ルパン三世 カリオストロの城 [Blu-ray]

監督 : 宮崎駿 
  • ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
4.12
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本棚登録 : 95
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4959241753540

感想・レビュー・書評

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  • なぜルパンはカジノから盗んだお金を捨てたのか。それはカリオストロ公国が戦争を起こそうとしていることに気が付いたからです。
    ブルボン王朝の破滅、ナポレオンの資金源、世界恐慌の引き金になったことをルパンが銭形に説明しています。ゴート札とカリオストロ公国はそれほど影響力があるということです。大量のゴート札が出回っていることで、ルパンはカリオストロ公国が何かを企んでいることに気付いたのでしょう。
    ゴート札を捨てるシーンで引っかかるのは、カジノから盗んだお札がすべてゴート札だったことです。不特定多数のカジノの客が使った50億がほぼすべてゴート札で、それほど大量に出回っているからとも考えられますが、国営カジノですらカリオストロ公国の息がかかっていて偽札を拡散する拠点になっているという様にも考えられます。
    いずれにしても、この時点でルパンは「次の仕事」を決めています。この時点でのルパンの目的は、囚われのお姫様を助けることではなくて、カリオストロ公国で戦争を企んでいる連中をぶっ潰しに行くことです。偽札を使うことは、カリオストロ公国が企んでいる世界恐慌や戦争を引き起こすことに加担することになります。だから盗んだお金を全部捨てたのではないでしょうか。

    カリオストロ公国に潜入してタイヤを交換するシーンで「平和だねぇ」と呟きます。これは、まだ戦争じゃないよという演出だと思います。そこへ車で逃げる花嫁姿のクラリスが突然現れるのですが、伯爵とクラリスの結婚は戦争の影です。
    伯爵の計画は、世界恐慌を引き起こし、それによって世界を戦争へ向かわせ、その動乱に乗じて周辺国を支配し、ヨーロッパの王、いずれは世界の王になることではないかと思います。そのためにはまずカリオストロ公国の王様になることが必要で、だから邪魔な大公夫妻を暗殺して、クラリスと結婚しようとしていると考えます。

    クラリスとの結婚は二つの指輪を揃えて古の財宝を手に入れるためと言っていますが、指輪を手に入れることだけが目的なら大公夫妻を暗殺したときにクラリスも一緒に殺して指輪だけを手に入れればよかったのです。大公一族がいなくなれば伯爵が次のカリオストロ大公として名実ともに実権を握れるのですから、クラリスを殺さない理由はありません。
    ではなぜクラリスを殺さないのかというとクラリスと結婚するためです。
    ではなぜクラリスと結婚するのかというと伯爵が「偽」のカリオストロだからです。これは作中で伯爵自身の口から語られています。時計塔でクラリスを追い詰めたときに「これでカリオストロの血も終わりだ」と言っています。クラリスが死ねばカリオストロの血筋は途絶えてしまう。つまり伯爵はカリオストロの血筋ではないということです。伯爵家はずっと前からそうだったのか、伯爵自身だけがそうなのかはわかりませんが。
    伯爵がクラリスと結婚するのは野望の実現のためでもありますが、もう一つの目的は本物のカリオストロになることだったと考えます。あるいは、本物のカリオストロに偽物の血を入れる。自分の血でカリオストロの血を汚すことなのかなとも思いました。偽札を出回らせることと重なりますし。

    大公家で受け継がれてきた指輪が銀の指輪で、伯爵家で受け継がれてきた指輪が金の指輪であることに引っ掛かりました。
    普通は金の方が格が上とされるので、大公家が金の指輪で伯爵家が銀の指輪になると思います。
    だから指輪が作られた当時の力関係は、伯爵家の方が上でクラリスの家の方が下だった。実は伯爵家の方が本流で大公家の方が傍流だったと考えられます。
    最初はそうだったけれど、いつからか小さな国の面倒なまつりごとをクラリスの家の方にまかせて、伯爵家は実利のある贋金づくりや謀略を担うようになっていったのだと想像します。指輪の文言が彫られた時には伯爵家が「光」で大公家が「影」という意味で二つの指輪を作ったのが、それが年月を経て光と影が逆転したということではないでしょうか。
    伯爵家の大元というのはこの地にひそかに残ったローマ人だったのかもしれませんね。それを支えていたのがクラリスの先祖になるのではないでしょうか。唯一この地に残ったカリオストロ家はその後もこの地を追われたローマ人と裏で繋がっていて、それをクラリスの先祖にやらせていた。それが今の裏の仕事につながっているのではないでしょうか。
    伯爵はそのことを知っていて、古の財宝を手に入れることによって本物のカリオストロになろうとしたんだと想像します。新生ローマ帝国の皇帝になろうとしたんですね。

    この作品では「本物」と「偽物」のモチーフが出てきます。
    偽物のモチーフとして挙げられるのは、ゴート札。伯爵。伯爵とクラリスの結婚。偽の銭形。クラリスが幽閉されている場所には偽物の空。偽の指輪。偽のカリオストロに仕えるジョドーやグスタフら。ルパンからクラリスを守った伯爵を称える世論。インターポール。偽の大主教。偽札に群がる人々。
    本物のモチーフとしては挙げられるのは、クラリス。今も大公邸宅跡地の管理を続けるおじいさん。主人を待ち続けるカール。銭形と機動隊。古代ローマの遺跡。
    「偽物」は「目先の物質的な利益」で、「本物」は「目には見えない永遠のもの」といった感じでしょうか。

    この作品内でルパンの計画は全部うまくいっていません。
    カジノから金を盗んでも偽札だった。でも、それがきっかけでカリオストロ公国の計画に気付く。
    花嫁姿のクラリスを助けても崖から落ちて木がぶつかって気絶してしまう。クラリスは捕らえられてしまうけれど、指輪だけが残る。
    水路で一人だけ流されるけれど、城には潜入できた。
    ワイヤーを飛ばす小型ロケットを落っことす。でも何とか幽閉場所には辿り着いた。
    ようやくクラリスと再会しても地下に落とされる。そこで銭形と再会して地上へ生還。
    オートジャイロを奪ってもジョドーに撃たれるが、なんとか一命はとりとめる。
    結婚式から救い出しても時計塔で再び離れ離れになってクラリスを殺されそうになる。けれども指輪とクラリスの交換を持ちかけて殺すのを止める。指輪との交換も失敗するけどクラリスに助けられて、時計塔の仕掛けによって伯爵は最期を迎える。
    ようやくクラリスを救いだしても一緒に連れて行くことは出来ない。一緒に連れて行かなかったからクラリスは自由の身になれた。
    そもそも昔カリオストロに潜入したときに成功していたら今回の事件も起きなかったのですが、失敗していなければクラリスとの出会いもなかった。
    もっと遡れば古代ローマ人がこの地を追われなければ、遺跡は残らなかった。
    うまくいかないけれど完全に失敗ではないというのが絶妙なところですね。それでもあきらめないから成果が残り物語が進んでいく。
    失敗してもあきらめないのは銭形や不二子も一緒ですね。

    ルパンはなぜクラリスを連れて行かなかったのでしょうか。泥棒も覚えると言ったクラリスの愛は本物でした。ではルパンがクラリスを連れて行けばルパンは本物を手に入れられたのでしょうか。クラリスは本物でいられたでしょうか。国境を超えるときには偽名を使い変装をしなくてはいけません。泥棒稼業に染まり日陰者になったクラリスをルパンは変わらず愛せたでしょうか。ルパンが連れて行かなかったから、クラリスは本物のまま生きていけるのです。クラリスを連れて行かなかったことでルパンのクラリスへの愛も本物であり続けられて、二人の関係も本物であり続けられるのです。
    もちろんルパンがカリオストロに残ることもできません。影に生きてきたからクラリスを助けることができたけれど、影に生きてきたからクラリスと一緒になることができない。光と影のそれぞれの世界に生きる離れ離れになった二人を繋ぐのが「心を盗んでいった」という銭形の言葉です。これは銭形がかっこいいと思わせるセリフですね。

    ゴート札の原版を手に入れた不二子を追いかけるルパンですが、このシーンはルパンと不二子の関係を比喩していると思います。ゴート札は本物に限りなく近いものです。ルパンとクラリスの愛が本物なら、ルパンと不二子のそれは限りなく愛に近いものになるのではないでしょうか。ルパンは本物しか盗まない流儀らしいですが、本物だからこそ盗めなかったのがクラリスで、たとえ流儀に反することになっても盗みたいと思わせるのが不二子と考えると、「カリオストロの城」を締めくくるのにふさわしい終わり方かと思います。

  • つい先日、TV の地上波で観たばかりだが、
    なぜかまた観たくなり、円盤を衝動買い。
    4K / 8K の再生環境はもちあわせていない為、
    薄緑地に白いシルエットのキャラクターをあしらった
    パッケージが印象的な BD を買い求め、
    ノート P/C で再生している。
    画像、音質等は 4K / 8K 版 BD と比較できないが、
    上記の再生環境なら過不足無しだと感じられた。
    ストーリーや感想に関しては何も語るまい。
    私の世代なら必携の1枚だと断言させて頂きたい。
    (今の時代、インターネットのビデオ・オン・ディマンド
    配信サービスを利用する方がクールなのかもしれないなあ)

  • おそらく2009~13年あたりに一度観てるはずだけど、登録されてなかった。劇場で観たので、しかもMX4Dで観たので登録。

  • 今まできちんと観たことなかったので観てみた。
    展開が早くて、おもしろくて、宮崎駿だけあってジブリっぽい人たちがたくさんでてきて、伏線も綺麗に回収してておもしろかったー!

    ラピュタの下地みたいなものだったけど、すごく楽しめた。

    ルパンも不二子ちゃんもかっこよかったけど、
    銭形さんがイイネ!権力に屈しない部分がとても素敵。

    最後の有名な台詞部分も聞けてよかったー!
    しかしあの場面だけのチャプターがあることに笑ってしまったー。

    観て良かった!名作!

  • 宮崎アニメでは二番目に好きなアニメ。(一番は、未来少年コナン)
    あの当時の宮崎アニメはキャラクターが皆、生き生きとしてて魅力的なんだな。あと、ジブリアニメのような売り上げを伸ばすだけのための偽声優を使ってないのが最高。

    ちなみに、β、LD、DVD、ブルーレイと同じコンテンツを買い直している自分が悲しい。

  • ルパンが飛びます。
    そして銭方の名言、「奴は大切な物を盗んでいきました…貴女の心です!(あやふや)」はこの作品です。
    そのうちに観なおしたい作品。
    よかったらチェックしてみて下さいな♪

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著者プロフィール

アニメーション映画監督。1941年東京都生まれ。学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画(現・東映アニメーション)入社。「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)で劇場作品を初監督。1984年には「風の谷のナウシカ」を発表。1985年にスタジオジブリの設立に参加。「天空の城ラピュタ」(1986)、「となりのトトロ」(1988)、「魔女の宅急便」(1989)、「紅の豚」(1992)、「もののけ姫」(1997)、「千と千尋の神隠し」(2001)、「ハウルの動く城」(2004)、「崖の上のポニョ」(2008)、「風立ちぬ」(2013)を監督。現在は新作長編「君たちはどう生きるか」を制作中。著書に『シュナの旅』『出発点』『虫眼とアニ眼』(養老孟司氏との対談集)(以上、徳間書店)、『折り返し点』『トトロの住む家増補改訂版』『本へのとびら』(以上、岩波書店)『半藤一利と宮崎駿の腰ぬけ愛国談義』(文春ジブリ文庫)などがある。

「2021年 『小説 となりのトトロ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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