ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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著者 : プラトン
制作 : 納富 信留 
  • 光文社 (2012年9月20日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (192ページ)

ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  ソクラテスの弟子であるカイレフォンがデルフォイで予言を司る神アポロンから、ソクラテスより知恵のある者は誰もいないとのお告げを受ける。そうは思わないソクラテスは、その真偽や神の意図を知るために、政治家や詩人、職人等を訪ねるが、彼らは特定の分野で秀でているがゆえに、他の事柄についても知恵があると自惚れているように思われた(すなわち、知らないことを知っているソクラテスより知者でない)。そこで、自分よりも知恵のある者を探し求めるため、さらに様々な人と対話・吟味を繰り返すうちに、それが人々の憎しみを生み、敵や中傷が生じてしまった。
     そのような背景もあって、メレトスらがソクラテスを告発した。その内容は、「若者を堕落させ、かつ、ポリスが信ずる神々を信ぜず、別の新奇な神霊のようなものを信じている」というものであった。ソクラテスは、裁判員の同情を買おうとしたり、無罪を懇願したりするのではなく、メレトスらの告発内容の矛盾を指摘した上で、冷静に自身の思いと、それが神の示すところであることを弁論する。例えば、神が、知を愛し求め、他の人々と吟味して生きねばならぬと命じているのに、ここで死や困難を恐れて戦列を脱することは、まさに神々を信じないことになるし、仮にソクラテスが宣誓した裁判員を懇願で無理強いするとしたら、それは皆に神々が存在しないと考えるように教えていることになる(自分で弁明しながら自分自身を告発することになる)から、そのようなことはしないという弁明である。
     結局、ソクラテスには、死刑判決が言い渡される。ただ、ソクラテスは、法廷に上るときも、言論の際も神は行為でも言葉でも一切反対してこなかったことから、死んで困難から解放されることが、自分にとっては善いことだったと判断し、その判決を受け入れた。

     ソクラテスは、死について、それが人間にとって善いことかもしれないのに、人々は、最大の悪だとよく知っているつもりで恐れていると述べている。自惚れている政治家や詩人、職人もそうであるが、我々は、知らないことについて短絡的かつ都合の良いように解釈し、知っているつもりになっているのかもしれない。一方で、他者と生きる我々は、そのように暗黙の前提として認識し合うことによって、社会をうまく回しているのかもしれない。ただ、傲慢で知ったかぶりの人間にはならないように意識したいと感じた。
    法学的な視点から付言すると、ソクラテスは、当時アテナイでは有名人ともいえる人物であったが、そのような有名人を裁くときには、先入観や偏見が介入しうるため、司法に民主主義を持ち込むことの危険性が感じられた。
    以上から、全体として「先入観」が大きなテーマの一つであったように思われる。

  • 『ソクラテスの弁明』
    著者:プラトン(納富信留・訳) 発行日:2012/9/20
    評価:★★★☆☆  (所要時間:2時間)
    読破冊数: 18/100冊

    ■こんな人におすすめ
    ・哲学に興味がある人

    ■概要
    ソクラテスの生と死は、今でも強烈な個性をもって私たちに迫ってくる。
    しかし、彼は特別な人間ではない。ただ、真に人間であった。
    彼が示したのは、「知を愛し求める」あり方、つまり哲学者(フィロソフォス)であることが、人間として生きることだ、ということであった。(「訳者あとがき」より)。

    ソクラテスの裁判とは何だったのか?
    プラトン対話篇の最高傑作、ついに新訳で登場!

    この作品を読む方は「皆さん」と呼びかけられる裁判員の席に坐って、
    騒然とする野外の法廷でソクラテスの語りに耳を傾けている自分の姿を、想像してください。
    当日に裁判員に任命されたばかりの法廷で、何が起っているのかもよく分からないまま、
    告発者メレトスやアニュトスの訴えに耳を傾け、次に被告ソクラテスの言葉を聞いて、その場で票を投じなければならない。
    さて、その瞬間にあなたは、どんな目にあい、何を考え、どう行動するのでしょうか。
    『ソクラテスの弁明』は、私たち一人ひとりに、自分のあり方、生き方を問う作品なのです。 (訳者まえがきより)(amazonより)

    ■この本から学んだこと
    ・英語を無理やり日本語に訳した故かもしれないが
    読みにくく、文字を読んだものの内容の理解に時間がかかり、何度も読み返してしまう部分も多々あった。

    それでも面白い箇所が何か所かあった。

    「私はこの人間よりは知恵がある。
    それは、たぶん私たちのどちらも立派で善いことを何1つ知ってはいないのだが、
    この人は知らないのに知っていると思っているのに対して、
    私のほうは、知らないので、ちょうどそのとおり、知らないと思っているのだから」

    >確かに、しばしば人と話せば話す程、本を読めば読む程
     自分は何も知らないのだなという、絶対に埋まることのない知性の溝に成すすべなく呆然としてしまう。


    「死が善いものだという大いなる希望があることを考えてみましょう。
    (略)私は思うのですが、
    もし夢さえも見ないような深い眠りに就いているそんな夜を選び出して、
    自分の人生で過ごしてきた夜や昼と比べてみて、
    この夜よりも善く快い昼と夜を自分の人生においていくつ過ごしてきたかを
    考えて言わなければならないとしたら、どうでしょう。
    (略)もし死がそのようなものなら、私は、それは得なことだと主張します」

    >作品違いだが『すべてがFになる(森博嗣)』にも似たような描写があって
    それがとても印象に残っている。
    「どうして起きている今の方が現実と言えるのか。赤ん坊は眠りから覚めるときに泣くが
    それは現実から引き戻され、夢に引き入れられた不快感で泣くのではないか」と言ったような描写だったが。

    確かに深い眠りについている夜に勝る心地良さは、現実にほぼないのかもしれない。
    やはり呆然とする。

    いずれにせよ、
    どちらが現実かすら名言できずにいる私。
    これが無知の知なのか?・・・解らない。

    ≪目次≫
    まえがき
    1古くから告発への弁明、
    2新しい告発への弁明
    3哲学者の生の弁明
    4弁明の締めくくり


  • ■概要
    ソクラテスに死刑判決を出した民衆裁判の概要、
    そこにおけるソクラテス自身の言動(弁明)が描かれる。
    また、ソクラテスの弁明を通して、
    彼の特異な哲学(愛智者)人生の発端・経緯や、彼の思想、人となり、時代背景などが描写される。

    ■無知の知
    他の賢者たちは何も知らないのに知っている風な態度を取っているのに対して、
    オレは何も知らないことを自覚している点で優れている、と言っているわけです。

    この事に関して良く知っている」と思う事は1つや2つ持っているでしょう。
    しかし、「良く知っている」と思うと言うことは、
    「もっと知りたい」という好奇心を失くしているに等しいことなのです。

    しかも、1つや2つの分野に詳しかろうが、
    この世の全ての知識・データに比べれば、1人の人間の知識なんて取るに取りません。
    だからこそ、自分は何も知らないと言うのを自覚しつつ、
    「もっと知りたい」と言う考えをしなければいけない、とソクラテスは言っているのです。

    ■死とは何なのか
    ボクたちは、死について何も知らないくせに、あたかも最悪の出来事のように捉えています。
    ソクラテスは、それこそが知った被っているだけで、
    先ほど言った『無知の知」を実践していない、と言っているのです。

  • プラトンの書籍を一通り読もうと思い立った時に、最初に選択した本が本書。
    ソクラテスが死刑になる前の裁判で語った自身の弁護のための「弁明」を題材として、ソクラテスの生と死を哲学の視点からプラトンが纏めたものとなっている。

    本書を通じて学習できる主な点は以下3点と思う。
    ・「無知の知」という哲学会の一種のバズワードの正しい用法と、その背景が知れる。
    ・恥や徳の定義の1つを知れる。
    ・死生観を知れる。

    プラトンの記した内容は、 本書の1/2にすぎない。残りの半分は内容解説となっている。
    この内容解説と本文を対照させながら読むと理解が深まるので、長文解説があることは結果として悪くはなかった。
    ただし、初見で面食らったことは否めない。

  • その人たちが詩を制作しているがゆえに、他の事柄についても、本当は知らないのに人間の中でもっとも知恵があると思いこんでいることに気づいたのです。
    (中略)
    技を見事になしとげるからといって、それぞれの職人は、他のもっとも大切なことについても、自分がもっとも知恵のある者だと自惚れてしまっていたのです。


    【感想】
    何かを完全に知っているということだけが「知っている」ということで,そうでなければ「知らない」とみなすような,二元的な考え方にはあんまり納得できない.

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