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感想・レビュー・書評
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高野秀行さんのファンだけど、これを読んでいなかったわけは、ムベンベなんていないでしょということに尽きる。だってさ、首長竜が生きていたのはジュラ紀、1億5000万年以上前だよ。
もし幸運に生き残ったとしても、一つの湖に住める首長竜の数では、遺伝子の多様性が維持できないから、結局絶滅する。だから、現在いるわけが無い。ネッシーも同じ。
頭のいい人たちが、おふざけでなくマジでコンゴまで恐竜探しに行くって何なのよ、と。
どうせ見つからないと分かっているのにわざわざ行く意味は?と。
しかし、まあ、読んでみて、青春のバカな(行った人たちがバカなんじゃなく、青春というものがバカなの。そこに価値がある。)エネルギーを集結させて、見えない怪獣や、慣れない気候や食べ物や、現地の人との付き合いや、日本と比べれば劣悪としか言えない住環境なんかに挑んで行く姿は清々しくも切ない。この体験は彼らの中で、一生、生き続ける。中にはこれ以上の刺激的な体験を求めて放浪する人生となってしまった人もいるだろう。
こんな大人数で行ったので、それぞれの人間模様もあり、他の高野本とはまた違った味わいがある。
それにしても、高野さんは、やっぱり語学の天才、コミュニケーションの天才、そして書くのが上手い。作家になるべくしてなった人だなと思った。
大変な体験ではあったが、ここで食べたあれやこれやであの本が、語学の習得であの本が出来上がったわけで、高野さん的には十分元が取れたと思う。
誰も死ななくて本当に良かった。死んでたら、高野さんは、作家になったとしても、全く作風は違っていただろう。
痛快ノンフィクションって裏表紙に書いてあるけど、そんなにお手軽ではないよね。みんな命がけで、よくやったと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
幻獣ムベンベを追え
自分自身は決して物好きではないが、物好きの人間の行動を見るのは楽しい。常人の理解できない理由で行動してくれる。本書の登場人物は鉄板級の物好きだ。
本書は、早稲田大学探検隊11人が内戦前86年のコンゴのジャングルの奥地で過ごした1カ月を記したノンフィクション。目的はテレ湖に棲むムベンベという幻獣。目撃者は多いが、写真もない。恐竜の生き残りかもしれない。その昔、ムベンベを捕まえ、食べてしまった村は全滅してしまったらしい。
この本の面白いのは、ムベンベよりも探検隊の11人の1カ月の行動だ。
ガイド、ポーターとして雇った原住民との確執と交流、ヘビや野ブタはもちろんカワウソ、果てはチンパンジーまで食べなければ過酷な食糧事情、マラリアの恐怖、謎の隕石、テレ湖に対する原住民の恐怖心などなど娯楽色の濃いノンフィクション。特に食べる描写は面白い。チンパンジーの肉は固く味がないらしい。まぁ、一生食べないと思うが。
「はっきり言って 、なぜ自分がこんなことをしているのかわからない 。わからないながらも 、あまりに無意味な活動をしているので 、なぜか快感すら覚える 。 「普通の人は 、ちょっと真似ができないな 」と思う 。当たり前だ 」
本書は高野秀行の処女作。多少、青臭さはあるが、面白い。★3つ -
高野秀行デビュー作
見つからないとはわかっていても、何か期待してしまう。
アメリカの連続ドラマと同じで、教訓めいた結論や大団円はないんだけどね。
それでも高野さんのノンフィクションが好きだ。