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感想・レビュー・書評
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中国の十六国時代から清代に至るまでの
有名な怪奇小説を抜粋したもの。
日本のとある場所で開催された会で中国怪奇物語縛りで話す、
という趣旨でまとまっているため、時代や出典も纏まっていて
さらにその出典の詳細や時代背景も少し語られるので
入って行きやすい。
怪奇物語に限らず、中国の物語は結構勧善懲悪というわけじゃなくて
良い人が良い目に合わず悪い人も悪いことが起こらず…ということが
往々にしてあるので(良い人が良い目に会うことも、悪い人が罰せられることももちろんあり)
これもそういう感じで怪奇現象に対して親切にしても死んじゃったり、
殺してしまっても逆に何もなかったりむしろ財宝手にしちゃったりするのだが
まぁ物語の作りとして、まず怪奇現象ありきじゃなく、
不思議な出来事があった(元気だった主人が突然亡くなったとか、なんだか知らないけど急に豊かになった人がいたとか)
という事実から、怪奇が付け加えられるということだと思うので
そうなるのかなぁ、という理解。
本の最後の物語だと流石にそういう説明がついていて、
時代が進んでいるんだなぁ、と感じた。
99円だったので全然期待してなかったんだけど
思っていた以上にボリュームもあり
一つ一つは短いもののいろんなバリエーションがあったり
あとの時代に出てくるものと前のものがリンクしていたりと
飽きずに最後まで読めたし、またもう一度気軽に読み返したい。
これを編集した人に感謝だなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中国の歴史や物語に興味を惹かれ「剪燈新話」を読むべくこちらの積読本に手をつけたが、思いがけずとても面白かった。持ち周りで数多の時代の中国怪奇話をするスタイルをとっているが、読みやすさと語りの上手さに感嘆。岡本綺堂オリジナルの作品も読みたくなった。
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本文より
この一巻は六朝・唐・五代・宋・金・元・明・清の小説筆記の類から二百二十種の怪奇談を抄出した。
敢て多しというではないが、これに因って支那のいわゆる「志怪の書」の大略は察知し得られると思う。
(中略)
主人の「開会の辞」が終った後、第一の男は語る。
「唯今御主人から御説明がありました通り、今晩のお話は六朝時代から始める筈で、わたくしがその前講を受持つことになりました。なんといっても、この時代の作で最も有名なものは『捜神記』で、ほとんど後世の小説の祖をなしたと言ってもよろしいのです。
(中略)
首の飛ぶ女
秦の時代に、南方に落頭民という人種があった。その頭がよく飛ぶのである。その人種の集落に祭りがあって、それを虫落という。その虫落にちなんで、落頭民と呼ばれるようになったのである。
◆◆ 中国怪奇小説集 ◆◆
■■【 03 捜神記(六朝) 】■■
001首の飛ぶ女
002玃猿
003琵琶鬼
004兎怪
005宿命
006亀の眼
007眉間尺
008宋家の母
009青牛
010青い女
011祭蛇記
012鹿の足
013羽衣
014狸老爺
015虎の難産
016寿光侯
017天使
018蛇蠱
019螻蛄
020父母の霊
021無鬼論
022盤瓠
023金龍池
024発塚異事
025徐光の瓜
■■【 04 捜神後記(六朝) 】■■
026貞女峡
027怪比丘尼
028夫の影
029蛮人の奇術
030雷車
031武陵桃林
032離魂病
033狐の手帳
034雷を罵る
035白帯の人
036白亀
037髑髏軍
038山��
039熊の母
040烏龍
041鷺娘
042蜜蜂
043犬妖
044干宝の父
045大蛟
046白水素女
047千年の鶴
048箏笛浦
049凶宅
050蛟を生む
051秘術
052木像の弓矢
■■【 05 酉陽雑爼(唐) 】■■
053古塚の怪異
054王申の禍
055画中の人
056北斗七星の秘密
057駅舎の一夜
058小人
059怪物の口
060一つの杏
061剣術
062刺青
063朱髪児
064人面瘡
065油売
066九尾狐
067妬婦津
068悪少年
069唐櫃の熊
070徐敬業
071死婦の舞
■■【 06 宣室志(唐) 】■■
072七聖画
073法喜寺の龍
074阿弥陀仏
075柳将軍の怪
076黄衣婦人
077玄陰池
078鼠の群れ
079陳巌の妻
080李生の罪
081黒犬
082煞神
■■【 07 白猿伝・其他(唐) 】■■
083白猿伝
084女侠
085霊鏡
086仏像
087孝子
088壁龍
089登仙奇談
090蒋武
091笛師
092担生
093板橋三娘子
■■【 08 録異記(五代) 】■■
094異蛇
095異材
096異肉
097異姓
098異亀
099異洞
100異石
101異魚
■■【 09 稽神録(宋) 】■■
102廬山の廟
103夢に火を吹く
104桃林の地妖
105怪青年
106鬼国
107蛇喰い
108地下の亀
109剣
110金児と銀女
111海神
112海人
113怪獣
114四足の蛇
115小奴
116楽人
117餅二枚
118鬼兄弟
■■【 10 夷堅志(宋) 】■■
119妖鬼を祭る
120床下の女
121餅を買う女
122海中の紅旗
123厲鬼の訴訟
124鉄塔神の霊異
125乞食の茶
126小龍
127蛇薬
128重要書類紛失
129股を焼く
130三重歯
131鬼に追わる
132土偶
133野象の群れ
134碧瀾堂
135雨夜の怪
136術くらべ
137渡頭の妖
■■【 11 異聞総録・其他(宋) 】■■
138竹人、木馬
139疫鬼
140亡妻
141盂蘭盆
142義犬
143窓から手
144張鬼子
145両面銭
146古御所
147我来也
148海井
149報寃蛇
150紅衣の尼僧
151画虎
152霊鐘
■■【 12 続夷堅志・其他(金・元) 】■■
153梁氏の復讐
154樹を伐る狐
155兄の折檻
156古廟の美人
157捕鶉の児
158馬絆
159廬山の蟒蛇
160答刺罕
161道士、潮を退く
■■【 13 輟耕録(明) 】■■
162飛雲渡
163女の知恵
164鬼の贓品
165一寸法師
166蛮語を解する猴
167陰徳延寿
168金の箆
169生き物使い
■■【 14 剪灯新話(明) 】■■
170申陽洞記
171牡丹燈記
■■【 15 池北偶談(清) 】■■
172名画の鷹
173無頭鬼
174張巡の妾
175火の神
176文昌閣の鸛
177剣侠
178鏡の恨み
179韓氏の女
180慶忌
181洞庭の神
182呌蛇
183范祠の鳥
184追写真
185断腸草
186関帝現身
187短人
188化鳥
■■【 16 子不語(清) 】■■
189老嫗の妖
190羅刹鳥
191平陽の令
192水鬼の箒
193僵尸(屍体)を画く
194美少年の死
195秦の毛人
196帰安の魚怪
197狗熊
198人魚
199金鉱の妖霊
200海和尚、山和尚
201火箭
202九尾蛇
■■【 17 閲微草堂筆記(清) 】■■
203落雷裁判
204鄭成功と異僧
205鬼影
206茉莉花
207仏陀の示現
208強盗
209張福の遺書
210飛天夜叉
211喇嘛教
212滴血
213不思議な顔
214顔良の祠
215繍鸞
216牛寃
217鳥を投げる男
218節婦
219木偶の演戯
220奇門遁甲 -
中国怪奇小説との出会いは、南伸坊の著作『仙人の壺』、『李白の月』だった。南伸坊の素朴な漫画と虚無感溢れる短い怪奇譚が何とも言えぬ味わいで、今でも折りに触れて読み返すことがある。この本は、六朝から清代までの様々な怪奇小説集から岡本綺堂が 220遍を編んだもので、中国の不思議、怪奇を収めたショートショート集。上の二冊に収録されていて聞き覚えのある話はもちろん、南総里見八犬伝の中に登場するエピソードや、落語「佃祭」や「ちきり伊勢屋」のもとになったと思われる話もあって興味深い。変に味付けせずに、怪奇を素朴に語る独特の雰囲気が楽しい。
もともと光文社から 1994年に刊行されたもの(その後 2006年に新装版)が、青空文庫に編ごとに収録され、それが更に元の光文社刊行の形に再編成されたものがサキ出版なるところから 99円で売り出されている。岡本綺堂はとっくに著作権が切れているものの、彼の著作を現代人に読み易く編纂した光文社の仕事は過小評価されるべきでなく、青空文庫から再編した人にお金を払っているのは何だかなぁという感じ。しかし、光文社からは Kindle 版は出ていない。出版社は、もうちょっと電子版に力を入れて欲しいなぁ、いろいろな意味で。