悪女について(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 4.0

  • 物語の冒頭で 既にこの世の人ではなく 
    最後まで その肉声に触れることが出来ない女性が
    主人公のお話。

    ひとりの人物について
    知人や家族など 様々な立場の人たちが
    証言を重ねていく手法は よく見かけますが
    有吉佐和子氏の表現力には 遠く及ばないと実感。

    「聖母」としても「悪女」としても
    充分に魅力的な女性・富小路公子

    ・・・って、すごい名前ですけど。

    個人的には 芝居がかっていて
    被害者意識が強くて 嘘つきーなんて
    最も苦手なタイプの女性。

    にも関わらず 
    読後は 無性に会ってみたくなりました。

    「悪女」とは いったい誰に対しての悪女なのか。

    多くの人の心に 謎を残したまま 
    永遠に姿を消してしまった

    その結末こそが 「悪女」なのかもしれません。

  • 忍耐力を試されました。同じアパートに住んでいた女性の章で挫折。次は飛ばして次男で終了。つまらなかったです。

  • テレビドラマで『悪女について』を観た。
    その後原作を読んだのだが、公子はもう田中みな実しか思い浮かべることはできない。原作のイメージそのままであった。

    公子のことを、周囲の人が「あの人は…。」と語り本人は出てこない。今であればよくある手法かもしれない。
    にしても、『複合汚染』『恍惚の人』のイメージでいた有吉佐和子さん、多才な方でしたね。

  • 有吉佐和子。あまりにも有名な作者の異色小説。
    一人の女性実業家の死。その女性に関わった人々の証言をまとめた形で構成されている。
    彼女の死の真実は最後までわからず、彼女の謎は最後まで解明されないが、一人の女性が激動の時代、善悪を超えて自分の信念に従って一人で生き抜いて行く、そんな主人公に拍手を送りたい小説だった。

  • いい子は天国に行ける、でも悪女はどこへでも行ける。清純なふりをしている悪女が一番怖いのですのよ。

    この本の主人公は、突如謎の死を遂げ、さまざまな憶測とスキャンダルが飛び交う、美しき女実業家・富小路公子。彼女を知る27人の語りから、彼女の人生と死の真相が少しずつ明らかになっていく。

    27人目の次男義輝の話が謎を解くキーとなる、と解説にもあったが、わたしは彼女の真相は明らかになっていない、あるいは、27通りの真相があるだけで、1つに収束できるものではない、と感じた。一人ひとりの独白のなかに、君子(公子の本名)本人のものはないからだ。子どもたちは誰の子なのか? 彼女は、本当に無邪気な理由のために死んだのか? どこまでが彼女の悪意で、どこまでが周囲の人間の悪意なのか? 読み終わってもつい推理を続けてしまう、そんな後味の残る本だった。

  • 「醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。
    彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは…」という裏表紙の紹介の一部に惹かれて購入。
    約40年前の小説だけあって、その時代らしい言葉づかいや人々の価値観が興味深かった。
    また亡くなった公子がインタビューされた人によって悪女に見えたり聖女に見えたりして、ますます公子の存在そのものがミステリアスに思えたし、何が真実なのか解らなくなっていくのも面白かった。

  • まああ
    面白かった。爆問太田さん推薦。

    最後につれて色々話が噛み合っていくのが面白い。逆に人によって捉え方が全然違ったりするのも面白い。
    私はお金持ちになって宝石で着飾るより、家族と幸せに暮すほうがいいけどな。

    ミステリー好きとしては犯人が気になっちゃった。

  • 昭和に活躍した味のある文章で記憶に残る女流作家といえば、田辺聖子、向田邦子、山崎豊子、宮尾登美子、夏樹静子などですが、有吉佐和子の名も忘れてはいけません。が、これが私が初めて読んだ有吉作品でしたが、さすがの筆運びに終始感心させられました。小説としての趣向も素晴らしい。
    主人公である「悪女」を、27人(章)の関係者の口から語らせ、その実像を浮かび上がらせる「間接描写」で完結させるという見事さ。主人公の会話は、各人の語りの中に登場するだけで、本人そのものが語る章はありません。語る人によって、その人のイメージが十人十色だということがわかりますが、その差は「悪女」の2面性からきています。「正義と美しいもの」が好きなのも、「妄想癖」も彼女なのです。この2つは、表裏一体で、実際に起こった不誠実なことも正義として取り繕うとして事実をねつ造してしまう傾向が強く、2つの顔が彼女なのかでは矛盾せずに存在しているようです。その意味において、多重人格気質なのかもしれません。27人の語るストーリーも面白く、個人的には15章が一番気に入っています。

    有吉 佐和子:1931.1 20~1984.8.30 小説家、劇作家、演出家。和歌山県和歌山市出身。日本の歴史や古典芸能から現代の社会問題まで幅広いテーマを扱い、多くのベストセラー小説を発表した。『複合汚染』、『紀ノ川』、『華岡青洲の妻』(女流文学賞)、『恍惚の人』』、『出雲の阿国』(芸術選奨、日本文学大賞)、『和宮様御留』(毎日芸術賞)ほか、著書多数。娘は作家の有吉玉青。

  • 有吉佐和子好きの友人に「『紀ノ川』を読んだ」という話をしたら、初心者は『悪女について』から入るものだと諭されたので、読んでみた。10代から数々の男を魅了する一方、機を見て敏な手腕で莫大な財産を築き、最後は謎の転落死をとげた女性 富小路公子の半生を関係者 27人の 1人称ナレーションで語る(著者が各関係者にインタビューして回っているという建付)。

    二股、三つ股はあたり前のように男性を手玉に取り、時にはモラルを逸脱しつつも財を成した公子は、確かに典型的な悪女のイメージに合っている(もちろん、タイトルから受ける先入観もあるけど)。しかし、それ以上に、見る人ごとに異なる印象を与えつづけた裏表の激しさこそが、悪女の悪女たる条件だったのではないかと思うのだ。複数人の周辺証言によって主人公を描き出すという小説構成はありがちだが、この「悪女の裏表」を描き出すのにこれほど最適な構成もない。同時並行していた男が次々と証言するストーリー運びは、男の目から見ると、自分の彼女の(それも複数人相手の)浮気に気付かされるようなショッキングさを持って読んだ。そして、その構成からして予想できるように、再読、再々読を促される。ただし、ミステリとして読むと、著者は(この一度として登場しない)主人公の死の謎を明かさないままに「悪女について」を終えるため、若干のもやもや感は残る。

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著者プロフィール

昭和6年、和歌山市生まれ。東京女子短期大学英文科卒。昭和31年『地唄』で芥川賞候補となり、文壇デビュー。以降、『紀ノ川』『華岡青洲の妻』『恍惚の人』『複合汚染』など話題作を発表し続けた。昭和59年没。

「2023年 『挿絵の女 単行本未収録作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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