論より詭弁~反論理的思考のすすめ~ (光文社新書) [Kindle]

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  • ・”論理的思考”は議論の場において相手と自分が対等な関係であることが前提になっているが実際には違う.パラーバランスに偏りがある前提で議論をする.

    →自分はA,相手はBの主張で争っていたときに,相手が「Bじゃないならもういい!Cする」としたときに論理的思考におけるディスカッションでは詭弁だ!となるが,現実はそれで動く

    →リアリズムを感じる.論理的思考に基づいているかではなく,現実を動かせるか,自説を通せるかに重きを置いている

    ”発生論的虚偽”→ある情報が発見されたことと,その情報の審議は全くの別問題である
    →ある主張の動機とその内容の真偽も全く別
    →これがわからない人,ネットでいっぱい見かけるよな

    AはBだがCだ.AはCだがBだ.
    →どちらも同じことを言っているのに印象がまるで変わる.これがすでにレトリック.言葉が,表現対象を歪めてしまう.
    →ここにはAに関する情報はもちろんだが,これを表現したXの価値観も含まれている

    "あることを表現するとは,複数の可能な言葉から一つを選択することに他ならず,その際に.自分にとって最も都合がよく,効果的な言葉を選ぶことは説得を目的とするレトリックの立場から言えばむしろ当然の振る舞い”

    ”富士山は日本一標高が高い”という事実を述べた一文ですら「なぜ”日本一の標高”という切り出し方をしたのか」という点で価値判断が含まれる.すべての表現はその人の「意見」といえる

    相手の問いに素直に答えることは,相手の掌で踊らされることになりかねない.

    "

  • 本書は、詭弁や虚偽のようなもの……レトリックについての本である。
    相手を論破・説得するためには単純な論理よりもレトリックめいた物言いや考え方が有用であると説き、それらについての使用例や考え方などについて語られている。
    たとえば「論理的ではない」物言いやものの味方の例として「お前も同じ」「誰が言ったかが大事」というような『人に訴える議論』が挙げられている。これらは論理的ではないが議論の場では説得力を持つ。こういった表現を用いるのは是か非か!?……などというようなことについて諸々書かれている。
    上記の点について個人的なまとめをするなら、これは第4章だが、その他、章ごとに概略をまとめると、
    第1章は「恣意的な問いには例外や反証を問いで突き返せ」、
    第2章は「定義と因果関係という複数の論拠を混ぜるな」、
    第3章は「恣意的な定義づけは相手に説明させろ」、
    第4章は「正義原則(公平の原則)に基づいて、相手の立証責任・説明責任へと論点を移行させろ」
    第5章は「問いの恣意的な前提はその論拠を立証させろ」、

    多分不足しているが。色々引用文献などもあるが、平易な文章で書かれており、哲学や論理学の素養がなくともなかなかに読みやすかった。
    惜しかった点は少ない。ひとつは、議論が、対立意見同士の討議という形式を前提としており、協議的な合意形成という観点がなかったこと。ひとつは、なんでそれで人々が説得されるかについて結果論的にしか答えていないところだ。ただ、前者は紙幅の関係で、後者はそもそもこれ誰が説明できるのかという点で難しいところだろう。
    そんなわけで「正当な論理」を信奉していた僕にとってはちょうどいいカルチャーショックになる、けれども腑に落ちる手ごろな一冊であった。

  • 人狼ゲームをやっていると、ポジショントークによる戦いが起こることが多い。人狼では必ずどちらかが正解でもう一方は不正解(嘘)だが、現実に起こっているポジショントークは必ずしもそうではない。有利なポジションだからといって言っていることは正しくないとは限らないし、両者のポジションが違うからといって、両者の意見は食い違うとも限らない。
    その為、純粋な論理的思考だけで判断することは困難を極める。判断には必ず価値判断が含まれており、その価値判断を導き出すためには、論理的な思考は材料になりにくい。論理的な思考を成立されるためには、それが真(あるいは偽)であると判断できるための材料が必要であり、得てしてそういった情報は手に入らない。不確実な未来を対象にした判断が必要な場合は、尚更である。

    本書は、ロジカルシンキングをある程度学んだ上で読むのが良いと考えている。特に、ロジカルシンキングを身に着けたようにみえても、なかなか上司や顧客を説得できない社会人は、突破するための糸口が見えるかもしれない。
    弁論術、というものはもっと真剣に取り上げられてもいいと思う。

  •  論議のテクニカルなことが書いてあると思ったが違った。そもそもなんのためか、もう一度思い起こそう。
     ある章は、まるで道徳判断について書かれているようでハッとさせられる。
     世間では詭弁とは呼ばれているものが、実は効果的であるということを教えてくれる。そう、問題にすべきは相手の意図なのだ。
     論理学の袋小路に迷い込んでいるかたにこそ読んで欲しい。

著者プロフィール

1958年香川県生まれ、筑波大学第一学群人文学類卒業。同大学院博士課程教育学研究科単位修了、琉球大学助手を経て、現在、宇都宮大学教育学部教授。専攻は修辞学(レトリック)と国語科教育学。著書に『反論の技術』『議論の技を学ぶ論法集』『修辞的思考』『論争と「詭弁」』『議論術速成法』『論より詭弁』『論理病をなおす! 』など。

「2010年 『レトリックと詭弁 禁断の議論術講座』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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