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感想・レビュー・書評
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日本の小説家で最も好きな倉橋由美子の書評。
出てくる本も、それに対する自分の好みへの自信に満ち、そして辛辣なコメントもとてもいい。
ファンなので贔屓目になるが、この人のお薦めの本はすべて読みたくなる。
倉橋由美子がもっと健康で、長寿に恵まれ、面白い本を書いてくれればと思うが、病身だからこそ身を振り絞って良質の書物を書いたのかもしれない。 -
上質な作家の偏愛する本は、偏っていようとも上質である、らしい。
倉橋由美子の作品に対する姿勢は駄目なものは駄目と手厳しく、
世の中には「名作」という単に有名な作品や、
「大作」という単に長いだけの作品が沢山あるという。
だから好きでもない駄作は、駄作たるゆえんを指摘するまでもなく、
黙っていることを原則とすると言い切っている。
しかし倉橋由美子が黙っていられない、なんどでも読み返したくなる本の
「大脳が歓喜で発熱するほどすばらしい」という表現する、
よりすぐりの作品の紹介だから、ただの文学案内ではない。
そんな作品群に圧倒されて、私のほうはこの『偏愛文学館』を偏愛するように、
おもしろくておもしろくて引きずられるように読んでしまった。
そして知らなかった作家たちを、
また、また増やしてわくわくするやら、恐ろしいやら(読みたい本が増えて)。
その興味を持った作家達は、
ジュリアン・グラック、
ジュリアン・グリーン、
ラヴゼイ、
イーヴリン・ウォー、
ロバート・ゴダート。
それに、評論と翻訳しか知らなかった吉田健一の小説をとても誉めているではないか、
そこもおもしろい、一度読みたい。
しかも、39冊の私的書評でもあるのだが通して読んでみると、
倉橋由美子の作家としてのアイデンティティが垣間見える、しゃれた作家自身の作家論でもあると思う。
昨年の6月に急に亡くなった倉橋由美子の遺言的文章に感服。