The Indifference Engine [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 11
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感想・レビュー・書評

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  • やはり天才。虐殺器官に至るまでのプロセスを知れてドキドキした。
    設定の面白さもさることながら、
    「意識の無意識化」や「人とは何か」をここまでエンターテイメントに出来るのはこの人だけでは。
    物語の初めの?を見事に回収してくれるのに一種の快感を覚える。
    (私は生起するテクストである〜が最後を読むと意味の持ち方が分かる感じとか)

    Mの原罪などD grayman等ダークファンタジー好きなら、どハマりする内容。他の短編集も読む。

  • 創作上の良さを味あう醍醐味もあるが、読書をすることへの歓喜が彩られている。読書をすることはある種その人との対峙であり、その差、異、なるもの。他者の思考を一度自分の中に落とし込め、根を下ろさせる行為としての喜び。
    膨らむ想像の余地に拡がるその先への誘い、思い馳せられるその先へと巡り、辿る想像を掻き立てる興奮であったり、好奇心擽る未知との遭遇であったり。
    著者が遺したもの、そして、喪われてしまい、もう得ることが出来ない事実が残酷に横たわり、その先を見ることが出来ない事実が喚起される嘆き、希求よ。実に惜しい、残念である。

  • Indifference Engineとはなんなのだろう……と思いながら読んで、そんな発想があるのかと驚かされたのは勿論のこと、他の短編集もかなり面白く、興味深く読んだ。短くても濃い。

  • これまためちゃくちゃ読むのに時間かかった…。伊藤計劃の文章と相性悪すぎでござる…。
    とりあえずスナッチャーもメタルギアソリッドも全くプレイしたことないので、その辺りの短編は感想難しいな…。
    「From the Nothing, with Love.」はふつーに好き。オチを知ってからもう一度読みたい感じ。
    「The Indifference Engine」も好きだけど、虐殺器官のスピンオフというのは気づかなかったかも^^;
    上記二作が割と好きなので、ちょっとだけ評価高め。
    伊藤計劃はオチまで分かった状態でもう一度読んだ方が楽しめる作品を書く人だと思うんだけど、文章が合わなさすぎてもう一度読む気にならないのが難点よのう…。
    あと早川は電子書籍に解説入れてほしい。この本も解説読みたいよ…。

  • 「虐殺器官」「ハーモニー」と通底するテーマの短編集。結構バイオレンスを表現の中心にあるのが意外。●007は妙に説得力があって、こういうファンジン世界があるのかと思ってしまう。

    虐殺器官かと思ったらスナッチャー。

  • [女王陛下の所有物 On Her Majesty’s Secret Property]
     小説ではなくマンガ。美大を出ているのは知っていたけど、伊藤計劃が、こんなに絵が上手いとは思わなかった。ストーリーは007のパスティーシュ。著者はライトな007ファンを公言している。
     007の主人公であるジェームズ・ボンドは知識を受け継がれていて、始祖となるボンドから、選ばれた次のボンドへと受け継がれる。
     私は007を、ダニエル・クレイヴしか知らないが、こういう後ろ暗い話は面白い。昔からこんなことを考えている人なんだなと分かった。
    [The Indifference Engine]
     この土地ではホア族とゼマ族が戦争をしている。少年兵が大量に駆り出されて、麻薬を吸って、人を撃ち殺し、女は犯す。敵は人では無いと洗脳されているのだ。武器はアメリカが流したものが大量にある。AKを抱えて、虚ろな脳内を硝煙ですっきりさせる生活が繰り返される。戦争はオランダが調停をして終わらせた。少年たちはアメリカの用意した学校でカウンセリングと授業を受ける。もう戦争はないのだと、ゼマ族を恨む必要はないのだと。少年たちは誰一人として、それを受け入れられない。問題を起こした人は、違う学校に連れていかれて注射をさせられる。その注射を射たれるとホア族とゼマ族の区別がつかなくなる。主人公は学校を飛び出して街に出ても、街では暮らしていけない。物乞いにもセオリーがあるのだ。注射の効果を消してもらおうと学校へ戻ってたら、生徒が暴れて山刀を振り回して、校舎は火を放っている。主人公は街を出て、同じような人を集った。3年が経ち、様々な人種が集まった集団は、街に復讐をするために。
     ウィリアムズという名前の米兵が出てくる。虐殺器官のウィリアムズなのかな。
     アメリカの傲慢さが、正義の歪みを書いている。力を貸して戦争を大きくして、それが無くなるとカウンセリングをして、自分たちの信じる生活にさせてあげようとする。当然、少年たちはいきなり生活を変えられるわけもなく反発をする。アメリカは全てを一つにしようとしている。なので学校にいる先生も、カウンセリングの医者も、キリスト教でいう愛を持って少年たちと向き合う。これが少年たちの土俵での付き合い方なら、まだ良かったのかもしれない。幸せというものが分からず、戦いしか知らなかった主人公は、力を溜めて人を増やして、街を壊しに行こうとする。戦争は終わっていないと、どんな人でも一緒だよと、AKを持って戦争がやってきたことを教えに行く。
    [Heaven scape]
     スナッチャーのネタを使っている。そして話の筋は虐殺器官の元ネタだ。冒頭は虐殺器官と同じだ。この時から、虐殺器官の構想は出来ていたということだ。そして、私はプレイしていないのだが、スナッチャーは虐殺器官に影響を与えているということだろうか。

    [フォックスの葬送]
     MGS3の後に話になる。フランク・イェーガーは作戦中に連絡がつかなくなった。フランクは現地人に武器を与え、戦闘を教えて、即席のゲリラ集団を作った。フォックスが担当したフェニックス作戦で、起きては処刑という最悪の作戦を1年間したことでの壊れもあったのだろう。フランクは現地で恋をして、子供を作っていた。ビック・ボスはフランクと戦い、殺す。子供は引き取り、父と同じ名をつけた。それが、ゲームをプレイしたことのある人なら知っているフランク・イェーガーでありグレイ・フォックスだ。
     フランクの父を出すというのは面白い。MGSは父と子の繋がりも重要な話だ。
    [セカイ、蛮族、ぼく。]
     パンをくわえてぶつかってきた転校生を犯す。弁当を作ってきた委員長も犯す。生肉を食べて、斧を持っている。なぜなら蛮族だから。
     こういうコメディも面白い。平山夢明作品みたいだ。
    [A.T.D: Automatic Death EPISODE: 0 NO DISTANCE,BUT INTERFACE]
     作画は新間大悟という人。物語は伊藤計劃なのだろう。
     米軍統合情報網の目を持つ男は、リンクした場所ならなんでも見通せる。彼が受けた殺害対象は、ジョナサン・ミラー。優生学者のシンパで通り名はホロウマン(うつろな男)。3人の学者の死に関与した疑いがある。
     人形病というものが蔓延している世界で、ホロウマンの娘は人形病で死んだ。その時は仕事が忙しくて、なかなか娘に会いに行けずにビデオで話をしていた。ビデオだけではなくて実際に会いにきてと妻に言われても行かなかった。ビデオで十分だろうと、ビデオの方が隔離されて会えない、妻よりも近いだろうと思っていたのだ。その影響もあり、人形病で死ぬことこそが正しいのだと信じてしまうようになったのだろう。
     ホロウマンは最後に娘の墓の前で殺される。墓はただのインターフェースに過ぎないと言われても、この方が娘に近い気がするんだと死ぬ。
    [From the Nothing,With Love.]
     女王陛下の供物と同じ設定の007パスティーシュ小説。
     入れ替わりをしたボンドの最初の任務は、自分と同じようなボンドの入れ物になる人を殺した犯人を探すこと。今まで4人殺されている。最初の殺人の一月前にグレヴィル・アクロイド博士が殺されていて、博士は入れ替えをする転写技術を維持し改善する研究開発群の主席研究員でもある。
     ボンドは捜査を進めるうちに、犯人は自分だと気づいていく。そして、自分の意識がないということを研究員から告げられる。意識は度重なる入れ替えのたびにすり減って行き、ボンドとしての行動はすれどそれは意識の行動ではないということが分かる。つまり、博士を殺したのは、真実を知った前のボンドだったのだ。ボンドは意識が完全に消える前に自分の物語を書く。PSには意識より愛を込めて。
     意識がないという設定は、伊藤計劃の小説ハーモニーで出てくる重要な設定。意識がどういう風に発生しているかというのが気になっていたんだな。押井守のイノセンス当たりを考察していて、発生したのかなと推測する。
    [解説]
     伊藤計劃と円城塔の合作。
     よく分からん。ディファレンス・エンジンについて語っているのだと思う。あまり理由をつけて欲しいと思って書いている文章ではない。SF小説であるディファレンス・エンジンを読まないと分かりにくいのかな。
     ディファレンス・エンジンは、すべての機能に貢献する。常に勝利する。分かる。! というのは分かった。
     もしかして私もディファレンス・エンジンの影響下なのか。
    [屍者の帝国]
     円城塔が執筆した本の通りの文章だ。出来れば伊藤計劃の屍者の帝国を読んでみたかった。この冒頭から、面白い物語を書いてくれるだろうという雰囲気がすごくする。残念。

  • -

  • ジェームズ・ボンド作品のオマージュ「From the Nothing, With Love.」が良かった。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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