復活の地1 [Kindle]

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  • かつて人類は宇宙に広がり,超光速 "天船" を使って百を超える星々の間で盛んに星間貿易を行っていた(星代)。ところが「四百六十年余り前に起こった星をまたぐ戦争によって、人類は散り散りに分け隔てられた」(人類の母星地球も滅んだ)。星間貿易も途絶え、すっかり衰えた人類(孤星時代)。だが、30年ほど前から大国(星)は再び天船を建造し、勢力を盛り返して周辺の星を侵略し始めた。

    辺境の小さな惑星レンカ。星代が終焉すると内乱が起こって15の独立国家が各地にできたが、やがて元々星の中心地だったヤモ半島の地方国家がレンカ帝国を名乗り、隣国を武力で併呑して惑星統一を宣言した。レンカ帝国がいよいよ星間諸国と対峙しようとした矢先、巨大地震が帝都トレントを襲った。

    物語は、大混乱する帝都トレントの復旧に関わる要人、すなわち傍若無人だが権力におもねらなず為すべきことを淡々と実行する公僕(高級官僚)セイオ・ランカベリー、切れ者の軍人スーザック・グレイハン少将(陸軍参謀本部)、野望を秘めた政治家ジスカンバ・サイテンの3人と、高皇家の姫君スミルを中心に回っていく。セイオ、グレイハン、サイテンは、それぞれに私心や野心を秘めているが、上巻ではそれぞれの本心はまだ明かされない。

    東日本大震災を思い出すなあ。それにしてもこの地震、どうも怪しい。誰かが、何らかの陰謀を企て、人為的に起こしたものなんじゃないのかな?

  • 舞台は遥か未来。人類が太陽系から飛び出し、星間列強と呼ばれる独立した勢力を生み出したそんな時代。辺境の惑星レンカの帝都トレンカを襲った大地震は、何万もの住民の命を奪い、都市機能を麻痺させた。国会議員、官僚、皇族、元老なども巻き込まれたため、帝国の中枢は一瞬にして空白になり、レンカ政府は壊滅寸前。生き残った元老クノロック公は、帝都復興の希望を若きセイオ・ランカベリー総督代理に託す。僻地にて難を逃れた第四息女、内親王スミルが摂政となり、策謀家サイテンを内閣総理大臣に、ランカベリーを帝国復興院総裁に任命した。ランカベリーは帝都を立て直すためその手腕を発揮するが、サイテン率いる内閣と、帝都民の感情と衝突してしまう。さらには、星外の列強諸国の思惑も交差して・・・。


    未曾有の大災害の切迫感に引き込まれるようにして読んだが、ちぐはぐと言うかアンバランスと言うかそんな印象も受けた。というのも、人類がいくつもの太陽系をまたいで繁栄しているような時代なのに、惑星レンカには電話や鉄道や車などがあって、現代の地球の生活水準とさして変わらないようだからだ。また、一般市民や町の様子はヨーロッパくさいのに、皇室はアジアっぽいのも不思議な感じだ。(レンカの生活基盤が現代に似通っているのは、読者が地震の被害を想像しやすくするためだとは思う。)星間国家をそのまま20世紀あたりの日本やイギリスやソ連やアメリカをモデルにした架空国家の物語として見るとしっくり来るかもしれない。


    それにしても国の中枢が災害によって機能停止する、という悪夢をまざまざと見せ付けられた。地震大国である日本は、ちゃんと非常時対策できているのかな。救援物資が迅速に満遍なく行き渡らないとか、道路に乗り捨てられた車が緊急車両の邪魔をするとか、そういう問題に対処できるのだろうか。

    『復活の地』を読むと危機意識が高まる。そして恐ろしい災害に見舞われる日が来ないことを、祈らずにはいられない。

  • 復活の地1

  • SF設定的な惑星レンカの首都に未曾有の大地震が襲ったら、という話。若手文官ライオが覚醒、災害対策に当たって奮闘しつつ政治的なライバルたちが蠢いて・・・というところで終了。地震の真相もSF的原因があるのか?等を含みつつ2巻へ続く。表紙絵からラノベSFを想像していたがさすが小川一水、災害対策を基本とした政治闘争が主題の1巻でした。さてどう続くか。

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著者プロフィール

’75年岐阜県生まれ。’96年、河出智紀名義『まずは一報ポプラパレスより』でデビュー。’04年『第六大陸』で、’14年『コロロギ岳から木星トロヤへ』で星雲賞日本長編部門、’06年「漂った男」で、’11年「アリスマ王の愛した魔物」で星雲賞日本短編部門、’20年『天冥の標』で日本SF大賞を受賞。最新作は『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ2』。

「2022年 『ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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