偏愛文学館 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 倉橋由美子自身が"偏愛する"作品たちが紹介され、ブックガイドともいえるし、倉橋作品解説ともいえる一冊で、自分が読んだことない本に関しても驚くほど楽しく読めた。
    他のエッセイでも紹介されている作品もあれば、倉橋作品の中で直に紹介されている作品もあり、ますます読んでみたくなってきたし、改めてこの作品がああいうシーンに影響しているのか、、と思いを馳せるのも楽しかった。こう読むと、自分が影響されたものの中で創作しているのだなという安心感もあるし笑?。

    わかっていたけれど、
    ・蘇軾、それから王維
    ・能という形式
    に関しては、自分もしっかり勉強したいと思ったし、
    ・素材がいくら珍しくても新鮮でも、それだけではだめで、ちゃんとした一品料理になっていてはじめて小説と呼べる、という線引きに関しては、言語化されて納得したところが大いにある。

    特に本作で紹介されている作品のうち早く読んでみたいのは、百閒、蘇軾、ジュリアン・グラック『アルゴールの城にて』『シルトの岸辺』、福永武彦『海市』ですが、その他についても人生が終わるまでに読みたいものです

  • 日本の小説家で最も好きな倉橋由美子の書評。
    出てくる本も、それに対する自分の好みへの自信に満ち、そして辛辣なコメントもとてもいい。
    ファンなので贔屓目になるが、この人のお薦めの本はすべて読みたくなる。
    倉橋由美子がもっと健康で、長寿に恵まれ、面白い本を書いてくれればと思うが、病身だからこそ身を振り絞って良質の書物を書いたのかもしれない。

  • 上質な作家の偏愛する本は、偏っていようとも上質である、らしい。

    倉橋由美子の作品に対する姿勢は駄目なものは駄目と手厳しく、
    世の中には「名作」という単に有名な作品や、
    「大作」という単に長いだけの作品が沢山あるという。

    だから好きでもない駄作は、駄作たるゆえんを指摘するまでもなく、
    黙っていることを原則とすると言い切っている。

    しかし倉橋由美子が黙っていられない、なんどでも読み返したくなる本の
    「大脳が歓喜で発熱するほどすばらしい」という表現する、
    よりすぐりの作品の紹介だから、ただの文学案内ではない。

    そんな作品群に圧倒されて、私のほうはこの『偏愛文学館』を偏愛するように、
    おもしろくておもしろくて引きずられるように読んでしまった。

    そして知らなかった作家たちを、
    また、また増やしてわくわくするやら、恐ろしいやら(読みたい本が増えて)。
    その興味を持った作家達は、

    ジュリアン・グラック、
    ジュリアン・グリーン、
    ラヴゼイ、
    イーヴリン・ウォー、
    ロバート・ゴダート。

    それに、評論と翻訳しか知らなかった吉田健一の小説をとても誉めているではないか、
    そこもおもしろい、一度読みたい。

    しかも、39冊の私的書評でもあるのだが通して読んでみると、
    倉橋由美子の作家としてのアイデンティティが垣間見える、しゃれた作家自身の作家論でもあると思う。

    昨年の6月に急に亡くなった倉橋由美子の遺言的文章に感服。

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著者プロフィール

1935年高知県生まれ。大学在学中に『パルタイ』でデビュー、翌年女流文学賞を受賞。62年田村俊子賞、78年に 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞。2005年6月逝去。

「2012年 『完本 酔郷譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉橋由美子の作品

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