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- / ISBN・EAN: 4988105069527
感想・レビュー・書評
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渋い映画だった。
タイトルの「セインツ」(Ain't Them Bodies Saints)にはいったいどんな意味があるのだろうと思いながら観たが意味はないようだ。語呂が良いから、という単純な理由らしい。
けれども内容は、線的なストーリーとして説明しきれないような深さがある。冒頭はこんなシーンから始まる。
ボブ(ケイシー・アフレック)とルース(ルーニー・マーラ)ともう一人の仲間の男は強盗に入って追われる身になり、ついには保安官たちに追いつめられて銃撃戦になる。連れの男は弾に当たって死に、逆にルースが撃った弾が保安官パトリック(ベン・フォスター)の肩に当たる。
ボブはルースの罪をかぶって投降し投獄されるが、ルースのお腹にはすでにボブとの娘が宿っている。
本作ではその後が描かれるわけだけど、ルースは愛娘を産み、娘のためにも平穏な暮らしを望むようになり、それにともない、自分が銃で撃ったものの生き延びた保安官パトリックに、しだいに思いを寄せ始める。
物語をより芳醇にさせているのは、そして本作で何よりすばらしいのは、大胆な編集だと思う。無駄のないカットが次々とつながれていく。その隙間を観る側は想像で埋める。
一方で、ほんらい関連のない仕草(例えば腕をあげるとか)でカットをつないだり、音で(たとえば遠くから聞こえてくるエンジン音)でつないだりと、いろんなアイデアに溢れている。
なかでもいちばんゾクゾクしたのは、暗がりにボブとルースの顔が浮かびあがる「現在」のカットと、かつてボブがルースのお腹に耳をあてて娘に話しかけていた「過去」のカットとが、闇の黒さを背景に溶け合っていくシーン。
暗いせいで、よくよく見ないとどれが「現在」でどれが「過去」か区別できず、しかもセリフの音量もわざと同じくらいにしてあるから声まで混ざりあって曖昧になる。しかもこれが物語上、かなり重要なシーンなのだ。
こんなの、今までに観たことがない。詳細をみるコメント0件をすべて表示