- Amazon.co.jp ・電子書籍 (279ページ)
感想・レビュー・書評
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都会から林業の見習いとして、神去村に連れて来られた平野勇気は、少しずつ村の風習に慣れて、みんなに受け入れられていく。
四季折々の自然の描写が美しい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
三浦しをんさんお得意の「職業」シリーズともいうべき著作。
斜陽産業と言われて久しい「林業」をテーマに、三重県の山奥の村で主人公が一年を過ごしてそのコミュニティにコミットしていく姿を書く。
半ば強制的に連れて来られて反発しつつも次第に住民の独特の「なあなあ」な気質というかもはや哲学とも言うべき生き方を快いものとして受け入れていく描写はさすが。ほんと凄い。
文章の力というのを改めて感じるのは、クライマックスである樹齢千年を超えるという杉の大木を村の男たち総出で山から下ろすというシーン。
この迫力と緊迫感はやはり活字の力。どんなに映像技術が発達してもこの読んでいる時のワクワク感、どきどき感を超えられるとは思えない。
さらには山おろしといわれる、霧が山々の山頂から押し寄せて、あっというまに自分の周りが冷たい乳白色に包まれ全く視界を奪われる恐怖感、得体のしれない鐘の音や鈴の音、オオヤマヅミと呼ばれ崇められている山の神様の娘たちの紅白の着物のビジュアル。
あれは読書体験の快感の最たるものだと思う
そういう意味では今回映画化されているけれど、どれくらいしょんぼり作品になっているかは逆にちょっと気になるところ。
「まほろ町」の映像化はキャスティングの妙と町田という街のビジュアルで奇跡的に素晴らしい仕上がりになったが、ああいうのはちょっとなかなか無いからなぁ。 -
三浦しをんさんの林業の小説。終盤の祭の勢いが凄かった。
林業って単なる仕事というより、村丸ごと、生き方そのものだなと感じた。9時5時の都会の仕事とは根本的に違う。生活リズムもそうだけど人生観も違う。
業界が持続可能ならいいけど、この姿のままだと後継者不在で立ち行かなくなりそう。 -
自分が山が近い田舎に、住んでいることもあり内容はかなり近いものを感じながら読めました。
日常の描写の上手さは、流石三浦しをんだなと感じる部分が多く、すーっと読みきることができました。
小さな出来事が色々とおこる、短編の集まりみたいな部分もあり、軽くよめる本でもありますが、林業、田舎の問題も考える深い部分もあるかなと感じる本でした。 -
職業を魅力的に描くのが上手。
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自然の壮大さ、その描写が良い。映像が見たい!と思ったら、これ映画化されてるんですね。知らなかった…機会があれば是非映画も見てみよう。
都会っ子が携帯の電波の届かない山で少しずつその生活に馴染んでいった。性にあったんだろうね。応援したくなった。そしてこれからも頑張れ!なのだ。 -
林業という関わりの薄い世界を、同じく関わりが薄かった主人公の目線で描いていて、知らない世界を知る楽しみがあった。
田舎ならではの謎のしきたりがあって、規模が違うけど地元の謎のしきたりを思い出して親近感が湧いた。
このまま神去なあなあ夜話?も読んでいきたい。
2024年初読み。3ヶ月近く読書から離れていたが、読みやすく親しみやすい文体で一気に読めた。
このまま読書習慣を戻していきたい。 -
やっぱり安定の三浦しをんさんの職業モノ。
日本人は無宗教派が多いとされている中で、古来より受け継がれてきた信仰が自然に散りばめられていた。年中行事など少しずつ身近で無くなってきたものをしっかり認識して後世へ繋いでいくべきだと感じさせられた。 -
勇気は高校を卒業してもやりたいことがなかった。勉強は嫌いだったので大学を目指すこともなく、なんとなくフリーターで行くのだと思っていた。そうしたら担任の熊谷先生が就職先を勝手に決めてきた。母親は自分の物を勇気の部屋に移してきた。親父からは餞別だといって、三万円が入った封筒を渡され、有無を言わさずに家をたたき出された。仕方ないので、三重県の就職先の神去村に向かうことになった。これからの勇気の一年間の記録だ。
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オオヤマヅミの2人の娘って、コノハナサクヤヒメとイワナガヒメかな。だから山太は、赤い服のお姉さんはきれいで、白い服のお姉さんは、え−っと…ってなったんだね。