メルニボネの皇子 [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • ファンタジー色の強い宮中劇はなかなか肌が合わないものがあって、気になるけど敬遠していた作家ムアコック。年末年始の早川書房のキャンペーンがあったので読んでみる。
    まず訳文がすばらしい。声に出して読みたくなるようなリズムのある文体。原文もそうなのでしょうか?古臭い言い回しというわけでなくリズムなのかな?作品世界にかえってリアリティーを与えています。脳みそ筋肉ヒロイック・ファンタジーを想像していただけに衝撃。
    いろいろな書籍で、主人公エルリックが抱える悩みや無力感と同じものを現代人は抱えると作品紹介されているのも頷けます。脳みそ筋肉の、物理的力、権力こそ正義の世界にいるのに、病弱で薬によって辛うじて生きている。薬に頼らなくて良くなる剣を見つけたら、剣そのものが魂を食い尽くす魔剣で、意にそわない嫌なことをもやらなければやっぱり生きていけない。この矛盾に満ちた生き方に抗おうとするけれどままならない。いやー全く現代人そのものです。ところどころ出てくるご都合主義的な展開も、さらなる不幸を呼び起こす罠かと思うほどです。さすがニューウェーブを牽引してきた作者だけに、単純な作品にはならない。
    悩める若者はこれからの自分の姿を見るだろう。今更うじうじ悔いる僕ら中高年はエルリックだけが傷を舐めてくれるのを知って涙する。
    後書きでムアコックがかかわったプログレッシブ・ロックバンドのホークウィンドまで紹介されていて驚く。エルリックの世界が音楽で表現されていて面白い。
    楽しみが増えてしまった。

  • 《永遠の戦士》5冊目は、エルリック1■『メルニボネの皇子』耽美的なメルニボネのイメージはかつての天野氏イラストだ!〈夢見る都〉の前日譚とも言えるオープニングは「混沌」と「宿命」に囚われた破滅行。ストームブリンガーやラッキールとの出会いが描かれる。アリオッホ問題やプリンスを皇子と訳す相変らずの謎はあるも訳出は改善『真珠の砦』初読時は未完走?〈夢盗人〉ウーンが、のじゃ系だったことすら記憶になく、目眩く夢の旅路が文字通りとなっていた、いま読むと芳醇な情景が楽しめて心地良いのだ。ニャンコも活躍(1972,89年)

  • ヒロイックファンタジー。人でない者として長い年月を生きながら、本能に殉じず理想を追う病弱な皇帝、という造形が面白い。キリスト教的倫理観を感じる。

    執筆順でいうと「真珠の砦」はずっと後、と聞いて、なるほど。二作の間に設定の齟齬を感じるので、若干、ん?となる。旅のシーンが長くてやや冗長にも思えるが、このまくり方は好き。

    二作とも特に悪役が際立っている。

  • SFカテゴリに入れてありますがヒロイックファンタジーであり、ヒロイックファンタジーはハヤカワ的にはSFなので、やはりSFでいきます。

    開幕篇である『メルニボネの皇子』と、完結後に書かれたが時系列的には開幕直後の話となる『真珠の砦』の合本です。
    しかしやはり発表順が良いですね。何十年?も前に紙で読んだとき、1巻から6巻で大満足した覚えがあり、そのあと第7巻として『真珠の砦』というボーナストラックが出て読んでみても物語が単調で退屈した記憶しかない。

    そして…時系列で読んでもやっぱり退屈だったわけです。作家(ムアコック)の作風も変わっていくと思うし、年齢も違うわけだし。

    無理に続けて読まなきゃよかった。これから読むというかたは、『真珠の砦』は一番後に回して良いと思います。
    『メルニボネの皇子』だけなら星4.5、『真珠の砦』が星3つ。

  • 昔のファイナルファンタジーのような雰囲気。
    主人公エルリックが異人種の王だが貧弱すぎる、という描写にいまいちピンとこないところもあった。
    3部目の「真珠の砦」は、エルリックが宝を求めて少女の夢の中を旅する話。世界観・ストーリーが良く、本当に面白い。

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