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感想・レビュー・書評
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図書館本
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思春期の男女2人がお互いに抱く恋心と性への興味、大人への転換点を描いた小説。舞台であるフランス・ブルゴーニュ地方の自然が鮮やかに描かれている。
自然だけでなく、本作に登場するあらゆるものがひたすら美しく描写されているので、現実離れした印象を受けた。
海辺の別荘、健康的な小麦色の日焼け、女の子の青く深い瞳、どこからともなく漂うラベンダーの香り、庭や野原に咲き誇るアザミやキンギョソウといった花々、草原に広がる靄、突如差し込む日の光、何の邪魔も入らない完全なバカンス、ランプをともして食べる夕食などなど…
列挙していくだけでも詩ができそうなほどである。
確かに美しいのだが、やや盛り込みすぎの感があり、貴族趣味というか、ラッセンの絵画のようなやりすぎ感があったようにも思う。通勤電車で読むには向かない小説だ。
主人公2人の恋愛は当初かわいらしく進んでいくが、男の子が謎の成人女性に誘惑され、体の関係を持ってしまうことで一変する。
その後は2人それぞれの葛藤が描かれるわけだが、ベースになっている価値観が現代と比べると非常に古くさく、入り込みづらい。
「こういう時代もあったのだなあ」と思った。理解はするが共感はなかなか難しい。
全体的に「面白い」よりも「羨まけしからん」の感情が勝ってしまい、素直に受け止めることができなかった。自分の器の小ささを実感した小説だった。 -
幼馴染との純粋で兄弟のような愛と、年上の女性との肉体的な愛とを経験する少年のみずみずしい物語。その二つが両立してしまったことに一層苦悩するフィリップの、成長に伴う痛みが丁寧だった。しかしむしろ、それを知り同じく傷つくものの、自身のことにばかり悩む子供っぽいフィリップを包容することで彼に勝っているような、ヴァンカのしなやかさが好きだった。