NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2014年 6月号

制作 : ナショナル ジオグラフィック 
  • 日経ナショナルジオグラフィック社
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感想・レビュー・書評

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  • 戦場に動員される犬、ロシアの医療列車、漁業養殖。すごく勉強になった。

  • 戦場で兵士を守る犬たち

    米軍が駐留するアフガニスタンの戦闘地域では、厳しい訓練を積んだ軍用犬が活動中だ。ある軍用犬と兵士の運命をたどる。

    文=マイケル・パタニティ/写真=アダム・ファーガソン

     第一次世界大戦では、数万頭の軍用犬が伝令に使われた。第二次世界大戦で戦場となった太平洋の島々では、森に潜む日本兵を見つけ出すために犬が動員された。ベトナム戦争では4000頭の軍用犬が投入され、見通しの悪いジャングルで活躍したという(だが、米軍の撤退時に多くの犬は置き去りにされた)。

     軍用犬は、過去の遺物ではない。米軍が駐留する戦闘地域では今も、兵士たちと生死をともにする「相棒」として、常時500頭を超す軍用犬が活動している。
     彼らの最大の武器は、人間の10万倍も鋭いといわれる嗅覚だ。訓練を積んだ犬たちは、かすかなにおいを頼りに、武器や爆発物を探し出す。アフガニスタンに配属された、ある軍用犬の働きを見てみよう。
    すぐれた嗅覚で爆弾を探す軍用犬

     米国海兵隊のホセ・アルメンタ伍長は、軍用犬に命令を下し、時には生死をともにする「ハンドラー」だ。ジャーマン・シェパードのジーニットとペアを組み、アフガニスタンで即製爆発装置(IED)を見つける任務に就いている。

     軍用犬と一口にいっても、すべての犬が戦闘に適しているわけではない。暑さに弱い犬もいれば、事前に訓練してあっても、戦場で銃声や爆発音に興奮してしまう犬もいる。そうしたなか、戦場で力を発揮しやすい犬種として定評があるのが、ラブラドール・レトリバーやベルジアン・マリノア(ベルジアン・シェパードの一種)、それにジャーマン・シェパードだ。

     気温50℃近くありそうな砂漠地帯の猛暑のなか、ジーニットはアルメンタの命令に従い、地中に埋まったIEDを探す。手がかりは、硝酸塩のかすかなにおいだけ。爆発が起きれば真っ先に犠牲になる、危険な任務だ。

     2010年に沖縄でペアを組んだとき、ジーニットの耳にIDを示す「N103」という入れ墨が入っているのを見て、アルメンタは軍用犬が軍の装備であることを理解した。沖縄では、訓練が終わると必ずジーニットを犬舎に戻した。犬に接するときには、声や行動を通じて、ハンドラーが上位であると犬に認識させる。

    「犬はよちよち歩きの幼児と同じです」。アリゾナ州にあるユマ性能試験場でアルメンタとジーニットの訓練を担当した、海兵隊のクリストファー・ナイト一等軍曹は言う。「食べ物や水など、基本的な欲求を満たしてやり、何をすべきかこちらが指示する必要があります。上下関係がないとうまくいきません。あくまでハンドラーが上位に立つ必要があるのです」

     もちろんアルメンタもこの原則に忠実に、あくまでプロフェッショナルとしてジーニットに接していた。もしジーニットが任務で命を落としたとしても、次の犬とペアを組むだけだ。アルメンタは涙一つこぼさなかっただろう。
    軍用犬ハンドラーを襲った悲劇

     アルメンタとジーニットの運命が一変したのは、2011年8月のある日のことだ。
    「あの任務では、誰かがやられそうな気がしていた。毎日爆発が起きていたし、現場に行くのはとても危険だったからね」と、同じ部隊の兵士は後に語った。

     タリバンが爆発物を仕掛けたという危険地帯の偵察に赴いた一行は、次から次へとIEDを発見した。埋設パターンを見つけつつあると、アルメンタは感じていた。ジーニットが先行し、少し距離をあけて後ろから、アルメンタがついていく。……次の瞬間、地面が揺れ、耳をつんざく爆発音が響いた。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年6月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

    4月号「風変わりなペット」に続き、またも複雑な気持ちにさせられた動物ものの記事。軍用犬の意義や役割が淡々と語られていますが、人間の犬に対する愛もこの物語のテーマの一つ。最初は相棒である軍用犬を「軍の装備」としか見ていなかった主人公が、爆発で重傷を負った日を境に変わっていきます。最後は少し希望をもてる終わり方なのが救いでした。
     今回、犬の嗅覚器官の解説を翻訳するにあたって、獣医師で犬の解剖学に関する著作『続・ぼくとチョビの体のちがい』もある佐々木文彦先生にアドバイスをいただきました。この記事で犬の体の仕組みに興味を持った方は、佐々木先生の本もチェックしてみるといいかもしれません。(編集M.N)

    シリーズ 90億人の食 食を支える未来の養殖

    90億人の食を支えるうえで、有望な動物性タンパク源は「魚」だ。今回は、環境を壊すことなく多くの魚を育てる、これからの養殖に焦点を当てる。

    文=ジョエル・K・ボーン Jr./写真=ブライアン・スケリー

     近年、世界のあちこちで大規模な養殖場が生まれている。

     養殖業は1980年以降、世界全体で約14倍の成長を遂げた。養殖魚介類の生産量は2012年に6600万トンに達し、初めて牛肉の生産量を上回った。今や世界で消費される魚介類の半分近くは養殖ものだ。今後も養殖の需要はまだまだ拡大すると予想されている。
    餌が牛肉の7分の1で済む

     魚の養殖には、牛や豚など家畜を育てるのに比べて飼料がはるかに少なくて済むという利点がある。魚は変温動物だし、水中で重力に抵抗する必要もあまりないので、生きていく際のエネルギー消費を抑えられるからだ。たとえば肉牛の体重を1キロ増やすには約7キロの飼料が必要だが、養殖魚1キロには約1キロの飼料で済む。

     地球の資源を無駄づかいせず、90億人に必要な動物性タンパク質を供給するには、魚介類の養殖が有望だろう。

     しかし、問題はある。
     大規模な養殖によって魚介類の生産量が飛躍的に増えた「青の革命」のおかげで、私たちは冷凍のエビやサケを安く買えるようになった。だが、穀物の大量増産を達成した「緑の革命」と同様、青の革命もまた、環境破壊や水質汚染、食品の安全性に対する不安をもたらしている。

     1980年代には熱帯のマングローブ林が次々に伐採され、エビの養殖場がつくられた。今では養殖が世界のエビ需要を支えていると言っていい。だが、世界の養殖魚介類の90%が生産されるアジアでは、水質汚染が深刻だ。病気の蔓延を防ぐため、欧米や日本で禁止されている抗生物質や殺虫剤を使う養殖場もある。
    内陸での大規模養殖に挑む男

     病気や汚染を広げずに、成果を上げる方法はあるだろうか。
     米国ブルーリッジ・アクアカルチャー社のビル・マーティンが行きついたのは、内陸での養殖だ。同社はアパラチア山麓で世界最大規模の陸上養殖場を運営し、ティラピアを飼育している。

     湖や海では「魚が寄生虫などに感染したり、逃げたりする問題がある」と彼は言う。「それにひきかえ、陸上では飼育環境を完全に管理でき、海に及ぼす影響を限りなくゼロに近づけられます」

     マーティンの養殖場も、今のところは周囲の環境と大気に影響を及ぼすし、維持費も高くつく。将来は水を99%循環させ、魚の排泄物に含まれるメタンを利用して自家発電を行いたいという。

    ※ 特集では、このほか「沖合での養殖」「飼料の見直し」「複合養殖による環境負荷の軽減」「海藻の養殖」なども取り上げています。くわしくは、ナショナル ジオグラフィック2014年6月号をご覧ください。地図やグラフィックで食料問題を詳しく解説しています。ナショナル ジオグラフィックは5月号から8回シリーズで、食の未来を展望していきます。
    編集者から

     養殖の生産量は、世界では天然ものに迫る勢いで急増していますが、日本では逆に減っているようです。農林水産省の統計によると、国内の養殖の生産量はここ10年間で20%ほど減少していますし、養殖が魚介類全体の生産量に占める割合は2012年で22%しかありません。ただ、この割合は魚種によってまちまちで、「水産白書」によると、ウナギやマダイ、クルマエビ、ブリ類は、国内生産量の半分以上が養殖です。日本人が食べる魚の種類は多いですし、魚によって養殖に向き不向きがあるのでしょう。
     ブリと言えば、最近は、柚子やかぼすなどを餌に混ぜて養殖した「柑橘系」のブリがあるそうですね。臭みがなく、身からほんのり柑橘の香りがするというのですが、本当でしょうか。食べたことのある方がいらしたら、ぜひ感想を教えてください。
     シリーズ「90億人の食」の来月のテーマは、アフリカの農業開発。日本とブラジルがモザンビークで進めている大規模農業開発事業「プロサバンナ」などの現実を追います。(編集T.F)

    古代ペルー 深紅の王墓

    墓泥棒に荒らされてきたペルーのエル・カスティージョ遺跡で、奇跡的に発見された未盗掘の墓。古代ワリ帝国の謎の解明につながると、期待がかかる。

    文=ヘザー・プリングル/写真=ロバート・クラーク

     ペルーの海岸近くにある遺跡「エル・カスティージョ・デ・ワルメイ」は、ここ100年ほどの間に盗掘者たちに荒らされ、広大な丘全体が穴だらけになっていた。盗掘者の目当ては、埋葬された遺骸が身に着けた黄金の装飾品や上質な織物だ。

     首都リマから北へ車で4時間ほどの場所にある遺跡の丘には、古代の人骨や現代のごみが散らばり、荒涼とした風景が広がっている。その発掘は困難で、時間と金の浪費に終わるだけだろうと、多くの人が忠告した。だが、考古学者ミリオシュ・ギエルシュは断念する気などなかった。
     ポーランドのワルシャワ大学でアンデス考古学を教えているギエルシュは36歳。かつてペルーで繁栄したワリ文化の織物や土器の破片がこの丘で見つかっていたことから、「1200年前に、エル・カスティージョで何か重要なことが起きていた」と確信していた。

     ワリ文化の中心地はエル・カスティージョよりはるか南にあった。ワリの人々は、現在のアヤクチョ市の近くに広大な都を建設し、最盛期には人口4万人を擁していた。同時代に人口2万人弱だったパリをはるかに上回る規模だ。ワリの支配層はこの都を拠点に領土を広げていった。ワリこそが南米アンデス地方に生まれた最初の帝国であると、多くの考古学者は考えている。
    最新機器がつきとめた王族の墓

     ギエルシュの調査隊は、磁力計を使って地下構造物の形状を探り、凧に装着したカメラで一帯を空から撮影した。すると、長年にわたって墓泥棒たちが見落としていたものが浮かび上がってきた。南の岩山の尾根沿いに埋まっている壁の、かすかな輪郭だ。
     迷路のように複雑かつ大規模な構造が、エル・カスティージョの南端に不規則に広がっていた。祖先崇拝のための神殿だったらしく、もともとの外壁は深紅に塗られている。ギエルシュ率いるポーランドとペルーの合同調査隊は、発掘の許可を申請した。

     2012年秋に、驚くべきものが発見された。未盗掘の王族の墓だ。ワリ帝国の王妃あるいは王女の遺体が計4体、貴族の遺体が少なくとも54体、そして大きな金の耳飾り、銀製の器、銅合金の斧など、一流の細工が施された遺物1000点以上が埋葬されていた。
    「ここ数年間で最も重要な発見です」と、リマ美術館の学芸員セシリア・パルド・グラウは語る。出土品は、ワリ帝国とその裕福な支配階級の謎を解明する新たな鍵となる。

     ワリは8世紀の終わり頃、エル・カスティージョのある沿岸部に攻め込んだと推測される。エル・カスティージョの遺跡からは、長柄の斧を振り回すワリの戦士たちと、投槍器を使って応戦する沿岸部の人々を描いた儀式用の酒杯が出土している。
     激しい戦いの末に、この土地を征したのはワリだった。新たな支配者はエル・カスティージョの丘の麓に宮殿を建設。その後、自分たちの祖先を祭るために、急峻な斜面を利用して、高くそびえる深紅の神殿を建設していったのだ。

     ワリ帝国が広大な領土をどのように手に入れ、抵抗勢力を統治したのかは長年の謎だった。文字をもたなかったワリには歴史の記録が残っていない。だが都から約850キロ離れた、ここエル・カスティージョで発見された豊富な出土品によって、徐々にその空白は埋まりつつある。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年6月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     インカ以前に南米で繁栄していたワリ文化のお話ですが、ここにも出てくる「いけにえ」の風習って、いつから始まったのでしょう? 日本でも卑弥呼の時代から記録はありますし、エジプトにもありますね。自然や死後の世界、神的存在に対して抱く畏敬の念は、人類共通。人間の本質なんでしょう。そう思うと宗教戦争って、とても理不尽。(編集H.O)

    癒やしの鳥 パフィン

    北大西洋にすむニシツノメドリ(パフィン)。何カ月も海のかなたへ姿を消すが、春の繁殖期には陸地に戻り、そのおどけた顔で人々の心を和ませる。

    文=トム・オニール/写真=ダニー・グリーン

     せわしなく羽ばたく翼、黒と白に塗り分けられた体、オレンジ色に輝くやたらと大きなくちばし。4月初旬、おどけた顔のニシツノメドリが北大西洋の沿岸に飛来すると、何カ月も静寂に包まれていた崖の上がにわかに活気づく。

     英語でアトランティック・パフィンと呼ばれるこの鳥は、4種いるパフィンの仲間のなかで最も体が小さく、体高20センチほど。繁殖の季節を迎えると、険しく切り立つ島々や海岸に一団となってやって来る。
     それ以外の季節、彼らがどこでどのように過ごしているのかは知られていない。広大な北の海のどこかで、ほとんど人目に触れることなく単独で飛び、食べ、海面に浮いているのだろう。
    小さな海鳥たちの不思議なセラピー効果

     この海鳥が上陸するのは、繁殖のときだけ。この時期、彼らは“衣替え”をする。くちばしが色鮮やかになり、灰色だった顔が白くなり、目元には歌舞伎役者のくまどりを思わせる模様がくっきりと現れるのだ。そして社交的になり、求愛し、交尾し、取っ組み合う。

     飛来する鳥の数は営巣地によってさまざまだ。米国メーン州なら数百組、アイスランドなら数万組のつがいが集まる。総数2000万羽と推定されるニシツノメドリの約1割が集まる英国やアイルランドは、とりわけ重要な繁殖地となっている。

     ニシツノメドリの集団は、おおむね穏和で物静かだ。長年禁猟になっているブリテン諸島では、鳥たちは驚くほど無防備で、人が簡単に近寄れる。バードウォッチャーたちをスコットランドのトレシュニシュ諸島に案内しているイアン・モリソンは、いつもこう感じている。
    「ニシツノメドリと触れ合うと、人々は癒やされるようです。私はこれを“パフィン・セラピー”と呼んでいます」

     だがここ10年ほど、鳥の数が減っている。アイスランドやノルウェーの一部では、ひながほとんど生まれない年もあった。彼らの好物であるイカナゴやニシンなどの小魚が減り、大きさも小ぶりになっている。研究者のマイク・ハリスは、こう断言する。
    「ニシツノメドリがひなを育てる環境が悪化しているのです」

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年6月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     上野動物園の人気者で、大手飲料メーカーのCMキャラクター、そしてスマートフォンのブラウザー――。鳥好きのあいだでは有名な海鳥パフィンは、いろんなところに姿を現します。しかし生涯の大部分を海上で過ごすため、野生の生態はまだよくわかっていません。繁殖の季節だけ陸上に飛来して、私たちを和ませてくれます。特集では、繁殖期に飛び回り、巣作りをし、ケンカする姿をとらえました。その強烈なビジュアルと、ユーモラスな仕草をお楽しみください。(編集N.O)

    辺境の命を支えるロシアの医療列車

    極東ロシアに点在する辺境の村々を巡回し、医療を提供する列車マトベイ・ムドロフ号を密着取材した。

    文=ジョシュア・ヤファ/写真=ウィリアム・ダニエルズ

     ロシアには、鉄道を利用した移動クリニックがある。

     医療列車「マトベイ・ムドロフ号」は、バイカル湖とアムール川を結ぶバイカル・アムール鉄道(通称バム鉄道)を走り、沿線に点在する数十の村に医療サービスを提供している。

     一通りの医療機器と診察室を備え、12~15人の医師を乗せて巡回診療を行うこの列車は、人々のまさに命綱だ。国営ロシア鉄道が運行し、その名は19世紀にロシアの医療の発展に尽くした医師マトベイ・ムドロフにちなむ。村から村へと線路を走り、あちらこちらで1日停車しては患者を診察しながら、数千キロに及ぶ広大な極東ロシアの旅を続けている。
    沿線の村々と外界をつなぐ「命の列車」

     バム鉄道の全長は約4300キロ。有名なシベリア鉄道よりも650キロほど北を走るこの鉄道は、1970年代後半から80年代前半に建設され、ソビエト連邦が手がけた最後の大プロジェクトとなった。

     当時のソ連の最高指導者レオニード・ブレジネフの命を受け、共産党の青年組織コムソモールがバム鉄道建設の重責を担った。辺境の森の掘っ立て小屋で寝起きする開拓のロマンと、ソ連の平均給与の最大3倍にも達するという報酬に魅せられて、1974~84年の間に約50万人が建設に参加した。

     だが1991年にソ連が崩壊すると、バム鉄道を維持発展させる資金も情熱も失われた。90年代半ばには沿線一帯にアルコール依存や貧困が広がり、孤立が進んだ。多くの人々がこの土地を離れ、取り残された人々は、冬には氷点下50℃を下回る日も多い過酷な環境のもとで年老いていった。自動車の走れる道路がほとんどないこの地域での移動は、もっぱら鉄道が頼り。まともな医療を受ける機会は限られている。

     医療列車の医師たちができるのは患者を診察し、基本的な検査を実施して診断するところまで。この設備では手術は無理だし、普通なら外来で可能な治療や処置もほとんどできないが、それでもバム鉄道沿線の住民にとって、医療列車は外の世界との貴重な接点となっている。祖国ロシアはこの地に暮らす彼らのことを忘れていないし、その安否を多少は気にかけている。医療列車は、その証しなのだ。
     極東ロシアの大地を走るマトベイ・ムドロフ号。その行く先々には、病気やけがに苦しむ人々が待っている。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年6月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     分厚い外套に身を包み、毛糸の帽子やフードをかぶって氷点下15℃の戸外でじっと待つ村人たち。年に2回ほど巡回してくる医療列車をどれほど待ちわびていたかが、よくわかります。極東ロシアの暮らしの厳しさがひしひしと伝わってくるような一枚の写真から、しばらく目が離せませんでした。
     辺境の村々をめぐって医療を提供する、ロシアの医療列車の存在をこの記事で初めて知りましたが、世界ではほかにも、インドや南アフリカなどに同様の列車があるようです。薬局も診療所も病院もすぐに行けるところにあるのは、それだけでも恵まれた環境なのだと、あらためて考えさせられました。(編集H.I)

  • 戦場で多くの犬が活躍している。がんばれ。でも平和がいいね

  • 90億人の食、シリーズ第2回は養殖について。

    牛や豚等に比べて、少ない飼料で育つ魚。
    20年後、90億人に達すると予想される世界人口を支えられるか?
    貝や海藻で水を浄化させる方法。興味深かったです。

    「辺境の命を支えるロシアの医療列車」も面白かった。

    医者もいない、上水道もろくに整備されていない極東の地。
    年に2度巡回にくる医療列車だけが頼りだという。
    小さな風邪でもすぐに医者にかかる事ができる日本。
    自分がどれだけ恵まれた環境にあるかを実感しますね…。

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