宇宙人がやってくるタイプのSFはあまり読んでないので、個人的にこの関係性は新しかったです。
着想としては未開地の原住民と先進国の観光客という関係性なのかなと思いました。地球人類が未開地の原住民で、宇宙人が先進国からやってくる観光客です。地球人類は高度な文明を持つ彼らの飛来になすすべないものの、脅威よりは恩恵をもたらしてくれそうなので、とりあえず攻撃しないという条約だけ作って放置している。(いや正常性バイアス強すぎだろ!という読み手のツッコミ自体が伏線になってます。)一方やってくる宇宙人たちは問答無用のエゴの塊である一方、高度に知的なので彼らなりの倫理観・ラインで観光客としてのマナーを抑えている。しかしそれが原住民である私たちの文化からみた倫理観・ラインとは必ずしも一致しないので、結果的に振り回される人々の物語が要請される、というわけですね。
この作品はハードSF上に作られた日常ものとして始まるのですが、最終的に「日常」自体に関してSF的技法を持って批評し始めるのが一番すごいポイントですね。細かいことは面倒なので省くんですが、日常とはある種の正常性バイアスであり、この問題点は作品のいたるところで描かれ、終盤にてクライシスが起きることで頂点を迎えます。しかしそれと同時に、非日常における建設性としての日常バイアスが描かれるのです。ここで差し込まれる「エスペラント(希望する人)」を勉強する描写!日常を建設する行為こそが希望を志向することであり、すみちゃんが持つその強さと普遍性を見届けたところでクヌムくんは安心して故郷に帰って往けるのでした。
全体としてはおいおい!と楽しく突っ込みつつ楽しく読むことができました。個人的にはクヌムくん以外の宇宙人にもっとベントラーベントラー出来たら良かったなとは思います。もっと長く続いたらそういう展開もあったかもしれませんね。結果として3巻でシンプルにまとまっており、万人に進められる漫画です。パロディやネーミングのネタは全然拾えてないので、ほかの方にお任せします。(今検索したらクヌムとはエジプトの創造神の一人、水源の管理者なんですね)