愛を読むひと<完全無修正版> [DVD]

監督 : スティーヴン・ダルドリー 
出演 : ケイト・ウィンスレット  レイフ・ファインズ  デヴィッド・クロス  ブルーノ・ガンツ  レナ・オリン 
  • ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
3.90
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988142977526

感想・レビュー・書評

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  • 愛を読む人
    レイフファインズってどの作品でも「憂いを帯びた寡黙な人」って印象です。あんまり笑っている所も見たことないような気がする。
    58年だと冷戦真っ最中ってとこかな、切手収集って趣味は世界的なもんだけど、彼のコレクションの中にハーケンクロイツの切手が伺えるのは、この物語の舞台や時代を匂わすスパイスですね。良い感じです。
    十代だと女性の着替える姿なんてとても刺激的でそれを覗くなんて背徳感ありますね(笑)家庭内で使う燃料が石炭だなんて…これまで見たことないです。敗戦後10年以上も過ぎたドイツの国情が窺い知れるようなシーンです。街並みにも傷跡が散見されるので苦しい時代だったんでしょうねぇ。
    部屋の一角にバスタブとシャワーを設置しただけ…風呂入るごとに部屋中湿気で大変だったろうな…
    チルデンニットにスイングトップ…この年代のドイツってアイビースタイルが一般的なんだね。世界的にそうか…デニムが一般化したのは60年代入ってからだから、まだカジュアルウエアって無くてワイシャツにスラックスがベースの時代ですもんね。
    彼女は30 前後彼はハイティーン…そんな二人の恋愛は複雑な心境が乱れあって然るべきだろう。子供には少し疲れた大人の女の気持ちは難しくて当然か…
    そこからの展開は青年の夢想する世界だな…本を読んで、抱き合って…知的であって肉欲的でもあって…憧れる(笑)まだテレビが普及する前の時代だから本が娯楽の主役だった頃か…良い時代だったんだろうなぁ〜
    ドイツの郊外、草原が広がる場所って「大脱走」を思い出します。ドイツは森の国だけどね。
    字が読めないのか…そして、ナチス親衛隊として働いていたのか…主義信条がナチスに傾倒していたというよりは、単に働き口として就職していた…という感じだが、言われるがままに仕事として成してきた自身の行いを問われる…キツい戦犯裁判だな…
    講堂で生徒たちに先生が語る「法とは」なる講釈がとても面白かったです。
    「仕事選びが間違ってたんでしょうか?」このシーンは非常に印象深かったです。彼女にすれば単に送り込まれてくる人員を受け入れる為に、先にいた何人かを選別して他の場所へ移しただけで、この人を殺すとか殺意があったは訳ではなく、単純な作業でしかなかった…ユダヤ人を虐殺したのはナチスだけど、収容所で働いていたドイツ人たちはあくまでも労働でしか無く、上からの業務命令に従っただけ…それを戦犯と断ずる裁判だと分かっているけど、当事者たちには物凄い温度差があります。
    彼女の親切…ここもスゴイ…胸が締め付けられる…主人公とのこれまでの経緯ともリンクした。彼女の動機がここからの焦点だろうな。めちゃくちゃ面白いです。
    彼女の裁判、彼女の判決に対して、何も行動しなかった。そんな自分の内面に対する葛藤…車内が暗転するとそれから数十年後の現代に戻って…上手い演出で驚きます。そこからの展開も良かった。
    裁判では何もしなかった…何か出来たはずでもしなかった。葛藤があった。若かった…
    ずっと考え続けてきた末の行動で光がさしたけれど、ハグもキスもない距離感のある再会にはこの物語が生半可なものではない闇と共にあるんだと思い知らされる。子供の頃の思い出を美化していた…それは側面でしかない。それだけじゃ割り切ってはいけない深淵が横たわっている。会わないでいた方が幸せな気持ちのままいられたように思う。過去という残酷な記録に打ちのめされた。僅かに抱いていた希望が崩れ落ちていった…
    人生にはどうしても拭うことのできない記憶があるんだね。
    彼女はどうしてそこまで文盲を隠したかったんだろうな…
    被害者と加害者…決して分かり合えない関係性を甘さを排除してスッパリと描いていてとても良かった。この映画の主題は「罪」なのではないだろうか。善も悪も有ったわけじゃないけれど、犯してしまった罪からは逃れられない。
    彼の娘は長い長い父の物語を聴いて何を思ったのか?それを聴いてみたくなった。
    良い作品でした。

  • 『愛を読む人』は『朗読者』が原作です。
    1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳も年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていった。ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消し、数年後、法学専攻の大学生になったマイケル(デヴィッド・クロス)は、無期懲役の判決を受けるハンナと法廷で再会する。
    ハンナはマイケルに会う前にナチの強制収容所で働いていたのです。実はハンナは文盲だった。そのことを恥じて隠し続けていました。文盲を証言すれば、ハンナも他の看守と同様に懲役4年で済んだのに、殺人罪となり無期懲役の刑を受けました。勿論マイケルは証言を迷い教授に相談しましたが、教授はハンナのプライドを尊重した方が良いと云い、伝えません。果たして、それだけだったのでしょうか? マイケルも教授も若い頃の間違いを隠しておいた方がベターと大人的な判断もあったのではないだろうか? そして、マイケルは、ハンナの服役している刑務所に本を朗読したテープを送り始めたのです。ハンナは文字を覚えマイケルに手紙を出します。確かマイケルからは一通も返信はなかったのでは・・・。仮出所前日にハンナは自殺しました。マイケルが朗読した本をハンナに送り続けた理由は何だったのだろうか。ハンナを愛していたようには見えなかった。どちらかといえばしょく罪に近かったのではないだろうか。だとしたら不遜に思えます。

  • 15歳のマイケルは、道端で吐いていたところを一人の女性に助けられる。マイケルは病から全快したのち、彼女にお礼にいく。マイケルは彼女に好意を抱き(ただのエロ坊やとも思うが)、なんとか彼女と接点をもとうと、彼女を遠くから眺めてチャンスをうかがう。そしてマイケルはハンナと関係を持つ。ハンナは行為の前に本を読むことをマイケルに求め、マイケルはハンナに本を読んで聞かせる。
    マイケルの前からハンナが去った後、法学部の学生となったマイケルが傍聴した裁判の被告人の一人としてハンナがマイケルの前に現れる。ナチスの看守であった彼女の過去を知る。そして気がつく。ハンナは文盲なのだと。裁判の資料の中身などわかっていないのに、裁判長からの質問に不確かなまま答えて、ハンナは文盲であることを隠す。文字を読めないがために、ハンナは他の被告人から罪をなすりつけられ、文盲であると露呈するのを恐れ自分がやったと虚偽の告白する。マイケルは悩む。ハンナの罪の重さに関わる事実を知っていると。感情ではない、どう動くかだと教授に諭されたが、マイケルは結局、動かなかった。ハンナは無期懲役を言い渡される。他の被告人よりも格段に重い刑だった。
    歳を重ねたマイケルは、昔のように本を読み、その音声を録音したテープをハンナに送るようになった。ハンナは、テープの音声をたよりに読み書きを学び、マイケルに拙い手紙を送る。時にマイケルに手紙をくれと書いたが、マイケルはただテープを送るだけだった。
    ハンナが近々釈放されることになり、収容所からマイケルに連絡が入る。ハンナの唯一の関係者として、釈放後のハンナの生活を助けてくれないかと。釈放前にマイケルはハンナと再会する。マイケルとハンナの間には、経過した長い年月があった。
    その後、ハンナは釈放前に自殺した。自分のもつお金をあの裁判の原告の娘に渡してほしいとマイケルに遺言を残して。
    マイケルは原告の娘を訪ねた。文盲は言い訳にはならないときっぱりと言われ、金銭は受け取ってもらえなかったが、ハンナ名義で文盲のための支援団体への寄付が決まる。
    そして、ハンナの墓の前で、マイケルが離婚した妻との間の娘にハンナのことを打ち明ける場面で話は終わる。ハンナの墓は、あの夏の旅行で立ち寄った寺院の一角にあった。


    文盲って大変だ。罪は罪だが、毎日知ったかぶりで生きるってつらいよ。何が自分の周りで起こっているかわけわからないよ。誰かに打ち明けられなかったの、ハンナ。。。勉強しようって思えなかったの。。。でも言えなかったんだろうなあ。勉強のために文字を見ることすら怖かった?
    仕事は本当、文字が関係ないものしかできないんだね。ハンナは数字は読めたみたいだけど。
    文字が読めるって、文字が読めて勉強ができるって、幸せなことなんだと思った。

    本作の視聴はdTV経由。以上の記載のあとで、ハンナの文盲に関する民族的背景を知る。ハンナの民族に対する差別を知る。ハンナがどうしても虚勢を張らなければならなかった理由を知る。ああ、ヨーロッパ。この映画が提起していたことの一つは、不遇なマイノリティの問題でもあったわけだ。世の中ってなんでこんなに不平等で不自由で滑稽なんだろう。
    大多数でお金もあって識字率の高いユダヤ人と、ならず者とまで呼ばれる識字率の低い貧しいロマ族(ジプシー)。ともに、かの時代のナチスの粛清対象だったのね。ロマ族への迫害は今も続くという。
    ハンナはそんな中自らの出自を隠して生きていた。マイケルがどうして判決前に動かなかったか、動くことをやめたのか、見方が変わる。

    本作の趣旨とは違うだろうけれど、自分の身は自分で守らねば、そのために最低限学んでおかねば、付け入れられる。そんな世の中の怖さをも感じた。機会は貴重である。

  • 人は時代と共に生きるしかないのではないか。生まれた時代により戦争にいろいろな形で影響され、ある者は死に、ある者は収容所へ入れられ、ある者は収容所の看守となり、ある者は生き抜く。ある者はそういう人たちを親に持ち子供もまた戦争に影響される。

    ケイト・ウィンスレットが見事だ。疲れた車掌だが過去にきっと何かあるという雰囲気。若いレイフ・ファインズもいい。

    1958年、15歳のマイケルはバスの中で気分が悪くなり車掌のハンナに助けてもらい、男女の関係になってゆき、ハンナにせがまれ本を読んであげる。数か月後ハンナは突然姿を消す。1966年大学で法律を学ぶマイケルはナチスの裁判を傍聴するが被告はハンナだった。

    出所前の面会でハンナに過去をどう思う?と聞くと「死んだ人は生き返らない」と答える。マイケルはその答えに不満だったようだ。「悪かった、贖罪している」とでも答えてほしかったのだろうか。しかし戦争当時大人だった普通の人にとって、ドイツにしろ日本にしろ冷静に物事をみていた人はわずかで、ほとんど体制に順応するしかなかったのではないだろうか。ハンナはごく普通にその時代を生きてきたに過ぎないと思う。

    朗読者マイケルは最初の恋が同年代の子だったらこういう人生は送らなかったのだろうか。それともある恋にいつまでもひきずられているのか。墓石の前で子供に語っても・・ 父親にこんな話をされて受け入れられるだろうか?


    ケイト・ウィンスレット インタビュー記事
    https://eiga.com/movie/53191/interview/3/

    原作本「朗読者」訳者・松永美穂さんインタビュー記事
    (上)https://wan.or.jp/article/show/673
    (下)https://wan.or.jp/article/show/682

    2009
    2019.9.15 スターチャンネル1 無料

  • ケイト・ウィンスレットの魂を込めた演技とハンナの潔い生き様に感動しました。ハンナは若く性急な彼を優しく包んでいました。監獄に差し入れられた朗読テープから彼の存在を知り、文字を覚え手紙を差し出します。彼はその努力を知りながら返事をしません。面会に来た彼の様子から、ハンナはそこに愛がないことを知り、自ら命を断ちます。この物語に通い合う愛はありません。今さら、娘をハンナの墓地に連れて行き、何を語ろうと言うのでしょう?

  • いい映画でした。けど邦題にはげんなり。“朗読者”でよかったのに。
    なんの前知識もなく見始めたのでナチスが絡んでいることすら知らなかった。こういう女性を扱った映画をほぼ初めて観て、とっても考えさせられました。法学部の教授の言葉、「問題は“悪いこと”だったかではなく“合法”だったかどうか」みたいな言葉が印象深い。仕事を全うしただけの無学で文盲の女性、不憫でならない。

  • 原作(『朗読者』(新潮文庫))を一気に読んでから鑑賞。
    読んでから観るべき映画。

  • 昔この映画を見たけど、どんな物語だか忘れてしまっていた。なんかもう一度見てみたいと思って見てみたら良かった。
    昔見た時はレイフ・ファインズの目線で見ていたことに今回気付いた。今回見た時はケイト・ウィンスレット目線で見ていた。
    時間は物語の主人公を変えることを思い出した。

  • ムフフな場面を期待して見始めた^^;
    途中からストーリーにどんどん入り込んでムフフな場面なんてどうでも良くなった。
    色んな問題が含まれたとっても良い映画だね!
    ちなみに見たのは修正版だと思う(T_T)

    PS.自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合は有罪とされないのでは?

  • ナチスに関わっていた人々は、大半が「命令されたから」「役割だったから」「仕事だったから」そうしていたんだろうし、それが人間の本質。
    それは社会心理学的にも明らかで「アイヒマンの後継者 ミルグラム博士の恐るべき告発」や「プリズン・エクスペリメント」とかのノンフィクションを観るとよくわかる。

    ハンナが文字が読めないというのがわかった時は衝撃だったな。
    そうやって訳もわからず巻き込まれて、戦争が終わった途端に掌を返したように世間から責められた人も多かったんだろう。

    裁判を傍聴してナチに憤慨してたゼミ同期の男の子の意見は、偏っているけど正しい。
    ただ、それに反対する意見や、もう少し俯瞰的に見た意見とかは出て来ず、議論は中途半端に終わってしまう。
    これは勝手な推測だけど、当時のドイツではナチに関する罪悪感みたいなものが皆あって、公然と反論しにくいような環境だったんじゃないか。
    ゼミの先生はどういう風に結論付けたのかとても気になる。

    ハンナが裁判で正直だったのは性格なのか単に知識がないのか、マイケルは裁判中にハンナに会いに行ったのにどうして引き返したのか、ハンナはどうして文字が読めないことを頑なに隠していたのか、マイケルがハンナにテープを送っていたのは贖罪に過ぎなかったのか、自分のなかで落とし込めていないところも多い。原作を読んで見ようかな。

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