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感想・レビュー・書評
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英国でミステリーの女王と呼ばれているミネット・ウォルターズの中編2作。正月に読んで「遮断」がメチャクチャ面白かったのと、Kindleでセールをやっていたので、購入。ちょっと、物足りなさも感じたが、面白かった。
1作目の「養鶏場の殺人」は、純朴な青年が、結婚を迫る偏執狂的な女性を切り刻んだという1920年代に実際に起きた事件。ワイドショー的な事件であるが、登場人物の心理描写が徹底的になされていて、非常に怖い小説になっている。
2作目の「火口箱」は、1990年代を舞台にしたフィクション。こちらは、「養鶏場の殺人」とは違い、本格的なミステリー。小さなコミュニティーにおける偏見や思い込みが、いかに悲惨な結果を導くかに焦点を当てている。
序文で著者が紹介している通り、「この二編は異なるふたつの団体から 、あいだに七年の間隔をおいて執筆を依頼されたものだが 、依頼の目的はひとつ 、人々を読書に誘うことである 」。したがい、特に「養鶏場の殺人」はミネット・ウォルターズにしては、読みやすい作品となっている。
どちらも、面白かったが、寝食を忘れて読み耽るというほどではなかった。でも、どちらも1時間程度は楽しめる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふだん本を読まない人向けに読書の楽しみを知ってもらうという企画で書かれた中編2つ。
著者の作品の中では短いし読みやすい。逆に言えばいつもよりちょっと物足りない気もする。
「養豚場の殺人」は英国で実際に起きた事件をもとに書かれた話で、どのような経緯で悲劇が起こったかを執拗に描いたルース・レンデル風のある意味ホラー。
「火口箱」は小さな村で起こった事件を巡ってイギリス人とアイリッシュの軋轢が高まっていくミステリ。偏見の色眼鏡を取り除いたあとで物事の見え方が反転するラストはお見事。
地味な作風だが、やはりウォルターズは面白い。