新アラビア夜話 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 「宝島」や「ジキル博士とハイド氏」など有名な作品の著者,スティーブンソン氏の作品。
    この作品を手にとったのは全くの偶然。
    「アラビア夜話」というタイトルだが舞台も登場人物もアラビアとは全く関係がない。解説によれば,18世紀のロンドンをかつてのアラビア野町になぞらえて,王侯と従者が夜な夜な冒険を求めて徘徊するさまは千夜一夜物語をモデルとしているそうだ。
    7つの連作短編からなる短編集。中心人物はボヘミアの王子フロリゼルと従者ジェラルディーン。王子の原語
    princeにはそのまま王子を意味する他に小国の王を意味する場合もあるらしく,いまいち曖昧である。
    最初の話「自殺クラブ」がすべての発端である。フロリゼル王子がある夜店で飲んでいるところにクリームタルトを配って歩く謎の青年が現れる。フロリゼル王子は興味を持って青年と話をする。青年は失恋(と言っても告白すらしていないが)のために絶望し生きる意欲を失っているらしくこの後命がけで何かをしようとしてるらしい。ということでフロリゼル王子は最後まで見届けるべく青年に同行すると主張する。すると青年はフロリゼル王子とジェラルディーンを謎のクラブへ連れて行く。そこで行われていることは...。
    第2話,若いニューイングランド出身のアメリカ人スカダモア氏がパリに滞在中に美しい婦人の色香に惑わされ,殺人事件の容疑者に祭り上げられそうになる話。どういう経緯かでフロリゼル王子に助けを求めることに。
    そしてその死体は誰のものかと言うと...。
    第3話,ブラックンベリー・リッチ中尉はある夜ロンドンで拾った二輪馬車にとモリス氏の屋敷へ連れて行かれる。そこでもう一人のオルック少佐とともに決斗に協力してくれと頼まれる。
    自殺クラブ編はここで完結。続いてラージャのダイヤモンドの話。
    第4話,陸軍少将トマス・ヴァンデラーというのは60歳の尊大で希少の激しい老人である。この人がなにがしかの功績のより,インドの小国の王から世界で六番目に有名なダイヤモンドを賜った。これのおかげでヴァンデラーは一躍ロンドン社交界の名士となった。何らかの円があって親に先立たれて文無しのハリー・ハートリーという若者がヴァンデラー氏の秘書になった。しかしろくに仕事もしなかったため逆鱗に触れて解雇されるも,哀れに思った若き美しいヴァンデラー夫人が召使いとして雇う。夫人は兄とともに何か良からぬことを企んでいるらしく,ある朝ハリーに届け物を頼む。届け物の中身はヴァンデラーから盗んだ大量のダイヤモンドで,怪しんでいたヴァンデラーにつけられ奪われそうになりドタバタとなる。
    第5話,敬虔な若い聖職者のロールズは,ひょんなことからラージャのダイヤモンドを手に入れる。本来持ち主に返すべきところ,これほどの宝となると聖職者でも狂わされてしまい自分のものにしようとする。
    しかしダイヤモンドのままでは見て楽しむしかできない。金に変えるには売らないといけないが,有名なダイヤモンドなので盗品であることは直ぐにバレてしまうのでできない。ダイヤモンドを切断して少しずつ売ればと考えるがダイヤモンドを切断する技術などない。思い余ってダイヤモンドハンターと異名を持つヴァンデラーの弟ジョンに相談してしまう。儲けは山分けということになり,次に続く。
    第6話,スコットランド銀行員,フランシス・スクリムジャーは実直な青年だったが,ある日弁護士事務所を介して高額の年額手当を提供したいという人がいると告げられる。条件の一つにパリに来るようにというのがあったので行ってみることにする。弁護士を問いただしたところ,提供者はフランシスの実の父親に違いないという。フランシスはパリに行って,父親らしい人物を見つけ尾行し住まいを知るも,それは父ではなくジョン・ヴァンデラーであった。ジョン・ヴァンデラーの家の向かいの空き家を借りて監視を続けているといろいろなことが明らかになっていく。
    最終的にフランシスはラージャのダイヤモンドを手にするがジョン・ヴァンデラーが奪うべく追いかけてきて危険な目に合うとそこにフロリゼル王子が登場する。
    第7話,フロリゼル王子はヴァンデラー兄弟にラージャのダイヤモンドを盗んだとして警察に訴えられ,刑事がやってくる。ボヘミアの王子として犯罪者として捕まるわけには行かない。

    話としては面白いのだが,細部に語られないところが多く,伏線未回収という感じで物足りない感じも残る。

  • ロンドンのとある場所にある、選ばれた人だけが会員となれる「自殺クラブ」。正義感からそこへ乗り込んだボヘミアの王子フロリゼルは、死をゲームのように裁定する会長と対決しーー連作短篇集。

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著者プロフィール

R.L.B.Stevenson

「2018年 『女声合唱とピアノのための ドゥーニィのヴァイオリン弾き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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