子どもの「10歳の壁」とは何か?~乗りこえるための発達心理学~ (光文社新書) [Kindle]

著者 :
  • 光文社
3.50
  • (1)
  • (0)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 16
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (286ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ①9,10歳の「壁」と言われる根拠を探る
    ②その年齢で起きている心理学的な変化を概観
    ③9,10歳のさまざまな心の領域の特徴を発達心理学の観点から紹介

    第一章 
    9,10歳はなぜ取り上げられるのか?

    エビデンスはないが取り上げられている?
    神経回路の完成度は10歳までに95%に達する。頭と身体をつなぐコーディネーション能力のもととなることから、10歳までが重要と述べられている
    神経系が10歳まで成長するがその後は変わらない~ある雑誌から

    大脳にある前頭前野は個人差があるが、男子は9~11歳、女子は12歳ぐらいまでに子どものものから大人のものに変化する~前頭前野は学習に大切なのか?

    「質的に飛躍する素晴らしさをみることができる」年齢
    この年齢の子どもたちはそれまでの経験主義を脱して、科学の論理を身につけようとすることや、事象や事柄を比較し、共通性、相違姓を発見し、より高次の分類作業ができるようになるころだと述べている
    過去、現在、未来へと認識を広げ、歴史的なとらえ方ができるようになる
    芸術、文化、スポーツにも興味が増し、話し方にも違いがあらわれるようになり、語彙力、文法力、会話力も高まる
    過去を意識し、仲間を意識し、自分を気にしながらも自己主張を高め、大人に依存しつつも大人を否むという思春期の入り口に立つ

    ◆脇中起余子氏の好評書籍
    『聴覚障害教育 これまでとこれから:コミュニケーション論争・9歳の壁・障害認識を中心に』
      http://hanmoto.com/bd/isbn/9784762826900
    『「9歳の壁」を越えるために:生活言語から学習言語への移行を考える』
      http://hanmoto.com/bd/isbn/9784762828034

    小学校3年生ごろまで
    生活中心の学習
    具体的思考
    言語指導
    言語を覚える学習

    小学校4年生以上
    基本的な教科学習
    抽象的思考
    教科指導
    間接的経験学習
    言語でものを考える学習

    話し言葉BICS→書き言葉CALP
    一次ことば→二次ことば
    語用辞典→語彙辞典
    限定コード→精緻コード
    生活言語→学習言語
    高コンテクスト→低コンテクスト
    訓読みが多い→音読みが多い

    以上は聴覚障害児の言葉の変化

    第二章 9,10歳ってどんな年齢?

    この年齢の特徴
    暴力行為多発
    その心の変化の背景は?

    思考のしかたの変化
    具体的操作期→形式的操作期(抽象的に推論できるようになる)

    ギャンググループ(外面的行動の一体感の得られる)
    からチャムグループ(類似性を重んじる)、ピアぐるーぷ(違いも受け入れ、語り合える)へ

    自尊心が低くなる
    葛藤経験を肥やしに問題解決の能力を育むことが好ましい
    他者から受容されるように支援されるソーシャル教育が必要

    第三章 自分って何?自己意識の変化

    自己意識の芽生え
    自分がこの世に存在することに気づき、自分のとった行動や考えを客観的に顧みる自己意識

    外面的な自己意識から内面的な自己意識へ
    自尊心の高まり(自己について全体的な評価)、自己価値、自己像

    自尊心については2つ
    1)非常によい
    2)これでよい

    1は他人と比較 
    2完全でなくてもよいという維持の気持ち
    2つのバランスが大事

    周囲からの厳しい評価、自分にたいする嫌悪感などを持つようになり、自尊心が低くなりがち
    周囲のものはつとめて、子どもが価値ある存在として自信を受け入れられるようにサポートしていくことが大切

    推理小説が楽しめるようになる年齢
    AはBが○○と考えていると思っている思っている、というようなことを理解できるようになる

    セルフコントロールの発達とがまん
    難しいので、報酬などやがまんの方法について教えながら鍛える

    自己主張と自己決定感
    人に言われるとやる気をなくす

    性についても意識が高まる

    第四章 「考える力」の急成長~認知の変化
    考える力の変化、具体から抽象へ

    保存や系列化の理解が深まる

    頭でっかちな悩める人

    一時的に自己中心性が強くなる
    想像上の観衆を持つ
    個人的寓話を持つ

    想像を楽しめるようになる

    未来のイメージの変化、希望が減り、空虚感が増す
    現代の子どもは時間的展望が欠如していることが指摘されている

    メタ認知の発達~自分のことを少し離れた位置から捉えるようなことがメタ認知

    第五章 複雑な気持ちを知る 感情の変化

    感情は表現すると理解するの発達を考える
    入り交じった複雑な感情を意識できるようになる
    友だちとの関係を保つために、表情を抑制するようになる

    感情のリテラシーを発達させるためには
    1)自分の気持ちを理解していく
    2)他人の気持ちを理解していく
    3)感情の調整をする力を身につけていく
    4)感情をうまく表現し対人関係を築き、維持する


    第六章 親より友情へ 友だち関係の変化
    友だちを選ぶ理由の変化
    低学年~家が近いから、席が近いから(物理的)
    中学年~好きだから、感じが良いから、よい子だから(同情的接近へ)

    自己開示の重要性 親密になっていくプロセス

    ジョハリの窓
    解放領域   盲点領域
    隠蔽領域   未知領域

    同性と異性の友達関係

    友達との同調の高まり~誘いを断れない弱さ

    友達を持つことの機能
    ①仲間付き合い
    ②刺激 面白い
    ③物理的サポート
    ④自我サポート
    ⑤社会的比較
    ⑥親密さ、愛情


    第七章 他人の視点の獲得~道徳性の変化
    道徳性の3つの側面
    ①うしろめたい気持ちを持つ罪悪感、共感、同情など情緒的な側面
    ②行動的側面、おいしいものが目の前にあっても我慢する行動などの
    ③善悪の判断、規則の理解といった認知的側面

    他律から自律へ 規則は変えられると感じ始める年齢

    判断の理由を考えさせることで成長する10歳以降

    道徳と慣習の区別は難しい

    過失、盗み、嘘に関する道徳判断~結果から動機へ
    判断の理由を考えさせることで、成長する10歳以降

    道徳性の発達段階
    1前慣習的水準
     段階1 バツと従順志向(他律的な道徳)
     段階2 道具的な相対主義(素朴な自己本位)志向

    2慣習的水準
     段階3 他社への同調、あるいは「よい子」志向
     段階4 法と秩序志向

    3慣習以降の自律的、原則的水準
     段階5 社会的契約、法律尊重、および個人の権利志向
     段階6 普遍的な倫理的原則(両親または原理への)志向

    ずるい、ずるくないの認識はどこから?


    相手の立場に立つ力~相手の頭に吹き出しを想像できる
    トラベルを解決する能力が出てくる

    相手の内面を想像し、互いの視点を調整できるようになる
    トラブルを解決できるようになる

    第八章 9歳、10歳の子どもとは?まとめ

    9歳男子133.6センチ  30.6キログラム
    10歳男子138.9センチ  34.2キログラム

    9歳女子133.5センチ 30.0キログラム
    10歳女子140.3センチ 34.1キログラム

    運動能力
    50メートル走
    9歳男子9.65秒 
    10歳男子9.35秒

    9歳女子9.93秒
    10歳女子9.54秒

    立ち幅跳び
    9歳男子147.12センチ
    10歳男子154.54センチ

    9歳女子138.73センチ
    10歳女子147.61センチ

    ソフトボール投げ
    9歳男子22.33メートル
    10歳男子26.20メートル

    9歳女子12.50メートル
    10歳女子15.24メートル


    【自分】客観的に見られる
    【考える力】質的に変化する時期
    【感情】感情を対象化し、文章や会話で表現できる
    自分の気持ちに気づく

    【友達関係】親より友の時期
    友達関係が大切な分、恐れる
    【道徳性】役割取得能力を育てることが大事
    自分の視点や立場だけでなくほかの人の視点や立場に立つ練習

    第九章 9,10歳の社会性を育てる支援

    思春期の荒波が来る前に、発達の基盤をつくる
    ソーシャルスキルトレーニングとは
    人とかかわるスキル
    1主観的な印象のみで話さず、客観的に見る
    2抽象的な教え方をせず具体的に
    3だらだらと同じ対応を繰り返ししない
    4性格のせいにせず、教えてあげる

    *未熟なだけ、練習すればうまくなるという発達に切り替える

    認知を変え、感情を変え、行動を変える
    ①ウォーミングアップ
    ②インストラクション
    ③モデリング
    ④リハーサル
    ⑤フィードバック
    ⑥ホームワーク

    感情の種類に気づき、伝え方を知る
    自分の気持ちを言葉で伝えるスキル
    言葉を使わずに自分の気持ちを伝えるスキル
    *まだまだ支えが必要な時期

    第十章 9,10歳の道徳性を育てるアプローチ
    1道徳性を育てるプログラムとは
    親しくなりたいと束縛されたくないという欲求
    2思いやり育成プログラムの理論と対応
    役割取得」相手の立場にたつ経験

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

渡辺 弥生(わたなべ・やよい)
大阪府に生まれる。現在 法政大学文学部教授(教育学博士)
〈主著・論文〉
『幼児・児童における分配の公正さに関する研究』1992年 風間書房
『子どもの10 歳の壁とは何か? 乗り越えるための発達心理学』光文社 2011年
『感情の正体――発達心理学で気持ちをマネジメントする』ちくま書房 2019年
『発達心理学』心理学と仕事シリーズ5 巻 北大路書房 2017年(共編著)など

「2020年 『モラルを育む〈理想〉の力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

渡辺弥生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×