、いつしか大東亜占領にすり替わった日本の戦略の写し鏡。東条の愚行=日本が犯した過ち。だから彼は近代史でもまれに見る悪役となったのかも。
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東条英機が首相になるタイミングはかつてないほど最悪の時期であり戦争に突き進むしか選択肢はなかった。そして敗戦… A級戦犯として裁かれる東条は陛下と国民から罰をいただくと甘受して戦争責任を背負い陛下を守るため絞首刑の道を行った。その姿勢には自然と涙が溢れた。ドイツ贔屓でヒトラーのような男と思われていた東条だが実際は独裁者ではなくアメリカ人を困惑させた。陛下の意志を汲み取り行動するがコミュニケーション能力に欠けており力での恐怖政治をひく。非情な冷酷さと弱い物や部下への優しさが共存する特異な軍人像…