日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」 (集英社文庫) [Kindle]

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  • 日本での生活がうまくいかなくなって、理想郷を夢見てフィリピンに渡り、たちまち夢破れて生活が立ち行かなくなった日本人のおじさん達の哀歌。
    すごく哀れ。でも全く同情は湧かない。みんな自業自得のように書かれている。日本での生活がうまくいかなかったのも自分のせい。義理を欠かし、嘘をつき、好き勝手に生きてきた人生の末路。誰も救いの手を差し伸べる人はいない。
    壮絶なストーリーの数々。

  • 道徳的でありたい著者とそれを余裕で越える現実の厄介さの葛藤がすばらしいと思った。その葛藤を経ても最終的には道徳的であろうとすることにとどまる(ことしかできない)著者の様子から、この本の登場人物たちに感じるのと同様の、人間が変わることの困難さを感じた。

  • 書籍化されている水谷氏3作品の中では、個人的には印象が一番薄い本。もう少し、それぞれの相手に深く食い込んでほしかった、といったら、作者に怒られるものか。。。

  • ・3/1 読了.確かに運まで自己責任とするのかどうかで判断が分かれてしまうこともあるだろう.これを見てると失敗を恐れずチャレンジしろという言葉がいかに無責任かが分かる.何が良いチャレンジで何が悪いチャレンジなのか、同じことが失敗にも言える.失敗するか成功するかやってみないと誰にも分らないのと同じように、回復可能な失敗になるのか再起不可能な失敗になるのかは、失敗してみないと誰にも分らないだろう.回復可能な失敗に留めておけなくなった時のために国家がセーフティーネットを用意するべきか否か.誰にも回答が出せる問題じゃないと思うな.

  • 日本で単調な生活を送ってきた男が、ある日入ったフィリピンパブにハマり、日本の全てを捨ててフィリピンにフィリピン女性を追い掛けて行ってしまい、フィリピンで無一文になって捨てられた日本人男性のルポルタージュとなっている。

    私はホームレスとか派遣労働者とかネットカフェ難民とかの本をよく読むんだが、この本はなんて言うか、似た匂いのする本だった。

    男たちは、日本では親類縁者との関係を殆ど絶った状態で生きているケースが多く、無一文になってマニラの大使館が親戚に送金を依頼する連絡をしても、あんな不義理な奴はフィリピンで死んでしまえばいいので、送金など以ての外だ、のように扱われて親戚が怒りながら援助を断るケースばかりだ。大使館も彼らに最低限の生活費や日本に帰る渡航費などを貸すことはしない。女を追い掛けてきてこちらで無一文になった奴に、血税を削ると言うのは説明がつかないからだ。恐らく、これが日本人が殆どいないアフリカ諸国でなら、路頭に迷った日本人を保護する(大使館でメチャクチャ怒られるだろうが)かも知れないが、マニラはこのような人間が毎日一人のペースで生まれているらしく、構っていられないという事情もあるのだと思う。

    加えて、フィリピン人は極貧状態の人間に対して最低限の施しをする意識が普通に備わっているからか、路頭で野垂れ死にそうな日本人を見つけると毎日食事を与えたり、簡単な仕事を手伝わせて寝場所を与えるという行為をすることがあり、従って生き長らえる社会のぬくもりのようなものがあるみたいだ。

    不法長期滞在者を厳しく取り締まることもないので、観光ビザで入ってビザが切れても、多分永遠に住み続けられると言う仕組みがあるというか、そもそも取り締まる仕組みが働いていない。

    そんな訳で、日本人はそのままフィリピンに居続けることになる。

    作中で書かれている彼らの日本での生活を見ていると、人生としてはかなり寂しい。彼ら自身のわがままもあったり、普段の生活に全く生きがいを見い出せなかったり、借金で首が回らなくなったり、結婚生活が破綻したりもしている。それでも他にもその環境で普通に暮らしている人々がいて、みんながみんなそこから逃げ出しているわけではないが、限界の基準は人それぞれと言うのを痛感する。フィリピンパブに出会って、タガが外れて、一気に自分自身が地滑りの如く流れ出てしまう感じだった。

    日本を捨ててフィリピンに渡ったのは、基本的には当人達の自由ではある。ただ、自由には責任が付きもので、特に自分以外に悪い影響が及ぶ場合、その自由は制限・禁止されるか、もしくは自由と思ったことをやった後の始末は必然的に付けなければならない。それが懲罰だったり、社会的な制裁だったりすると思うが、無一文になって日本の政府も自分の親兄弟親戚も全然援助しないというのは、何というか、その始末を自ら付けさせるための制裁と同じと思う。

    著作の書かれ方の影響も受けているが、私自身は彼らに同情するような感じは持たないし、筆者自身も最初持っていた同情も途中で無くなったと書いている。「自業自得」というストレートな言葉を言われて、反論できる困窮邦人はいないんじゃないか。ただ、そのような状況でも「何故日本政府は彼らを保護しないのか」と不思議がっているのが、現地のフィリピン人達で、フィリピン人は彼らが生きて行くのに援助をしている。

    彼らそれぞれの考えは、これまたそれぞれだ。日本に帰りたいと思っている人もいれば、このままフィリピンで朽ち果てたいと思っている人もいる。しかし、そんな各々の考えをよそに共通しているのは、この作中に出てきた人々は、多分日本に帰ってもやっていけないだろう、と言うものである。

    日本は豊かで清潔で安全だが、自分たちが意識している以上に生存競争が激しく、転落したら生きる道が少なく、その後の補助も殆ど得られない、と言う厳しい現実があると感じさせられた。普通に生きていくだけで莫大な費用が必要となる。ホームレスをやっていても、冬は寒くて生きていくのは大変である。

    フィリピンでホームレスとなり、年中温暖な気候の中で周囲の善意に支えられて生きていることに慣れてしまったら、私も恐らく日本には戻れないだろうと思う。

    こんな風に俺はならないだろう、何故ならフィリピンパブなんて全然面白いと思わないから、とか何とか言ったところで、その時々の精神状態如何で、一気に流動化しないとは全然言い切れない。

  • 開高健ノンフィクション賞受賞。
    フィリピンで、困窮生活を送る日本人男性が何百人もいるという。
    フィリピンクラブで知り合った女性を追いかけてきた男、偽装結婚のカモにされた男、お金も家もない「困窮邦人」のルポタージュ。

    真面目なルポだった。
    その日暮らし、いくら困窮しようとも、異国でのホームレスを選ぶ人たち。がんじからめの日本よりいいと言う。
    (電子書籍 honto)

  • フィリピンってそんなにいいとこなのかな。
    行って確認したい。

  • ゆっくり、1ヶ月以上かけて読了。
    イスラム国で邦人が殺害されたときの自己責任論についてかなり疑問を持っていたが、これを読んでますますわからなくなった。

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