GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代 三笠書房 電子書籍 [Kindle]
- 三笠書房 (2014年1月8日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (374ページ)
感想・レビュー・書評
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本の分類というのはつくづく難しいものだと思う。どこの書店でも本書はビジネス書のコーナーに置いてある。でも、そこに留めるにはあまりに惜しい一冊だ。
『GIVE & TAKE』という題名からすると、何かドライな、ビジネスライクな印象を与えるけれど、さにあらず。それどころか、人間の良さを引き出して人間らしく生きていくために、周囲の人間とどう関係を築いていくかを考える際の、有効な思考法のひとつと言っていい内容だ。
Kindleで読んだが、紙の本で買い直した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ただのお人好しと、成功する「ギバー」の違いが書かれている。
ギバーを装ったテイカーの見分け方も教えてくれる。
私は常にギバーでいたいな。 -
福音だ。この本によって社会がもっと良くなるだろう。
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非常に興味深い一冊に出会いましたので、紹介させていただきます。
要するに、
「情けは人の為ならず」という話なのですが、
個人的な経験や思い付きで書かれた自己啓発書や生き方論ではなく、
本書は、史上最年少で終身教授になった組織心理学の研究者が行動科学の理論と実証研究に裏打ちされた人間の本性を暴き出しています。
この議論の根底にある人間の行動類型の三種類は、
・「ギバー(与える人)」・・・相手のことを考え、真っ先に相手に与える。目的としてテイクがあるわけではない。見返りなど関係なしにまず相手に与える。
・「テイカー(受け取る人・奪う人)」・・・与える場合でも、目的はあくまでもテイクにあり、自分の利益を中心としてその手段としてギブする。
・「マッチャー(バランスをとる人)」・・・「人間関係の損得はお互いに五分五分であるべきだ」と考える。いつも頭の中にバランスシートを持っている。
です。
さて、この中で、一番成功した人と、一番成功できなかった人は誰だと思いますか?
一番成功した人はギバーで、
一番成功しなかったのもギバーだったというのです。
つまり、ギバーの仕事のパフォーマンスは二極化するというわけです。
「ギバーこそ成功する」ことは確かなのですが、それはある条件のものとで成り立つというわけです。
「与える人が成功する」というロジックは、現象として起きるまでに、非常に時間がかかります。
人に与えたことは後々かえってきますが、ギブのあとのギブンが起こるのはずっと先の話です。
しかも、いつ返ってくるのか、果たして返ってくるのかこないのかはわかりません。
しかし、ギバーはそこにそういう「取引」を持ち込みはしません。
要するに、時間に鷹揚な人でないとギバーにはなれないのです。
テイカーやマッチャーは自分が誰かにしてあげたことを損得勘定に置き換えて、仔細漏らさずに自分の「記録ノート」につけています。
対して、ギバーは「記憶ノート」に言いもいでを残すことを大事にしています。
ギバーは記録よりも記憶を重んじます。
ギバーにとって恩恵とは、「思いがけず来るもの」であり、事前に期待したり損得勘定するものではないのです。
では、どうしたら、ギバーになれるのでしょうか。
悔い改めたり、これからは様々な必要なことをしなきゃいけない、のでしょうか。
要するに「がんばれ」という話なのでしょうか。
これに対して、著者は、「がんばるな」と言います。
というのも、ギバーであることは、人間の本性です。
人間は自然とあるべきギバーに戻っていくというのです。
「他者に利益を渡す=自己の利益がなくなる」
と思いがちなので、
「ギバーにならねば」と思っていてもなかなか行動できない。
ですが、著者は言います。
「他者に利益をもたらすためには、『自己犠牲』は必要ない」と。
成功するギバーは、「自己犠牲」ではなく、「他者志向性」を持っているといいます。
他者志向性とは、たとえば、チームで仕事をするときに、自分の取り分を心配するのではなく、みんなの幸せのために高い成果を出すことに目的を設定することです。
ポイントは、自分がその仕事をせずにはいられないという「意義」です。
「自分にとって意義のあることをする」
「自分が楽しめることをする」
この条件が満たされれば、ギバーは他人だけでなく、自分にも「与える」ことが出来ます。
ギブはもはや犠牲ではありません。
真のギバーは、他者のみならず、意義に向かって仕事をする自分自身を助けているのです。
本書の例で挙げられている話。
・「弱いつながり」の大切さ、休眠状態の繋がりがより多くの新しい情報をもたらすこと、
グループに一貫したギバーがいると、他のメンバーはより与えるようになること。ギバーは与えることを「当たり前」にし、グループ全体の利益を大きくしたこと。
・成功するかは、自分で理解している以上に、他の人々の協力にかかっていること。
・成功したギバーは、自分だけでなく、グループ全体が得をするようにパイを大きくする。
・結婚式の贈り物を受け取る側は、独自の贈り物よりも、欲しいものリストの贈り物をはるかにうれしいと思う。
・人が才能を伸ばすきっかけになるのが「やる気」。
ギバーは才能を見抜き、それを伸ばすことに長けているだけでなく、予想が外れた時も自分の立場にこだわることなく、前に進んでいける。
・吃音という弱みを隠さず、さらけ出し、拒絶や障害を利用して、人に力を振るうことなく、人を助けることに関心を示すことで辛抱が集まった弁護士。
(条件は、弱みを見せても効果があるのは、周囲の人々に有能と認めらrてえいる場合に限る。達人がへまをすると好感度が上がる。)
・トップ営業マンは、「ゆるいコミュニケーション」を取る。
相手がどんなことに関心があるのか考える。
質問をし、その答えにじっくり耳を傾けることで、顧客に自分の関心事を大切に思ってくれていると感じさせる。
顧客「あなたは本当に話が上手ですね」
営業マン「私はほとんど何も話していません」
人はそもそも自分のことを話すのが大好き。
人は話せば話すほど一層グループについて知ったと思う。
交渉上手は、「質問」することを当たり前にやっている。
かなりの時間を費やして、「相手側の視点」を理解しようとしている。
自分が欲しいものを相手に要求するのではなう、顧客が何を欲しがっているのかを聞き出す。
ギバーは、相手にものを訪ね、その人と良く知りあうことで、信頼関係を築き上げ、ニーズを知ろうとする。
・「ちなみに、あなたは次の選挙で投票に行く予定ですか?」
と聞いただけで、投票する確率を41パーセント上げることができる。
・スラム街の学校を救うために現場に入ったがバーンアウトした新人教師
→ところが、さらに与えるようになると拾う症状が消えていき気力が回復した。
「意味のない仕事」に誰もが燃え尽きる。
ギバーが燃え尽きるのは、与えすぎたことよりも、与えたことでもたらされた影響を前向きに認めてもらえないことが原因。
ギバーは与えたことに時間とエネルギーを注ぎ込みすぎるせいで燃え尽きるのではない。
困っている人をうまく助けてやれない時に燃え尽きる。
状況が変わることで、気力は回復する。
燃え尽き症候群を回避するためには、
他人のことだけでなく自分自身のことも思いやりながら、他者志向的に与えること。
そして、きちんと計画して与える。
ボランティアも百時間を超えると幸福度は下がる。
このラインを限度に設定しておくことで、大きなパワーが得られ、疲労感が少なくなる。
義務感からするのではなく、楽しく有意義だからする。
自己犠牲のギバーは支援を受けることに居心地の悪さを感じ、精神的にも肉体的にもダメージが大きい
一方、他者志向のギバーは、自分自身を幸せにすることの大切さ理解しているので、燃え尽きそうになると、周囲のサポートを受ける。
周囲のサポートこそ、燃え尽きの強力な防止になっていることが研究からわかっている。
他者志向ギバーは他人を助けるのが楽しいので、自分から進んでそうするが、いざという時は助けを求めることを厭わない。
マッチャーやテイカーよりも、燃え尽きる割合が低い。
気力は筋肉のように鍛えることができる。
人に何かをしてあげることは生きがいをもたらし、自分自身の問題から目をそらさせ、人から評価されていると感じる。
それによる幸福感が、人をより頑張らせ、やりがいのある目標を立てさせ、より効果的に働こうをする気になる。
・では、
「世の中にはやっぱり善人を食い物にするテイカーって一定の割合でいますよね。そういう時はどうすればいいんですか」
ということですが、
テイカーと付き合う時にはマッチャーになればいい、というのが本書の提案です。
戦略的に、「寛大なしっぺ返し」をして、三回に二回は張り合うが、一介は協力的な態度で応じるということができる、というわけです。
つまり、自衛のために、マッチャーになり、三回に一回はギバーになって、テイカーに名誉挽回のチャンスを与えるというわけです。
成功するギバーの多くは、人はみな善人だという信念から出発しますが、
同時に、周囲の状況を注意深く観察して、潜在的なテイカーを割り出しています。
必要とあらば、〈ハトのように素直に、ヘビのように賢く〉テイカーの感情を思いやるのではなく、その思考を分析し、無条件に与える代わりに、より計算されたアプローチ、すなわち寛大なしっぺ返しで対応するというのです。
・人が節電に成功したのは、
「みんながしている」「ご近所と一緒に省エネしよう」が一番効果的。
人は類似した他者に最も影響を受ける。
・教育現場で、「助け合いの輪」という課題・・・各学生がクラスメイトに願い事を一つだし、残りの学生が自分の知識や情報やコネをつかってそれを叶える手助けをすると、利己的と思われていた学生たちが進んで手助けをした。
上級管理職のお金と時間は、900万円~2500万円、67時間節約できた。
上手くいっているように見せなければならないプレッシャーで心を開けない
→誰もが願い事を言うので恥ずかしいと思う理由がなくなる。
共感の雰囲気が満ち溢れるようになる。
「助け合いの輪」はテイカーをギバーとして振る舞わせる状況をつくりだした。
カギは、与えることを人目にさらすこと。
・「私は親切な人です」宣言は逆効果。
最初に人々の行動を変えれば、信念も後からついてくる。
◆
「人はもともと善良である」ことを実証した、ブレグマンの『HUMANKIND』に通じる話でもあったかと思います。
職場やコミュニティにおいて、もし私たちのうち一人が「他者志向的なギバー」になれば、全体が変わりえることは大いにあり得ますし、長期的に見てそれが自己にとっても健康的なことかもしれません。
(いま、職場でそのような存在になろうとしていますが、ワクワクしますね。)
では、課題として、現実に戦争が起こり、互いが互いをテイカーとみなすことが常態化している国際関係においてこの理論はどのような条件で発動するのかということなどあげられるかと思います。
やはり、「侵略に対して、侵略はしない。かといって丸腰でもない。護るためにマッチャーとして振る舞う。それ以外は、大いにギバーになる。」ことが賢いやり方なのでしょうか。 -
立ち回り方
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Giverは一見損をするようだけど、結果的に成功するのはGiverである、ということらしい。
ただ単なるお人好しだと搾取されるのがオチなので、そこは学ばなければならない。
何だかんだ言っても周りの人はちゃんと見ているので、Takerは悪評が立って結局貰いが少ない。
Matcherならいいのかといえばそうではない、というのが著者の主張。
基本Giverであることが望ましいが、相手によって時々Matcherと使い分けるのがいいのかな?
学びが多い良い本でした。
audibleで読了。 -
世の中には相手に与えることを信条とするギバー、逆に奪うことばかりを考えているテイカー、ギブアンドテイクのバランスを取ろうとするマッチャーの三種類がいる。
世間的にはマッチャーが成果を出しているように見えるが、真の意味で成功しているのはギバーである。ただし、自己犠牲的な、身を滅ぼすほど献身的なギバーではなく、他者志向、つまり自分だけでもなく、相手も含めた全体にとって良い方法を考えようとするギバーが成功している。
ギバーは他者志向であったとしても燃え尽きてしまうリスクがあるが、年100時間程度の負荷をかけると、よりエネルギッシュになるため、ボランティアなどもこの時間を指標とするのが良い。
ただ、どんな時もギバーであり続ける必要はなく、テイカーに出会ったら、マッチャー的な振る舞いをする必要がある。
また、どんな人にもギバー的な要素は少なからずあり、フリーサイクルのように寄付することが当たり前の環境ではテイカーやマッチャーもギバー的な振る舞いをする。
こうした誰しもが持つ性質を生かし、より早くギバーになり、ギブアンドテイクではなく、ギブアンドギブンの状態に持っていくことが、我々の人生を好転させる秘訣である。日本語の情けは人の為ならずは素晴らしい言葉であることが再認識される。
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話題のビジネス書をついに読んだ。
人をギバー、テイカー、マッチャーに分けそれぞれを紹介。与える人、ギバーは最も得られない層であるとともに、最も成功する人物も実はギバーであった、という本。
最近のことに当てはめればギバーはゼレンスキーでテイカーはプーチン。ウクライナから何もかも奪おうとしているプーチンは言うまでもない。ゼレンスキーはコメディアンでありかつ事務所も営業しもっぱらギバー気質だった。大統領になっても危険を顧みず前線の兵士に勲章を授け、外国ははるばる日本まで来た。そして、ギバーが成功できるのは自由主義世界ならではと言えよう。
本書は思いつきで書かれた本ではなく、実験的研究に裏付けられた科学的知見に基づく本。ギバーテイカーマッチャーにしても人はこの3つの相を使い分け、完全にどれか一つという人は存在しないと度々書いている。
ビジネス書の形をしているが行動経済学だとかそういう方面の知見をわかりやすくまとめてある。山岸俊男氏の「安心社会から信頼社会へ」というと総合職と一般職みたいに説明がないと違いがわからない話になるが、「成功者は自分も高めようとするギバーである」、というと圧倒的に分かりやすい。が、書いてあることは大きくは違わない。
ギブ、テイクというのもゲーム理論の囚人のジレンマ問題を人はどう解決しているのか、を研究していれば自然に出てくる発想だ。囚人のジレンマ問題で協力を選ぶ傾向があるのがギバーで裏切りを選ぶのがテイカー。相手次第で選択を変えるのがマッチャー。
囚人のジレンマ問題は単発では「裏切り」がナッシュ均衡になるが、これが繰り返して続くような状況では最適な解は違ってくる。最もシンプルでかつ強力なのは「しっぺ返し戦略」で、まず協力し、相手が裏切ったときだけ裏切り返す。
ギブをしながらも(協力が第一選択肢で)自分をないがしろにしない(やられたらやり返す)、成功するギバーはしっぺ返し戦略と矛盾しない。
信頼社会も同じような話で、自分は裏切らないですよ、を信じてもらうよう努力すれば、人は「協力」をずっと選んでいける、という話。それはパレート最適が連続するということだから、それを成し遂げたギバーが成功するのはもっともだ。
山岸俊男氏の本では、「育ちのいい」人々は「人は基本的に信じられる」という。むしろ貧困層に「人を見たら泥棒と思え」というタイプが多い。「育ちのいい」人々がどうして裏切られて損失を被らないのかを調べたところ、かれらは裏切りそうな人物を見抜く能力を身につけており、無意識にそういう人物を排除して考えるので「人は信じられる」のだという。本書で成功するギバーはテイカーを見抜ける、というのと同じ話。
読書でもなんでも、ものを知って面白いのは、知識が次々と繋がって一つの体系を作っていくこと。その体系が見えればいちいち記憶しなくてもいい。体系が面白く、同時に脳の容量を節約できる。
ゲーム理論から行動経済学で、ギバーであれば成功する可能性がある、という使える知識まで一繋がりで、これまでの倫理ともきれいにつながる。これは多分、人がどう社会を作っているかを解き明かすヒントと繋がっている。
こんな面白い話を知らないのはもったいない。