いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 (モーニングコミックス) [Kindle]

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  • 福島第一原子力発電所での収束作業に就いた、作者 竜田一人のルポルタージュ漫画。
    竜田氏は2011年の秋、ハローワークを訪れ、月50万円の"福一"の求人票を見つけ応募。
    しかし、実際にフクシマで仕事をするまでに、一年も焦らされることとなるのだが、そこまで行き着く過程がブラックだったりなんかもする。

    "福一"でのコワイ噂を耳にしたことのある私は、この作業に関わる人は、高額な給料目当てだったり、腹をくくって超危険な世界に飛び込まなくてはならない経済状況で捨て身の覚悟なのかと思っていた。
    だから、現場は悲愴感漂い、仕事を嫌々ながらしているのかと想像したが、まったくの逆だった。
    職場は至って普通そのもの。

    男たちはキビキビ働き、休憩所ではのんびり食事し昼寝をする。
    話題はギャンブルや下ネタで笑い、和気藹々としている。
    メディアが報じていることは何なのだろうか?
    おかしな都市伝説である。

    "福一"で皆が同僚に掛けている「ご安全に」という挨拶。
    現場へ出向く時に言うこの「ご安全に」は、聞き慣れない呼び掛けだけども、危険な場所へ行く相手を深く思いやっている。
    なんだか随分と誤解していた"福一"のこと。
    そういえば"福一"と、ついつい言ってしまうけど、現地では"1F"(いちえふ)と言うそうだ。
    表題の『いちえふ』は、福島第一原子力発電所の略称の"1F "のこと。
    それだと、フロアーの1階みたいで、馴染めないなぁ。

  • 未だ残る瓦礫や倒壊した建築物、そして高い放射線量という異常な状況の中で福島第一原発の廃炉作業を行う作業員の日常を描いている。その作業の様子は周りの異常な状況を除けば普通の現場と変わりない。やるべきことを段取りを踏んでキチンとやる。描き方にも、何かを煽るような表現は一切ない。作者が言うように、これも福島の現実なのだろう。

    一方で、最近「美味しんぼ」の「鼻血」描写が騒がれている。「美味しんぼ」の方は読んでいないのでよくわからないが、物事を固定した視点でしか見ないのは危険だと思う。

  • いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) いちえふ 福島第一原子力発電所労働記 (モーニングコミックス) 2014/4/23

    想像以上に着替えが多い職場である
    2017年5月6日記述

    竜田一人氏(仮名)による作品。第一巻。
    「モーニング」2013年44号、48号、52号、
    2014年6号、9号、13号、17号に掲載された作品を収録。

    東京電力福島第一原子力発電所での勤務実態をルポしている。
    2012年6月~2012年年末までの間の分になる。
    ニュースやNHKスペシャルでは深刻さが伝えられるが
    その労働現場はどうなっているのか。
    イマイチよくわかっていない実態が見えた気がする。
    著者は6次下請けとしての勤務をスタートする。

    意外だったのがハローワークで福島第一原発の求人を
    見て応募しても仕事が必ずしもある訳ではないこと。
    原発内はいきなり仕事が発生したりということが多い。
    やむを得ず待機という場面も多いのだという。
    福島に来たは良いものの弁当代を引かれる一方で
    待機というのは想像できない現実だ。
    結局見かけの給与は高そうだが、待機が多かったり
    実労働時間が短い、長期間働けないなどで
    あまり多くの収入は現場作業員では期待できないんだなと。

    印象的なのはやたらに朝が早い(4時起き)
    (最初、休憩所の運営勤務の為だが)
    想像していたけど着替えの多さ
    (たぶん実労働時間より多かったのではないか)
    ご安全に!という台詞。
    確かに聞きないが、これほど安全第一を強烈に
    打ち出した応答はないのではないかと思えた。
    まあ、福島第一原発が既に利益を出すものでは
    無くなってしまっているのも影響しているのだろうか?
    それとも原発作業では昔から使われていた応答なんだろうか。

    マスクした後に鼻がかゆいっていうのも
    ありえるだろうなと。というかトイレだって
    急にしたくなったらこれだけの着替えの中、大変そう。

    この1巻で描かれているのは2012年の時点での話しで
    今はかなり良い方へ変化しているそうだ。(3巻に描かれている)

  • 福島第一原発のリアルな仕事がよく分かる、とてもよいマンガでした。

  • ある人の、体験を淡々と描いたマンガ。
    こういうのが、話題になり資料になることを、それほど、限られた情報しか与えられてないことに、気づくのは、別の本を読んだあと。
    ⇨チェルノブイリの祈り

  • 震災当時は毎日のように流れていた原発の情報。
    どのような人がどのように作業しているのか知りたくて手に取りました。

    読んでみての感想としては、「意外と普通なんだ!」。もちろん、放射線量が高いため、一日の勤務時間も限られる特殊な状況ではあるものの、冗談で笑い合ったり、カップラーメンすすったり。意外と熱中症の方が脅威ということも知りました。
    自分がいかに、偏ったイメージを持っていたか分かり、きちんと情報を得る大切さを知りました。

    そして、改めて、作業してくれている人には頭が下がる思いです。

  • ルポ漫画というジャンルで、原発メルトダウンのことを探してみたら、この作品があった。
    実に、リアリズムに基づいた作風で、絵も緻密で丁寧。日本人の漫画絵のこだわりを感じる。
    廃炉の作業員という設定で、実際自分で経験したことを描いている。
    原発がメルトダウンしたことに、目をそむけずただその情景と状況を描く。
    廃炉の作業が、どんなふうになっているかということが実に明確に描かれている。
    また、その作業は、なんと下請けで、7次というから、日本のシステムは笑える。
    どれだけ、手数料取りの仕組みができているのかとおもう。
    日当8000円。あれ、あれ。
    40年と言われる廃炉作業。実際は、もっとかかる。
    実に楽天的な見通しである。
    放射能がなくなるまでには、10万年かかるので、嘘がそこには横たわっている。
    そういう中で、明るく作業する作業者たち。
    ミリシーベルトの基準があり、1日の限界値、そして」1年の限界値が決まっている。
    2012年の作業なので、まだ放射線量が大きい。

  • 十年前のJC事故から反省のなかった日本原電にハインリヒの法則が発動し、マーフィーの法則は容赦なかった、崩壊する可能性のあるものが崩壊した、だけのこと/竜田一人とはうまく付けたペンネームで、イチエフ原発廃炉作業内側に潜入取材までしたマンガ家は今のところ他にいない、竜田という駅は近郊にあるが/東京の職安で「原発廃炉の作業員」希望してから、多重下請けの人材斡旋のネットワークに組み込まれ構内作業に就くまで放管手帳と研修…約一年/6次の下請けのそれぞれの承諾書とか(印鑑を預けて)…日々変化する作業に人員が確保されるシステム/1巻では構内の休憩所の運営作業員

  • [概要]
    全3巻の漫画作品
    東日本大震災後、福島第一原子力発電所の復興工事の作業員として働くことを決意した筆者のエッセイである。
    工事現場での徹底した放射線管理が詳しく描写されており、復興に時間がかかってしまっていることの理由がそこにみえた。

  • -

  • 読みやすく、それでいて「いちえふ」の実態を知るのに良い。

  • 新人賞MANGA OPEN大賞を受賞し、漫画雑誌「モーニング」
    に連載されている作品の第1巻。

    東日本大震災の時に失業中だった著者。大震災と原発事故の
    発生から、被災地に為に出来る仕事はないかとハローワーク
    で被災地での仕事を探す。

    紆余曲折を経て、事故を起こした福島第一原子力発電所内
    での仕事に就くことになり、そこでの現場作業員の日常を
    描いた作品である。

    「福島原発の真実」と銘打った作品も何冊か読んだが、真実
    というのは人の数だけあるので、どの立場で物事を見るかで
    変わって来ると思うのだ。

    だが、本書の帯に書かれているのは「これは「フクシマの真実」
    を描く漫画ではない。これが彼がその目で見てきた「福島の
    現実」。」

    なので、ストーリーは淡々と進んで行く。そうなんだよね。事故の
    収束へ向けての作業であっても、それは日々積み重ねる仕事の
    結果となるのだもの。

    絵は劇画調なので好き嫌いはあるかもしれない。だが、道具類
    の説明などもあって作業員さんの仕事の一部が分かりやすく
    描かれている。

    ハッピーさんの『福島第一原発事故収束作業日記』と併せて
    読むといいかも。

    尚、作中に被災者でもあり原発内で働く人の想いが描かれて
    いる部分がある。考えちゃうよな、こういうところは。

  • 1F。福島第一のことを現地ではこう呼ぶそうで、そこで実際に働く人が書いたマンガです。コメディでも熱血モノでも何でもなく、フィクションの要素はほとんど入っていません。淡々と現地の仕事について書かれていて、読む限りは著者が現地ありのままの姿を伝えようという意図が伝わってきます。ちなみに著者は東京から来た人で現地の人ではありません。マスコミなどが伝えていることと、現場の姿にはギャップがあることに戸惑いながらも、誰かがやらねばならない日々の仕事をつづった内容でマンガ的には何が面白ってわけではないのですが(笑)、でもなぜかじっくり読んでしまう内容でした。

  • 福島第一原発内の作業を綴るルポルタージュ漫画。これといって事件が起こるわけではなく、災害の現場が淡々と描かれていく。あくまで、作者の見た視点からの話でしかないし、どの程度忠実なのかも定かではないけど、1Fのひとつの記録として意義のある。どんな未曾有の大災害でそれまでとは断絶した非日常であろうとも、そこで人が活動し息づく以上は、必然的に日常があるし日常になっていくのだということを教えてくれる。

  • 読み終わり。私も全面マスクほしい。
    私の場合,放射性物質ではなく花粉ですが…。今日もいい天気なのに,外にでるときはマスク+メガネの不完全防備です。昨日はうっかりマスク無しで庭仕事をしてえらい目に遭いました。(泣)

  •  「フクシマの真実」を暴く漫画ではない、と銘打ったドキュメント漫画。1992年の夏、いちえふ(東電福島第1原子力発電所)で働いた作者の見たままを描いた力作。ドキュメンタリーなので特に大きな事件もおきないし、「いちえふで働く日常」を淡々と描写する。
     「神は細部に宿る」とでも言うように、自分が働いたエリアだけをディテールまで描いて原発の是非には触れない、誇張はしない、フクシマを代表しない、という原則を貫いている。
     しかしながら、こういう徹底的にミクロからのアプローチは危うい側面を含むことを忘れてはいけない。ハンナアーレントの「悪の陳腐さ」ではないけれど、一人一人の努力と原発の是非は別。ここに描かれている下請けの人々も、原発の再稼働に関わる東電の社員も、みんな一生懸命やっている。
     なので、この作品で描かれている事実と、「日本に原発は必要か」というマクロな質問は、最初からリンクしないということは言っておく必要があるだろう。
     

  • こういう事実もあるんだなと一つ勉強した。
    これは是非みんな読んだらいいよ、と思う。
    でも、あまり面白い話ではないよね。
    放射線と闘いながらガレキ一つ一つどかすって、本当に気が遠くなる話だもの・・・

  • 作者に敬服。ものすごいリアリティ。

  • 原発事故と筆者の人生のクロスする部分を淡々と描く。一気に読んでしまった。

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著者プロフィール

大学卒業後、職を転々とし、東日本大震災後、福島第一原子力発電所の作業員となる。

「2015年 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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