変数人間 [Kindle]

制作 : 大森 望 
  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 短編だけに状況説明などが少なく、意味が分からないところも多々あるが、どの短編もディックらしく風刺が織り交ぜられている。

    『パーキー・パットの日々』
    過去にしがみつき成長を容認できない人々はいずれ取り残されてしまう。
    『CM』
    容赦のない「CM」という暴力に対する作者の思い。
    『不屈の蛙』
    ゼノンのパラドックスをめぐり二人の学者の口論から妙な実験になるが、作者が何を言いたいのかわからなかった。ブラックユーモア小説か?
    『あんな目はごめんだ』
    文章の意味を機械的に解釈すると、とんでもなく間違った意味になってしまうという話だが、この短篇は翻訳文では面白さが理解出来ないのかもしれない。
    『猫と宇宙船』
    価値観の違いから起こる結末。
    『スパイはだれだ』
    論理だけでは必ずしも正しい行動は選択されない。
    『不適応者』
    意味がよくわからない。
    『超能力世界』
    青は藍より出でて藍より青し
    『ペイチェック』
    謎の7個の小物がうまく生かされている。
    本編は映画化されたが、骨子以外はほとんど別物。
    『変数人間』
    コンピュータに頼った判断の危うさ。

  • 引き続き、オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』を聞き始める。

    「パーキー・パットの日々」は、水爆戦争を生き残った地球人たちを哀れに思った火星人「ケア・ボーイ」が、各地に点在する「まぐれ穴」に、上界から支援物資を定期的に投下することで生かされている地球人たちの物語。ケア・ボーイがよこすあふれんばかりの物資によって、生活の苦労をしなくてすむようになった地球人のおとなたちは、支援物資を転用してパーキー・パット模型セットをつくり、それを使ったくだらないゲームに興じていた。それは過去の栄光を忘れるため? それとも、それ以上の欲望を持たないように?(欲望の果てに戦争があったとする場合)

    「まぐれものって、水爆戦争を生き残った人間のことなんだ」「つまりさ、まぐれの幸運。運命の気まぐれ。わかるだろ? だって、ほかの人間はほとんどぜんぶ死んじゃったんだからね。むかしは何万人もの人間が住んでたんだぜ」
    「まぐれっていうのは、運命がおまえを見逃してくれたときのことだよ」

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』の続き。

    おとなたちのあいだで流行っていたパーキー・パットの人形遊びは、ゲームの戦利品として遠く離れた別のまぐれ穴の連中がやっていたコニー・コンパニオン人形がムラにやってきた瞬間、陳腐なものになりかける。コニーが結婚・妊娠して、赤ん坊を身籠っているという設定にムラの連中がおそれをなしたからだ。なぜか。パーキー・パットは永遠のティーンエイジャーで、終わりなき日常を意味する遊びだったのに、コニーは成長することが前提になっていたからだ。火星人のお情けで生きている自分たちを卑下したせいか、それとも先の大戦の痛切な反省からか、おとなたちは極端に変化を恐れるようになっていた。そこに、コニーと赤ん坊という新しい要素が加わったとき、おとなたちはそれを拒否せざるを得なかった。子どもたちが最初から「くだらない」といっていた人形遊びが退屈なのは、変化に乏しく刺激がないからだが、それを頑として守ろうとするおとなたち。彼らにはおそらく「未来」はやってこない。永遠の「いま」を繰り返すだけだ。

    「CM地獄」は、どこにいてもつきまとってくるセールス・ロボットにうんざりした主人公が地球脱出をはかる話。そのしつこさ、逃れられなさはまさに現代のターゲティング広告そのもので、さすがディックの千里眼とうならされそうになるけれど、ディックが真にすごいのは、さらにその先を見通していたところ。ユーザーにつきまとうどころか、ユーザーの自宅に押しかけ、相手がうんというまで強引に居座る押し込み強盗みたいなファスラッド。家の調度品を次々と破壊し、全部元通りに直せるファスラッドがいなければ困るでしょ? と無理やり契約を迫るその手口は、かつて、どんなメーカーも果たせなかった究極のセールス手法で、自分で自分を売り込んで、相手がうんと言わない限り一歩も引かないロボットがどれくらいうざい存在かは、この作品を読んでもらえばすぐわかる。ホントにうざい(笑

    「不屈の蛙」は、「どのジャンプもその前のジャンプの半分の高さだとすると、蛙は決して井戸の外に出られない」というゼノンのパラドックスの証明実験をする話。「半分」のジャンプを厳密に実現するために、チューブの先に行くほど、蛙の体が「半分」に縮小していく力場を使ったところがミソで、本当にこんなことが可能なら、たしかに蛙は永遠に跳び続けて井戸から出られそうもない。だが、それで終わらないのがディックのディックたるゆえんで、どんどん縮小されていった蛙はやがて分子のすき間からこぼれおちて、チューブの外に出てしまう。あー、その手があったか!と思わず手を打ちたくなるんだけど、さらにその先のオチまで用意しているあたり、まじで、ディック先生ハンパねえ(笑

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』の続き。

    「スパイはだれだ(Shell Game)」は、テラ人たちの襲撃を撃退し続ける元テラ人のパラノイア集団の話。陰謀論と疑心暗鬼は、パラノイアに限らず、人間をダメにする(≒とりこにする)底なし沼だが、自分はつねに誰かに監視され、攻撃にさらされ、生命の危機にあるという思い込みが生存本能と結びつくと、なんだってアリになってしまうし、本人も何をしても許される無双=無敵の人へと変貌してしまう。別の見方をすれば、他人を疑うコストをどれだけ下げられるかで、社会の安定度が決まるといっていい。

    「パラノイア患者は、全体的な人格構造を無傷でたもっている。コンプレックスの領域外においては、彼は論理的、理性的であり、頭脳明晰ですらある。彼とは対話ができる――彼は自分自身を論じることもできる――彼は周囲の環境を認識している。
     パラノイア患者がほかの精神病者と異なる点は、彼が外界に対して積極的な指向を持つことである。彼がいわゆる正常人格タイプと異なる点は、一連の固定観念、誤った仮定を持っており、そこからこれらの誤った仮定に論理的に一致するような、手のこんだ信念体系を容赦なく構築していくことにある」
    「パラノイア患者はきわめて頑固である」「彼の固定観念は揺るがすことができない。彼の生活は固定観念に支配されている。彼はあらゆる事件、あらゆる人物、あらゆる偶然の発言、偶然の出来事を、論理的に自分の体系の中に織りこむ。彼は世界が自分に対して陰謀をくわだてていること――自分がなみはずれた重要性と能力をもつ人物であり、その自分に対して果てしない策謀がこらされていることを確信している。それらの陰謀の裏をかくために、パラノイア患者は自分を守ろうと無限の努力をする。彼はくりかえして当局の活動をビデオ・テープに撮影し、たえず住居をかえ、そして、危険な最終段階になると、おそらく――」

    「不適応者(Misadjustment)」は、PK=パラキネシスト(念動能力者)と疑われ、高額報奨金をかけられ、24時間後には非能力者による「狩り」の対象となる運命にあるジョン・エガートンの物語。

    「彼らは時空間の妄想体系を実体化できる能力を備えた異常者だ。彼らは自分の周囲の限定された空間をゆがめ、自分の風変わりな観念と一致させる――わかるかね? PKは自分の妄想を実現させるんだ。したがって、ある意味でそれは妄想じゃなくなる……そこから自己を切り離し、距離をおいてそれをながめ、世界の本体と、自分のゆがんだエリアとを比較することができなければね。しかし、PK自身にどうやってそれができる? PKはなんの客観的基準も持たない。自己から離れることができない。そのゆがみはPKの行くさきざきへついてまわる。本当に危険なPKとは、石を動かしたり、自分を動物の姿に変えたり、卑金属を貴金属に変えたりすることが、だれにもできると思いこんでいる連中だ。もしわれわれがPKを野放しにして、彼らを成長させ、生殖させ、家庭と妻子をもたせれば、彼らの超能力は子孫にひきつがれ、どんどんひろがっていく……それがある集団の信条になり……ついには社会制度化された慣行になる。
     どんなPKも、自己の特異な能力のまわりにPK社会を築きあげることができる。大きな危険はそれだ。いずれそのうちに、われわれ非PKは少数派におちぶれる……われわれの理性的な世界観が、逆に異常とみなされるようになる」

    PKに限らず、ニュータイプも、新しい生活様式や価値観も、ファッションやカルチャーも、そうやって進化(といって悪ければ変化)していくものだし、古いものが新しいものに置き換えられることで、環境に対する最適化をはかるのは生命のそもそもの目的なので、それを否定するということは、つまり、生存を放棄するということにほかならない。抵抗勢力ってどこにでもいるけど、自覚的であろうがそうでなかろうが、新しいものを受け入れられなく鳴ってしまった人たちには、未来そのものがやってこないと思うのだけど。

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』の続き。

    「不適応者(Misadjustment)」の続き。PKの監視システムをくぐり抜けるために、頭の弱いPKを踏み台にして巧妙に姿を隠し、生き残りをはかるエガートン。まあ、そうだよね、そうこなくちゃ。それが生存競争というものだ。

    「超能力世界(A World of Talent)」にあって、超能力を持たない無能者はやがて断種される運命にある。プレコグ(予知能力者)夫婦の息子ティムは、まだ能力を発現していなかった。

    「わたしたちは、どんな第2世代が生まれてくるかを知りたがった――これでわかったのよ。プレコグたすプレコグは奇形。役立たずの未発現(ミュート)クラス。モンスター――直視しようじゃない、あの子のカードに書かれたMの希望はモンスターの頭文字よ」
    「いくらきみでも、その言葉を使うことは許さん!」
    「モンスター!」「たぶんテラ人が正しいんだわ――たぶんプレコグなんか断種して、死なせたほうがいいんだわ。抹殺したほうが。わたし……」
    「いえよ」「きみはこう思ってる。もし反乱が成功して、われわれが全植民地の支配権をにぎったときには、選択的な育種をすべきだと。もちろん、テレパシー部隊をトップに据えてだ」
    「小麦ともみがらをふるい分けるのよ」「まずテラから植民地を。つぎに常人からわたしたちを。そして、もしあの子のようなのが生まれてきたら、たとえそれが拾の息子でも……」
    「きみたちのしてることは、人間を有用性だけで判断することだ。ティムは役に立たないから、生かしておく意味はない――そういいたいんだろう?」「人間を家畜のように育種するなんて。人間が生きる権利もないなんて。その特権をこっちの好き勝手に分け与えるなんて」

    排除の論理は、手を変え品を変え、何度でも現れる。我々と彼らを分けるものに本来優劣はないはずなのに、そこに優劣を紛れ込ませて、我々でない彼らを見下し、バカにし、奴隷のように扱い、最終的に排除する。

    「どの植民地も、テラのたんなる補給基地、生原料と安い労働力の供給源の地位に甘んじていられません。太陽系に残った人びとと同じように、植民地人にも自分たちの社会を築き上げる権利があります。このため、植民地政府はテラ政府に対して、われわれの自明の運命の実現を阻んでいる束縛を断ち切るよう、請願したのであります」

    植民地生まれのクレオールによるナショナリズムの発現と高揚は、歴史上、何度も繰り返してきた。本国とどれくらい距離(物理的、精神的)が離れると、本国との関係が束縛や足かせと感じられ、どれくらいの距離以下なら、本国による庇護と一体感を感じられるのか。その境目がどのあたりにあるのかは、多国籍企業による本社と支社、軍隊における指揮命令系統の届く範囲、宇宙開拓時代の地球とそれ以外の地域の問題を考えるうえで、意味のある洞察をもたらしてくれるかもしれない。

    「パットの能力はまだ超能力として認められていない。ある意味で、それは跳梁力じゃないが、いずれはわれわれの発見した最も有用な精神能力になるはずだ。その能力が発生することは、当然予想されてしかるべきだった。なにかの生物が発生するときには、つねにそれを餌食とするべつの生物が現れる」
    「さまざまな能力を、生存のための武器と考えてみてほしい」「テレパシー能力を、ある生物の自衛のための進化だと考えてほしい。それによって、テレパスは敵よりも格段に優位に立てる。しかし、その状態がいつまでも続くものだろうか? そんな状況は、たいていの場合、また平衡状態に近づいていくのではないだろうか?」
    「なるほど。この女性にはテレパシー走査がきかないんだな」
    「そのとおり。彼女が最初のひとりだが、いまにつづいて出現するだろう。テレパシー走査に対する防御力だけじゃない。念動能力者に抵抗する生物、ぼくのような予知能力者や、物体賦活能力者(アニメーター)や、その他ありとあらゆる超能力に抵抗する生物が現れてくるだろう。いま、われわれは第四のクラスを発見した。反能力者だ。いまにそれがきっと存在するようになる」

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』の続き。

    「超能力世界(A World of Talent)」の続き。

    「まだわからないか? きみたちは排除される運命なんだ。常人が末長く生きていけると思うのか? この宇宙に慈善はめったに見つからない。きみたち常人はまるでカーニバル見物にきたいなか者のように、超能力者に驚きの目をみはる、すばらしい……魔法のようだ、と。きみたちは超能力者を励まし、学校を建て、植民地で生きるチャンスを与えた。だが、五十年もしないうちに、きみたちはわれわれの奴隷になる。われわれの肉体労働を一手にひきうけることになる――もし、第四のクラス、反能力者クラスを設立するだけの知恵がなければだ。だから、きみたちはレナルズに対抗すべきなんだ」
    「わたしは彼をのけものにしたくない」「どうしてみんなで一致協力できないんだ?」「なぜ、われわれみんなが兄弟になれない?」
    「それはわれわれが兄弟じゃないからさ。事実に直面しろ。兄弟愛は美しい考えだが、それよりも社会勢力のバランスを達成したほうが、結局は目的が早く実現する」

    神の手に委ねれば(長期的には)均衡する(かもしれない)。が、その均衡はちょっとした環境変化(所与の条件の変化)によってもろくも崩れ去る運命にあり、その条件下における均衡点を探ることになる。そのくり返し。外的要因によって環境が変わるかぎり、実は、均衡しそうで均衡しないところに、この神のいたずらの妙味がある。そうでなければ、世界は均衡した瞬間にフリーズしてしまって、極度の停滞に陥るだろう。

    プレコグ(予知能力者)夫婦の息子ティムは、時間の中を移動する能力をもつに至る。

    「われわれは過去へもどって物事を変えることができる。しかし、それは危険です。過去のごく単純なひとつの変化が、現在をすっかり変えるかもしれない。時間旅行能力はいちばん重要なもので――またいちばん革命的なものでもある。ほかの超能力は、例外なしに、これから起きることを変えることができる。ところが、ぼくはいまあるものを消すことができる。だれよりも、どんなものよりも先まわりができる。ぼくを阻止できるものはなにもない。ぼくはつねにそこへ一番乗りできる。つねにそこにいたんですからね」

    「つねにわれわれは均衡状態を導入する。反能力のような手詰まり状態をね。いまのところ、レナルズはすこし均衡からはずれているが、彼を抑制するのは簡単です。もうすでに対策をとってあります。もちろん、われわれの力は無限じゃない。自分たちの寿命、約七十年という限界があるからです。時間の外側にいるのは奇妙な感覚ですよ。変化の外側にいて、どんな法則にも従属していないのは。
     まるでチェス盤からふいに持ち上げられて、ほかのみんなをただの駒として見るようなものです――この全宇宙が、黒と白の市松模様のゲームになる――そして、あらゆる人間、あらゆる物体が、自分の時空間にくっついている。われわれは盤から離れている。上から手をのばして、盤にふれることができる。調節のために、みんなの位置を変え、それぞれの駒には気づかれないでゲームの流れを変えることができる。外部からね」

    それを、われわれの世界の言葉では「神の手」というんだよ。ただし、制限時間付きのね。

    「ペイチェック(Paycheck)」は、5万クレジットの報酬と引き替えに2年間の労働とその間の記憶をレスリック建設に提供する契約を結んだ電気技師ジェニングズ。だが、2年の労働明けに彼が手にしたのは、5万クレジットの代わりにみずから受け取ることに同意した7つのガラクタだけだった。そのガラクタは、シャバに戻って公安警察に追われる羽目になったジェニングズが生き抜くために必要なアイテムらしい。記憶を失った2年間に、ジェニングズは、記憶を取り戻した彼自身に、どんな役割を期待していたのか。

    もしかしたら、失われた2年間というのは最初から全部でっちあげで、彼に何らかの捜索?をさせたい勢力が仕組んだワナかとも思ったが、さて。

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』の続き。

    「ペイチェック(Paycheck)」の続き。ジェニングズにヒントとアイテムを与えたのは、失われた2年間を生きていたジェニングズ本人だった。タイムミラーで未来の自分をのぞき、タイムスクープで必要なアイテムをすくいとる。そうやって未来の自分を守ったのだけど、一介の技術者にすぎないジェニングズが未来をのぞけるのだとしたら、レスリックがのぞく可能性を考慮しないのはおかしな話で、レスリックは、いつ武器が完成して、監視を強める政府に対する反攻を開始するか、予見できてないはずがない。だとしたら、ジェニングズがどういう人物だと知らないはずはなく……、この物語の構図そのものが破綻してしまうことになる。

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』の続き。

    「変数人間(The Variable Man)」は長らく続いた太陽系vsケンタウルス系の攻防戦において、決定的な役割を果たすことになるイカロス爆弾開発の鍵を握るのは、過去から来たなんでも直す「よろず修理屋」のトマス・コールだった。予期せぬ男=変数人間の登場で、コンピュータが正しく勝敗確率を予測できなくなったというのだ。でも、だからって、正確に予測するためにその男を殺さなきゃいけないというラインハート長官の考えもよくわからないし、爆弾の中央制御タレットの配線をいじれるのは、その時代の科学技術をまったく知らない200年前の技術者だというのもわからない。仮に後者に目をつむって、それを受け入れたとしても、なおのこと、それでもトマス・コールを生かしておけないというのは、全然理解できない。むしろ、コールの力を利用したほうが、勝敗の確率は上がるのでは???

    そう考えると、200年前から偶然連れてこられたトマス・コールが、実は、アルファ・ケンタウリがその時代に仕込んでいたスパイであって、最終的に彼がどちらの味方につくかで宇宙戦争の勝敗が決まる、という筋書きくらいしか整合性がとれなくなさそうなんだけど、はたしてディックはどこに連れていってくれるのか?

    オーディブルはフィリップ・K・ディック傑作短編集『変数人間』が今朝でおしまい。

    「変数人間(The Variable Man)」の続き。200年前の一介のよろず修理屋がなぜ現代科学の最先端で、人類最高の知能や最新ロボットでさえ克服できなかった課題をわずか3日間で解決してしまったのか。なぜラインハートは完成した爆弾が間違いなく使えるものと確認するまでの数日さえ惜しむくらい焦っていたのか。変数人間がもつ能力と価値がわかってもなお、なぜラインハートが彼を目の敵にしたのか。イカロス爆弾がうまく機能しなかったときに備えて、なぜラインハート直し屋コールが必要になると考えなかったのか。そうした数々の疑問は何一つ解決しないまま、大団円を迎えてしまって、不満が残る。せめて、コールではなくラインハートがアルファ・ケンタウリのスパイだったというのであれば、あとのほうの疑問はギリギリ説明がつくと思ったのだけど。

  • ディックの話は 全て読みたい
    安定の くさくさ感
    面白くも ちょっと嫌な感じ 
    心に棘となって残る

  • ディックの短編集、色んな作品が入っています。
    今回のは皮肉っぽいのが多い気がしましたが、面白かったのは「ペイ・チェック」
    記憶を消された主人公が、未来を見た過去の自分からの、ガラクタだらけの贈り物に秘められたメッセージを読み解いていく物語。今はこういうストーリーの映画多いですが、ディックの先進性はすごいなと改めて思いました。
    タイトルにもなってる「変数人間」も面白いけど、少しぶっ飛び過ぎてる感じが。

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