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感想・レビュー・書評
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【「平凡」のレヴュー】
この小説は、その題名通りある凡庸な男がその半生を綴った手記という体裁である。少しシ ャイな男が拠って立つ確固とした生業を持たないまま大人になり、文学に逃げ、今で言うところのクズ男になり、酷い親不孝をやらかしてしまう。男はそれを契機に目覚めたと綴るが、 その後も文学、芸術についてくだくだ。懲りてはいない。文学、芸術はまっとうな生き方からは生まれない。だから、文学、芸術を志していた自分がクズになったのは致し方ない、とでも言いたげ。しかし、一方で、小説は絵空事、空想であるとも言っている。であれば、自らがクズの体験をしなくとも、そこから生まれる創造を頭の中だけで行うことはできるは ずだ。もちろん、その能力があればの話だが。この主人公は文学者というにはあまりにも中途半端であるが、四迷はこれに自分を投影したのではないかと思う。二葉亭四迷は凡庸どころか、私から見れば才能あふれる小説家だが、自身は自分の才能に限界を感じていたのではないか。その上で、文学に向き合う悩みと苦しさをこの作品で表しているように感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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