文学界 2014年 06月号 [雑誌]

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  • “「それはあなたが」と星川はどこからともなく湧いてきた怒りを抑えながらそう言った。「そうであると言えばそうなるのです」
    「何故そうなるのかがわたしにはわからない」と雀部は率直なところを開陳し、「一体お前は何を根拠にわたしを神のような権限を持つものだとするのかね」と訊ねた。
    「あなたは神のようなものではないのですか」と星川は問いを問いで返して、
    「如何にも神のようなものである」と雀部は応えた。
    「だったら」と机を叩く星川をなだめ、「わたしが言っているのは、わたしが自分を神のようなものと考えているかどうかではない。お前が何故わたしを神のようなものとみなすことができるのか、みなしているのか、といった事柄だ。われわれは現に今こうやって天文館のドトールで向かい合って座っているのに。これはかなり危険な状況だ。特に君の方にとって。目の前にいる人物を神のようなものと思うのはかなりおかしなことであるから。ところで天文館というのはどこなのかを知っていたら教えてもらえると有り難い」”[P.310_プロローグ]

    「プロローグ」円城塔

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