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感想・レビュー・書評
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徳川11代将軍の家斉は、その在位(約50年)と生んだ子供の数(約53人)が共にレコード記録の徳川250年泰平の象徴のような将軍である。その時代の治世を家斉自身や仕えた側近達の政治において物語る歴史小説である。
将軍家斉は前半生を田沼意次、松平定信と言った江戸時代を通じても著名な老中を側近に据えて政治を行うが、特に謹直な松平定信に抑圧されていたため、ひたすらに子作りに励んでいたようだ。定信罷免後は、水野忠成を老中に据え、このコンビでこさえてしまった家斉の子供をひたすらに他大名の養子や婚儀に出し続ける。結果的に水戸徳川家を除いたすべての徳川家、および日本中の有力大名とに何かしら家斉との血脈が出来上がってしまうという嘘のような結果が生じる。またその養子縁組、婚姻に伴う持参金が尋常ではなかったため、貨幣の改鋳(金や銀の含有量を減らす)や大量発行を行って財政問題を誤魔化し、結果としてインフレを生じさせ、水野忠邦の天保の改革という緊縮財政の原因を作り出すことになる。
他方、父親(一橋治済)思いであった家斉は、大御所事件を起こし、その表裏一体の関係であった皇室との尊号問題を惹起させ、結果として黒船騒動以降の皇室の対徳川強硬路線の遠因を作るに至っている。
とまあ、江戸中期から幕末のリンクを確実に作り上げ、かつ治世の長さと時代(異国船打ち払いが頻発した)から、有名な側近や政治家を輩出した家斉の時代はなかなか読みごたえがある内容となっている。ただし、小説内の1つ1つのエピソードの記述が詳細を極めすぎているので、読むのにやや集中力を欠いてしまう。もっとコンパクトにまとめられたのではないかと思えてしまう。
ちょっと時間がないので、またヒマな時に詳細を書き足します。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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2024.3.5