ブラック・ジャック 8 [Kindle]

著者 :
  • 手塚プロダクション
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感想・レビュー・書評

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  • 『絵が死んでいる』
    これは元ネタとなった事象が容易に想像できるだけに作中で描かれる怒りも容赦なく伝わってくる
    核爆発の恐ろしさを絵に込めて世界に知らしめてやりたいと意気込む青年。全身を放射線に晒されたゴ・ギャンを治す方法を求められるブラック・ジャックがした手術はあまりにファンタジック。
    でも、ここで下手に現実的な手術を行わない事が核爆発の恐ろしさを伝える方法になっているようにも思えてしまう

    また、最終的にゴ・ギャンが死に瀕してしか絵を描けなかったというのも象徴的な描写。一時は余命2週間という程の重体となった。でも、治ってしまえば納得行く地獄は描けない
    絵が完成したその瞬間こそが核爆発の恐ろしさを最も伝える一瞬になっているね…


    『リンチ』
    話の構図としては単純ながら、一方でブラック・ジャックのスタンスが明確化する話であり、それがこの巻に収録されている別のエピソードにおけるブラック・ジャックの動きを補完するものになっているね

    余所者に酷く冷たい村、助かる見込みの少ない患者。ブラック・ジャックにとって積極的に受ける意味合いの薄い案件
    それでもジェルビーノはブラック・ジャックの治療に文句を言わないと神に誓った。ならブラック・ジャックは一人の医者としてそれを完遂する義務がある
    それこそ街中で治療を原因としたリンチを受けようと……

    ブラック・ジャックは復讐を心に誓う人間だけど、かといって自分に何かした人間全てに報復する心は持っていない。むしろ復讐と治療を分けて考えられる人間だね
    そういった事が見えてくるエピソードだったよ


    『二人目がいた』
    医師活動の他に存在するブラック・ジャックの人生目標、自分と母を滅茶苦茶にした人間に復讐する。その二人目が登場するエピソード
    ただ、前回と大いに異なるのはその相手が既に意識もない程に重体であったこと。復讐を果たす為には相手を治療しなければならない。何というジレンマ……

    このエピソードでは以前にブラック・ジャックがぶつかった問題が形を変えて現れているね
    気が進まないままに自殺した少年を助けたのに死刑を宣告された事に抗議した「二度死んだ少年」、安楽死を選ぼうとしていた患者を助けたのに結局は事故死した「ふたりの黒い医者」
    あれらの件でブラック・ジャックが掲げる医者としての方針が感じられた。今回の一件はそれらをなぞり、ブラック・ジャックを試しているかのよう

    ブラック・ジャックは復讐を狙っていたのに、本人はそれを知らないどころか、ブラック・ジャックに感謝しながら死んでいった
    まるでブラック・ジャックの医者としての在り方と復讐者としての在り方が真正面から反発、矛盾したかのようなエピソードに感じられたよ……

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著者プロフィール

1928年、大阪府豊中市生まれ。「治虫」というペンネームはオサムシという昆虫の名前からとったもの。本名・治。大阪大学附属医学専門部を卒業後、医学博士号を取得。46年、『マアチャンの日記帳』でデビュー。幅広い分野にわたる人気漫画を量産し、『ブラックジャック』『鉄腕アトム』『リボンの騎士』『火の鳥』『ジャングル大帝』など、国民的人気漫画を生み出してきた。

「2020年 『手塚治虫のマンガの教科書』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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