塩田明彦「映画術」を読んで近所のツタヤに行く。紹介されているカサヴェテス監督作品で唯一「こわれゆく女」だけ見つかったのでレンタル視聴。度胆を抜かれた。
先の展開が全く読めない。登場人物が次どのような行動をとるのかわからないので、最後まではらはらどきどきした。
作品の構造は至極シンプルなものだ。第一幕:妻の精神がどうも異常だ。第二幕:妻が精神病院に入院して、夫と子供は寂しい日々を送る。第三幕:妻が精神病院から家に帰ってくる。けれど、物語りの途中、本当に何が起きるかわからない。何かやばいことが起きてしまうのではないかと始終どきどき。
主演のジーナ・ローランズとピーター・フォークの2人の演技が見せる感情のふり幅が大きい。この夫だからこそ妻がこうなったのではないかと思えてくる。妻のメイベルは、ふりふりのミニスカートに灰色のセーターを着て、ピンクの靴下を履いている。その洋服の取り合わせのセンスのなさ、笑ってしまうが、ああ確かにこんな人いると思わせる演出の妙技。
自分が思い込んでいる映画の前提が全部崩壊したような体験をした。
この映画を観た後は、他の映画の演技を見る目も変わる。
ニック「俺がついている。君は何をしてもいいんだ。自分らしく振る舞え。ここは君の家だ。他の連中なんか気にするな。本当の自分を出せ」
絶望的なんだけど、最後はかすかな希望をもらえた。