- Amazon.co.jp ・電子書籍 (291ページ)
感想・レビュー・書評
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解剖学者が、ヒトや動物の身体に刻まれている進化の足跡を辿り、生命の不思議を語った書。2006年刊行。
「進化とは、新しい動物を白紙から創作することではなく、数々の設計変更が自然淘汰を受けて生き残っていく、継ぎ接ぎだらけのプロセス」であり、「動物の身体とは、改造に改造を重ねた、継ぎ接ぎだらけの集合体」であることが、数々の実例から説明されている。
骨はもともとミネラル(リン酸とカルシウム)の貯蔵庫だったとか、乳腺はもともと汗を分泌する汗腺だった、肺はもともと比重を調節する鰾(うきぶくろ)だった(「鰾を使ってある程度のガス呼吸を行っている魚は珍しくない」)、四肢(手足)はもともとホバリングするための骨付き鰭だった、等々。「前適応」、実に面白いな。知れば知るほど生命の神秘は深まるばかり。
(短期的な成果やビジネスへの貢献をもとめる)大学改革への強い恨み節が綴られた終章は、ちょっと余計だったな。著者の不満をぶつけられているようで…。
「何千万年、何億年と生き続ける生物群がいるなかで、人類が短期間に見せた賢いがゆえの愚かさは、このグループが動物としては明らかな失敗作であることを意味している」、「次の設計変更がこれ以上なされないうちに、わが人類が終焉を迎えるという、哀しい未来予測でもある」といった人類悲観論もちょっとなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人体がこのような機構になる過程は、綿密な計画書によるものでなく、行き当たりばったりのつぎはぎだった!原始的な動物のエラから、顎の一部から、私たちの骨の形が出来てきたらしいというのがとっても興味深い。また、著者の文章がユーモアに富み、思わずクスッと笑ってしまう部分も。読み終わった後は、自分の体を眺めて、少し労わろうかな、と思う。特に心臓。
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動物解剖学の視点から動物の進化を論じた本。進化のツリーの構造がなるほどなという感じ。生物があらゆる環境で生き残るための軌跡が今の生き物たちの成れの果てだというのがよくわかる。
時間という概念が、今の生き物たらしめているというのも、これを奇跡というのが、結果としてこうなっただけというのか?それは勝手に人間が評価したいだけのこと。あるがままですね。
生き物が適用させてきたのではなく、様々に変化した身体のの変化のバラエティーの中で、環境に適用したものだけが結果として絞り込まれたという言い方のほうがいいのかもしれない。 -
単純に二足歩行になって手が使えるようになり脳がでかくなり、足が遅くなった、というだけじゃなくて、血の巡りなど考えたこともなかった問題が発生していたことがこの本を読むと良くわかる。高速道路を走るためにつくられた自動車が(4足歩行の横移動の血液)いつの間にかスペースシャトルに乗せられた(2足歩行)ようなもの、など例えが大変わかりやすい。フライドチキンを食べながら、ついつい骨を観察したくなる。
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教養としてめちゃくちゃ面白い。
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詳細は、こちらをご覧ください
あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノート
→ http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1421.html -
動物の遺体科学の研究者が、どのような進化によって今の人体構造になったのかを解説した本。タイトルの「失敗」とは進化のいきあたりばったりで進めた結果の無理矢理な構造のことを指している。
この本は現在我々が獲得している様々な部位について、その改造元を紹介する。進化はその仕組みからして、何もないところから新しい器官がパッと出来上がるなんてことは無い。必ず何かしらの改造元があり、それを少しずつ変化させていくものだ。元の形態を知ると、よくここまで変化させたなと感心してしまう。ただ、そうやって構成されているから、あちらこちらに無理が生じているのだが。
人体はよくできているけれども、強引な作りになっているところも多々ある。これを知ると神は、少なくとも人体をデザインした存在はいないということが実感できる。もしデザイナーがいてゼロベースから人類を作ったのならば、もっとうまく設計したはずだ。進化論を信じていない人に訊いてみたい。 -
あらためてタイトルを見て意味がわかった。
結論からいうと人間はその脳の大きさゆえに、人体が適応できない生活を送るようになってしまったということ。
つまり失敗作なのである。
このままいくと滅亡しかないんですね。悲しいですが。
かなりの良作。 -
動物の解剖学を専門とする著者が、人体の進化(とも言い切れないが)について語る。
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人体の各パーツがどのようにしてできてきたかを解剖学の視点から解説。決して0から作り上げたのではなく、あっちを変えてこっちを直しで今に至っていることがわかる。
最終章はちょっと筆が滑り気味感はあるが、興味深い内容。