Self-Reference ENGINE [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 222
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (316ページ)

感想・レビュー・書評

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  • 読み方を間違えた…。
    著者の作品を読むのは初めてだったのですが、Kindleのセールにかかっていたので「日本SF大賞候補作」なんてコピーを見つつ購入。
    読み始めてみてみると、完全にブツ切れになった短編が連なる形式。哲学的に感じるくだりもあり、雲をつかむような言い回しのところもあり、クスリと笑えるような気もするし、数学なのか量子論なのか難しい気もする。要はちょっと混乱したまま、物語は意外にサクッと終わってしまう。
    そして最後に私が気付いたのが、「これ、四つに組んじゃいけない本だ…」ということです(笑

    いや、冷静に振り返ってみると「靴下と同衾」とか「床下から大量のフロイトが出てくる」とか、第一部の段階でも既におかしかった!
    本著、しかめっ面で真面目に読んだおかげで読了するまで結構な時間がかかってしまったのですが…。いや、この踊る言葉たちを眺めるだけでも良かったんだと思えば、だいぶ楽しい時間になったはずなのに。。

    と、思いながら本著の冒頭を改めて読み返してみたのですが、異質な言葉回しに戸惑っていた1周目の時と全く印象が違うのです。これはひょっとすると、2周目も楽しめるヤツでは…?
    キャラたちも、その展開も、既に頭に入っているコトもあって、1つ上のレイヤーから眺められると言うか(それこそ、超越知性体?)、2周目を読むことで、作品内の輪廻(では厳密にはないんですが)が繋がって、「過去に向かって撃つ」とかそういった表現がなんとなく理解できるような。。
    1周目から楽しく読める方も当然いらっしゃるんだと思うのですが、個人的には2周目をチラ見したことでやっと作品の価値を理解できた(気になった)気がします。2周目前提で☆4つ。

  • 詳細な書評はネットにいくらでも転がっているのでごく個人的な感想を。
    短編集の体裁をとっているものの、それぞれの関係はある程度明確かつ余白があるので、余白の情報や関係性をを妄想することを楽しめる人に合っている本と思います。
    SFに分類されることが多そうですが、理系的な要素はさほど強くなく、考えることが主眼の哲学的な本だなと感じました。
    序章と終章は明確に繋がっているので、2周目がとても楽しいです。

  • 前提の前提の前提の前提の前提の…という読後感。時間の流れが破壊され、巨大知性体、人間が混在する世界の話。20のみじかいストーリーは緻密に読み込めばおのおのの連環が楽しめるのだろうけれど、そこまではたどりつけず。ハノイの塔の伝説。僕ら自身も始終分子を置き換えられて同じ自分で御座いますと平然としている。何かを失っていないものは、それを持っている。信じていることが真であるか否であるかという「テアイテトス」。着想すると死に至るアルゴリズム。「機械仕掛けの無が存在するが、その証明を行うことはできない」。魅力的なワードたち。個人的には喜劇専従巨体知性体に任命された八丁堀のドタバタのターンと、気落ちする巨大知性体を励ますシーンが好き。

  • 『アルファ・ケンタウリ星人』とか言っちゃうあたり、円城塔さんは悪ふざけがすぎる。
    でも、なんか刺さるんだよなあ。

  • 「イベント」という出来事以来、時空がめちゃめちゃになった世界を舞台に、人間と巨大知性体とやらが攻防を繰り広げる…というような設定の短編集。ひとつ一つの短編は直接繋がっていないけど、関連していて、読み進めるとだんだん話が見えてくる。
    純文学のような文体。というかそのつもりで読まないと「早く話進めろよ」と言いたくなってしまう。いわゆるSFだと思って読むと面食らう。
    この世界は一体なんなのか、巨大知性体とはなんなのか、後半の第2章から明らかになってくるが、第1章はなかなかちんぷんかんぷんな不思議物語だ。明らかに2度読まそうとしてる。

    純文学的SF(?)という感じの新感覚小説で、これは話題になりますよね、という作品。

  • SF的な話題や語句が出てくるのでSFなのだと思われるが、形而上学的な感じや哲学的な感じもする。巨大知性体と人間が存在する世界。知性体を作った人間は、はるか昔にそのレベルを知性体自身が凌駕してしまった。沢山のお話でできてるが、理解できなくてもついつい読み進めてしまう。

  •  一読して、めちゃくちゃ面白い小説だと思った。しかし、これがどういう小説であるか、何が面白いのか、そもそもこれは小説なのかということを他の人に説明するのはなかなか難しいと思う(別に他の小説においても何が面白いのかというのを言語化するのは非常に難しい作業なのだけれど)。
     Amazonのレビューで『SF落語』と評していた人がいたが、まさにそんな感じで、落語の『頭山』と似たような、つまりストーリーとして何でもありなんだけど、物語が破綻しないギリギリのところに線が引かれていると感じた。
     自己言及、メタ小説、論理パズル、言葉遊び、記号論、テキスト論、物語のための物語であり、文章のための文章である。誰もいない森の中で倒れた木は音を出したのか? という存在の問題を考えるとき、観測者の話が出てくる。この文章は観測されている以上存在をしていると言える。しかし、そもそも存在とは何か、観測とは何か、これを考えたことのある人達の頭のなかのぐちゃぐちゃが、それなりに分かりやすく、かつ面白く書かれた小説だと思う。その意味で、とても面白いのと同時にとても気持ちのいい小説だ。
     そう考えると、小説というよりは、タイムトラベルモノのRPGのゲームをやっている気持ちになった。自分の目的はこの世界に秩序をもたらすことなのだけど、次に何が起こるのか全く分からない。自分の行動の結果が何をもたらすのかも分からない。しかし、自分の行動の結果は間違いなくどこかに現れるし、それは”存在”していて、”観測”することができる。自分自身が観測者であるのと同時に、物語の登場人物である。
     ネタとしても『2001年宇宙の旅』や『クトゥルフ神話』を知っているとニヤッとできるものもある。というか、クトゥルフみたいに、一つの宇宙の色んな話がごちゃごちゃ入っている感じが近いと言えば近いかもしれない。物語同士の繋がりは薄いけれど、確実にどこかで繋がっている。そして、この宇宙自体はどこかの神様の夢のひとつなのだ。この物語に納得いかないのであれば、新しい物語を自分で作ってしまうのも有りだろう。つまりそういうことだ。

  • SFの素養もない自分がふとした思いつきで円城氏の本を読んでみたところ、なるほどこれはさっぱり意味がわからない。

    わからないなりに根気強く読み進めていくと、ところどころにひっかかる面白さ。これは読んでみないとわからない。しかし読んだところで何がわかるかは保証できない。

  • 荒唐無稽の衣をまとった理論。
    靴下をはくことは虐待か。
    並行世界の妙を表現した不思議。
    意味不明と興味深いの間を縫いながら進む物語。

    量子的なこと、にアレルギーが無ければおすすめ。

  • 理解しないということを、一旦諦めないで読み続けると、じわじわと面白さが分かって来た気がしない。

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著者プロフィール

1972年北海道生まれ。東京大学大学院博士課程修了。2007年「オブ・ザ・ベー
スボール」で文學界新人賞受賞。『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊
藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞

「2023年 『ねこがたいやきたべちゃった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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