光 (集英社文庫) [Kindle]

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著者 : 三浦しをん
  • 集英社 (2013年10月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (213ページ)

光 (集英社文庫)の感想・レビュー・書評

  • 天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた―。
    「BOOKデータベース」より

    冷たい汗のでる小説だった.
    性と精と生が絡み合い、凄を経て、静と制に落ち着くという感じか.行動の底に潜む精のかけらのみに光をみる.

  • 重かった、これ。タイトルの「光」が意味するところはなんだったんだろうと考え込んでしまう。海の上を照らす月の光、消えてしまった灯台の光、工業地帯の港湾エリアの人工的な光、物静かで穏やかにみえる信之の瞳の奥の光、光を宿さない輔の漆黒の瞳。

    圧倒的な自然災害の前にあっけなくのみこまれてしまった日常と、それを目撃した子供たち。拠りどころを失って、過去の記憶を押し殺し、新しい土地で淡々と目の前のことをこなしていつかくるはずの終わりを待ち続ける信之。日々の恐怖から解放されてまっさらな新しい生活のきざしに狂喜したのも束の間、皮肉な現実の鎖につなぎとめられたまま、唯一、束の間の安堵の記憶をたよりに執拗にそれに縋りつこうとして報われぬ輔。

    それぞれの行く末を、よく描ききったなぁ。美花にかんしては物語を進めるための都合のいい駒というか、欲望が投影される鏡以上の役割はなく、紋切り型だけれども。

    この信之、輔と、信之の妻、南海子の視点から語られる「藪の中」のような構成。それぞれの真実は残酷で「暴力によってそこなわれたものは暴力によってしか恢復しない」という信之のことばに集約されている気がする。

    酒乱の父の暴力にずっと耐え続けた母親をみてきた南海子が、結婚相手に経済的に完全に依存することになる専業主婦になり子供の養育に異様な熱意を注ぐ暮らしてを選んだというのはちょっと無理があるような気がするんだが、その環境の中で彼女が感じる日々のストレス、苛立ち、過剰になりがちな自意識と「世間の目」に対する被害妄想まがいの怯え、子供のためといいつつ自分の思い通りにいかないと子供にあたりちらす身勝手さはものすごくリアルに描かれている。つねったり、つきとばしたり。

    輔の体に刻まれた無数の痣とは対照的に、痣になったり跡が残ったりするほどの力は加えていない、が、子供にとって親からつきはなされ疎まれるということは、深く暗いところに根を張って、長い年月じわじわと、ことあるごとに忘れられない痛みを伴ってやってくる極めて破壊力のある暴力であることにかわりはない。

    遠くから見えた島の景色は、希望の光を含む結末だったんだろうか。それとも、人間なんていなくなってしまった方が、自然環境はその旺盛な生命力でのびのびと本来の姿を取り戻すことができるという、つきはなしたものなんだろうか。

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