中国怪奇小説集 全220編 [Kindle]

著者 :
  • サキ出版
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  • 中国の十六国時代から清代に至るまでの
    有名な怪奇小説を抜粋したもの。
    日本のとある場所で開催された会で中国怪奇物語縛りで話す、
    という趣旨でまとまっているため、時代や出典も纏まっていて
    さらにその出典の詳細や時代背景も少し語られるので
    入って行きやすい。

    怪奇物語に限らず、中国の物語は結構勧善懲悪というわけじゃなくて
    良い人が良い目に合わず悪い人も悪いことが起こらず…ということが
    往々にしてあるので(良い人が良い目に会うことも、悪い人が罰せられることももちろんあり)
    これもそういう感じで怪奇現象に対して親切にしても死んじゃったり、
    殺してしまっても逆に何もなかったりむしろ財宝手にしちゃったりするのだが
    まぁ物語の作りとして、まず怪奇現象ありきじゃなく、
    不思議な出来事があった(元気だった主人が突然亡くなったとか、なんだか知らないけど急に豊かになった人がいたとか)
    という事実から、怪奇が付け加えられるということだと思うので
    そうなるのかなぁ、という理解。

    本の最後の物語だと流石にそういう説明がついていて、
    時代が進んでいるんだなぁ、と感じた。


    99円だったので全然期待してなかったんだけど
    思っていた以上にボリュームもあり
    一つ一つは短いもののいろんなバリエーションがあったり
    あとの時代に出てくるものと前のものがリンクしていたりと
    飽きずに最後まで読めたし、またもう一度気軽に読み返したい。
    これを編集した人に感謝だなぁ。

  • 中国の歴史や物語に興味を惹かれ「剪燈新話」を読むべくこちらの積読本に手をつけたが、思いがけずとても面白かった。持ち周りで数多の時代の中国怪奇話をするスタイルをとっているが、読みやすさと語りの上手さに感嘆。岡本綺堂オリジナルの作品も読みたくなった。

  • 本文より
     この一巻は六朝・唐・五代・宋・金・元・明・清の小説筆記の類から二百二十種の怪奇談を抄出した。
    敢て多しというではないが、これに因って支那のいわゆる「志怪の書」の大略は察知し得られると思う。
    (中略)
     主人の「開会の辞」が終った後、第一の男は語る。
    「唯今御主人から御説明がありました通り、今晩のお話は六朝時代から始める筈で、わたくしがその前講を受持つことになりました。なんといっても、この時代の作で最も有名なものは『捜神記』で、ほとんど後世の小説の祖をなしたと言ってもよろしいのです。
    (中略)
    首の飛ぶ女
     秦の時代に、南方に落頭民という人種があった。その頭がよく飛ぶのである。その人種の集落に祭りがあって、それを虫落という。その虫落にちなんで、落頭民と呼ばれるようになったのである。


    ◆◆ 中国怪奇小説集 ◆◆

    ■■【 03 捜神記(六朝) 】■■
     001首の飛ぶ女
     002玃猿
     003琵琶鬼
     004兎怪
     005宿命
     006亀の眼
     007眉間尺
     008宋家の母
     009青牛
     010青い女
     011祭蛇記
     012鹿の足
     013羽衣
     014狸老爺
     015虎の難産
     016寿光侯
     017天使
     018蛇蠱
     019螻蛄
     020父母の霊
     021無鬼論
     022盤瓠
     023金龍池
     024発塚異事
     025徐光の瓜
    ■■【 04 捜神後記(六朝) 】■■
     026貞女峡
     027怪比丘尼
     028夫の影
     029蛮人の奇術
     030雷車
     031武陵桃林
     032離魂病
     033狐の手帳
     034雷を罵る
     035白帯の人
     036白亀
     037髑髏軍
     038山��
     039熊の母
     040烏龍
     041鷺娘
     042蜜蜂
     043犬妖
     044干宝の父
     045大蛟
     046白水素女
     047千年の鶴
     048箏笛浦
     049凶宅
     050蛟を生む
     051秘術
     052木像の弓矢
    ■■【 05 酉陽雑爼(唐) 】■■
     053古塚の怪異
     054王申の禍
     055画中の人
     056北斗七星の秘密
     057駅舎の一夜
     058小人
     059怪物の口
     060一つの杏
     061剣術
     062刺青
     063朱髪児
     064人面瘡
     065油売
     066九尾狐
     067妬婦津
     068悪少年
     069唐櫃の熊
     070徐敬業
     071死婦の舞
    ■■【 06 宣室志(唐) 】■■
     072七聖画
     073法喜寺の龍
     074阿弥陀仏
     075柳将軍の怪
     076黄衣婦人
     077玄陰池
     078鼠の群れ
     079陳巌の妻
     080李生の罪
     081黒犬
     082煞神
    ■■【 07 白猿伝・其他(唐) 】■■
     083白猿伝
     084女侠
     085霊鏡
     086仏像
     087孝子
     088壁龍
     089登仙奇談
     090蒋武
     091笛師
     092担生
     093板橋三娘子
    ■■【 08 録異記(五代) 】■■
     094異蛇
     095異材
     096異肉
     097異姓
     098異亀
     099異洞
     100異石
     101異魚
    ■■【 09 稽神録(宋) 】■■
     102廬山の廟
     103夢に火を吹く
     104桃林の地妖
     105怪青年
     106鬼国
     107蛇喰い
     108地下の亀
     109剣
     110金児と銀女
     111海神
     112海人
     113怪獣
     114四足の蛇
     115小奴
     116楽人
     117餅二枚
     118鬼兄弟
    ■■【 10 夷堅志(宋) 】■■
     119妖鬼を祭る
     120床下の女
     121餅を買う女
     122海中の紅旗
     123厲鬼の訴訟
     124鉄塔神の霊異
     125乞食の茶
     126小龍
     127蛇薬
     128重要書類紛失
     129股を焼く
     130三重歯
     131鬼に追わる
     132土偶
     133野象の群れ
     134碧瀾堂
     135雨夜の怪
     136術くらべ
     137渡頭の妖
    ■■【 11 異聞総録・其他(宋) 】■■
     138竹人、木馬
     139疫鬼
     140亡妻
     141盂蘭盆
     142義犬
     143窓から手
     144張鬼子
     145両面銭
     146古御所
     147我来也
     148海井
     149報寃蛇
     150紅衣の尼僧
     151画虎
     152霊鐘
    ■■【 12 続夷堅志・其他(金・元) 】■■
     153梁氏の復讐
     154樹を伐る狐
     155兄の折檻
     156古廟の美人
     157捕鶉の児
     158馬絆
     159廬山の蟒蛇
     160答刺罕
     161道士、潮を退く
    ■■【 13 輟耕録(明) 】■■
     162飛雲渡
     163女の知恵
     164鬼の贓品
     165一寸法師
     166蛮語を解する猴
     167陰徳延寿
     168金の箆
     169生き物使い
    ■■【 14 剪灯新話(明) 】■■
     170申陽洞記
     171牡丹燈記
    ■■【 15 池北偶談(清) 】■■
     172名画の鷹
     173無頭鬼
     174張巡の妾
     175火の神
     176文昌閣の鸛
     177剣侠
     178鏡の恨み
     179韓氏の女
     180慶忌
     181洞庭の神
     182呌蛇
     183范祠の鳥
     184追写真
     185断腸草
     186関帝現身
     187短人
     188化鳥
    ■■【 16 子不語(清) 】■■
     189老嫗の妖
     190羅刹鳥
     191平陽の令
     192水鬼の箒
     193僵尸(屍体)を画く
     194美少年の死
     195秦の毛人
     196帰安の魚怪
     197狗熊
     198人魚
     199金鉱の妖霊
     200海和尚、山和尚
     201火箭
     202九尾蛇
    ■■【 17 閲微草堂筆記(清) 】■■
     203落雷裁判
     204鄭成功と異僧
     205鬼影
     206茉莉花
     207仏陀の示現
     208強盗
     209張福の遺書
     210飛天夜叉
     211喇嘛教
     212滴血
     213不思議な顔
     214顔良の祠
     215繍鸞
     216牛寃
     217鳥を投げる男
     218節婦
     219木偶の演戯
     220奇門遁甲

  • 中国怪奇小説との出会いは、南伸坊の著作『仙人の壺』、『李白の月』だった。南伸坊の素朴な漫画と虚無感溢れる短い怪奇譚が何とも言えぬ味わいで、今でも折りに触れて読み返すことがある。この本は、六朝から清代までの様々な怪奇小説集から岡本綺堂が 220遍を編んだもので、中国の不思議、怪奇を収めたショートショート集。上の二冊に収録されていて聞き覚えのある話はもちろん、南総里見八犬伝の中に登場するエピソードや、落語「佃祭」や「ちきり伊勢屋」のもとになったと思われる話もあって興味深い。変に味付けせずに、怪奇を素朴に語る独特の雰囲気が楽しい。

    もともと光文社から 1994年に刊行されたもの(その後 2006年に新装版)が、青空文庫に編ごとに収録され、それが更に元の光文社刊行の形に再編成されたものがサキ出版なるところから 99円で売り出されている。岡本綺堂はとっくに著作権が切れているものの、彼の著作を現代人に読み易く編纂した光文社の仕事は過小評価されるべきでなく、青空文庫から再編した人にお金を払っているのは何だかなぁという感じ。しかし、光文社からは Kindle 版は出ていない。出版社は、もうちょっと電子版に力を入れて欲しいなぁ、いろいろな意味で。

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著者プロフィール

(おかもと・きどう)1872~1939
東京生まれ。幼少時から父に漢詩を、叔父に英語を学ぶ。中学卒業後、新聞、雑誌の記者として働きながら戯曲の執筆を始め、1902年、岡鬼太郎と合作した『金鯱噂高浪(こがねのしゃちほこうわさのたかなみ)』が初の上演作品となる。1911年、二代目市川左團次のために書いた『修禅寺物語』が出世作となり、以降、『鳥辺山心中』、『番町皿屋敷』など左團次のために七十数篇の戯曲を執筆する。1917年、捕物帳の嚆矢となる「半七捕物帳」を発表、1937年まで68作を書き継ぐ人気シリーズとなる。怪談にも造詣が深く、連作集『三浦老人昔話』、『青蛙堂鬼談』などは、類型を脱した新時代の怪談として評価も高い。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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